表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者リリア♀は彼氏ができない!  作者: アポロBB
センチメンタルジャーニー編
108/113

108.エルフの政治②

「こんなところで何をしているのですか? ローダが大変なときに」ジェラルディン議長は無表情で言った。


「……どういうことでしょう?」


 ジェラルディンはゆっくりと歩を進め、円形の議場の中央で立ち止まった。星のモザイクが、彼の足元で淡く光っていた。


「ビルバッキオの悪魔の件、問題になっているんですよ。ローダに責任を問う声が上がっています」


「ばあちゃんの責任じゃないでしょう。あれは……ヴァンサンが……」


「だが、その男はローダの娘と関係を持っていたそうですね。しかも人間だ。無関係とも言えないでしょう?」


「人間との恋愛を禁ずる法はないはずです」


「ふむ、たしかに。だが嫌悪感を抱くエルフが大勢いるのも事実。今しがた、ローダの辞任を求める署名が提出されました」


 クロアの目がわずかに揺れた。


「当然のことでしょう。あのレベルの悪魔が暴走し、下手をすればこの森も巻き添えになっていました。危機を呼び込んだ者には、それ相応の責任があります」


 その言葉に、ルイーズがぐっと一歩前へ出た。


「ちょっと待ってよ、じいさん! その悪魔を封印したんは、ここにいるリリアちゃんとクロアやで!? 街を救ったのはこの2人やんか!」


 ジェラルディンはぴくりと眉を動かしたものの、すぐに笑みを浮かべた。


「あなたは……人間でしたね。気を悪くしたのなら申し訳ありません。だが、人間の街を救おうが、それは我々エルフには関係ないことです。これは、エルフ社会を危険に晒した“責任”の話なんですから」


「なんやそれ……」


 ルイーズが唇を噛んだその横で、クロアは静かに拳を握っていた。


「クロアルダ君。……ローダの元へ行ってあげなさい。今ごろ、王家に泣きつこうとしているかもしれませんからね。はっはっは」


と、再び扉がぎいいと開いた。顔を出したのは、ひょろりと痩せた中年のような見た目のエルフだ。


「ジェラルディン議長、議員が集まりました」


「アーチャー議員、わかりました。すぐに行きましょう」アーチャー議員と呼ばれた男にそう言うと、リリアたちの方に向かってジェラルディンは言った。


「これから、ローダの罷免決議なのですよ。おそらく全会一致でしょう。アッハッハ。では、失礼を」


 そう言って、ジェラルディンはゆっくりと去っていった。そして、後に続いたアーチャーが一瞬だけクロアの方を見たのをリリアは見逃さなかった。その視線が不気味なほど冷たく、リリアの心をざわつかせる。


そして、扉が閉ざされた。その余韻が議事堂の空気を重く震わせている。


「なに、あのじいさん……わかりやすく悪人やん! あれでもエルフなん?」

ルイーズは怒りに頬を紅潮させ、ぎゅっと拳を握った。


「今回のことだって、あのじいさんが黒幕だと思うしー」エスメラルダも怒りを滲ませていた。


「そうや、間違いないわ!」鼻息を荒くする2人の横でリリアは黙って立っていた。


「クロちゃんもそう思わない?」エスメラルダが聞いた。


「そうかもしれんけど、正直わからん。ただ……」


「?」エスメラルダは恋する乙女の顔でクロアの顔を覗き込んだ。


「アーチャーって呼ばれたやついただろ? あいつがさっき言った証言者だ」


「え? あのスカイブルーから淀んだ紫になった?」ルイーズが驚いて言った。


「ああ」


「証言者、えらい出世したみたいやな。議員やて」


「議長におべっか使ったんだと思うしー」


「そやそや」


「議員になる前、クロちゃんが証言を聞いた時は何をしていたの?」リリアが久しぶりに口を開いた。


「今の俺と一緒だ。番人だ。俺は森だが、あいつは……祠だ」


「祠って? もしかして星のかけらがあったとこ?」リリアが聞いた。


「……そうだ」クロアは何か考えながら、ボソリと言った。


「決まりやな。あの2人が黒幕や」ルイーズが言った。


「……証拠だ。証拠がいる」クロアは独り言のように言った。


「一緒に探そ! クロちゃん!!」エスメラルダが拳を前に突き出して言った。


「あ、ああ……」


「ねえ、クロちゃん」リリアが寄り添うように声をかけた。


「アーチャー議員のオーラの色、どんなだった? 今、見えたよね?」


「それを聞いてどうする?」


「ただ、聞きたいだけ。それでどうするとかはないけど……」


「私も気になるわ」ルイーズも会話に入ってくる。


クロアは口をへの字に曲げていた。そして、少し考えてからこう言った。


「……スカイブルーだよ」


「うそやろ……」ルイーズは頭を抱えた。


お読みいただきありがとうございます!

もしよかったらブックマーク、感想、レビュー、評価などいただけると大変励みになります。

どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ