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雪だるまが溶けてしまう前に

作者: うさぎ荘

「また雪か。」


そう呟きながら私はお昼近い時間にゆっくりと起き出した。


小学四年でクラスに馴染めず不登校となった私は日中、仕事で両親がいない家のコタツでゆったり過ごしていた。

そんなある日、窓を叩く音が聞こえて振り向いた。


そこには何と数日前、私が作った雪ダルマがいた。


ドリーと名乗り、怪しいとは思ったが彼との会話が段々楽しくなり、彼の誘いもあって一緒に庭で遊んでみる事にした。


それはとても楽しくて、ソリに乗ったり雪合戦をしたり二人で小さな雪山を作ってそこから転げ落ちたり、いつも笑いが絶えなかった。


ドリーは私といる時、凄く嬉しそうにしてくれるし話も聞いてくれて時折笑ったりもしてくれる。


そのうち、今の自分ならクラスの皆と馴染めるんじゃないかという自信が湧き上がってきた。


それを彼に話すと、とても喜んでくれて私の背中を押してくれた。


翌日、勇気を出して学校へ向かうが、やはり緊張してしまい、下駄箱で居合わせた子に「おはよう。」と声をかけるのが精一杯で、後は誰とも話を出来ずに早退をした。


落ち込んでいる私をドリー

は励ましてくれたけど、苛立ちもあり、酷い事を言って別れた後はまた家の中で過ごすようになった。


翌日から急に雪は止み、晴れの日が続いた。



庭の地面が徐々に見えてきた頃、一通の手紙が届いた。

差出人は以前学校の下駄箱で挨拶をした子からだった。


そこには声をかけてくれたお礼と学校で会ったら一緒に遊ぼうという内容だった。


気付くと私は玄関から彼のいる裏庭の方へと走り出していた。


地面の雪も道の端にしか残っていない。


私は走りながら必死で彼がまだいてくれる事を祈り続けた。


何であの時、励ましてくれたのに酷い事を言ってしまったのだろう。


心の中が今になって後悔で重くなっていき、それに絶えきれず涙が溢れてきた。


そこには雪ダルマを作った時に使った道具が地面に転がっていて、唯一バケツだけが雪の塊の上に乗っていた。


名前を呼んでも反応はない。


私は地面に落ちていた手袋や枝を拾い集めそれを強く抱きしめた。


私は何度も謝り、ひとしきり泣いた。


そんな私の背中を温かい風が包み込み一言だけ彼の声が聞こえてきた。


きっとドリーは近くで見てくれている。


そう思うだけで安心出来て言葉が湧き上がってきた。


ずっと後悔していた事も、友達が出来そうな事も皆伝えられた。


最後にお母さんが帰宅して呼ばれたので「大好き。」を伝えてから家の中に戻った。





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