第3話 本来の姿に戻る話
そのうち、奇妙な嫌がらせが続いていると言ってオスが騒ぎ出します。それでまいったのかオスは、一人で勝手に自滅してしまいました。
真っ青な顔で他の貴族令嬢達に、自らの罪というものを告白します。
大きなカメラをもった人間の記者という者達がパシャパシャ。
大きな紙束をもった配達員が、バサバサ。
しばらく人間達は、オスもメスも大騒ぎ。
ふりんをするために、一人のこんやくしゃを陥れたという話で、もちきりでした。
そんな出来事があったからか、貴族令嬢はとても明るくなりました。
以前と同じように笑うようになったと、家族からよく言われています。
貴族令嬢はペンギンの恩返しで、本来の姿に戻ったみたいです。
ペンギンはこれで、未練なく胸を張ってその地を去ることができます。
手当ての包帯をとってすっきりしたペンギンは、貴族令嬢の元を去っていく事にしました。
しかしペンギンはその際に、自分の本来の姿を知って仰天してしまいます。
なぜなら、飛べるはずはないのに、翼をはばたかせたら空を飛べてしまったからです。
ペンギンはペンギンではなく、鳥だったのです。
遠い昔、飛べなくなった子供の鳥は、ペンギンの村に落ちてしまいました。
鳥は空に戻る事ができないので、仕方なくペンギンの村で生活します。
そのため、やがて自分が鳥であった事を忘れてしまいました。
ペンギンとして育った鳥ですが、見た目は鳥です。
ですから、多くのペンギンに「見た目が変」だと虐められてきたわけです。
食べるものは若干違いますし、体の作りも違います。
大きさも違うので、ペンギン村にある家具では生活できません。
みんなと違うからといって木の実を食べる事を我慢しようとしたり、くちばしを使って彫刻をしたり、歌を歌うことをするのをやめようとする必要は、もうありません。
かつてペンギンだった鳥は、鳥である事を思い出したため、元の鳥達の群れに戻る事ができました。
それからの鳥は、同じ仲間に囲まれて幸せに暮らしていきました。