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社会人になって同人活動を諦めていたアラサー女が一次創作にハマり込んで5年ぶりにイベント参加した話

作者: 柊 千鶴

やっぱオタクって人生幸せだわ。

 楽しい地獄にただいま。



 久しぶりのイベント参加が楽しすぎて、この気持ちを忘れたくなくて筆を執りました。


 社会人になって早5年ちょっと。

 学生時代とは違って自由になる時間が少なくなり、仕事をこなすのに精いっぱいで、細々と絵を描くことはあっても、イベントに参加して同人誌を発行することはもう無いんだろうなと思っていました。

 去年までは。


 思い返せば去年の1月。一次創作用のTwitterアカウントを作ったことが始まりでした。

 私はそれまでずっと、それこそ物心ついた頃から二次創作にハマっていて、某伝説の緑の勇者や、某カードファイトの孤高のファイターや、某論破の御曹司に熱を上げていたのですが、ふと、一次創作を始めようと思い立ったんです。



 これと言ったきっかけがあった訳ではないんですが、二次創作特有の「置いていかれる寂しさ」に耐え兼ねてというのが大きかったと思います。


 私はまだまだ某御曹司が好きなのに、みんなは2やら3やら別の作品に行ってしまい、取り残される寂しさ。

 小さいながらもみんなでわいわいやってた村に一人残されて、自宅裏の畑で自給自足しているような、孤独感。


 なまじ御曹司にはどっぷりハマっていて、彼が同人活動を行うきっかけにもなったレベルで熱を上げていたので、日に日にジャンルが衰退していくのは堪えました。


 人が減って寂しくなって、なんとなく絵を描く気力が湧かない。

 でも、そうそう新しい二次にハマることもない。

 仕事も大変だし、これからは気ままに好きなキャラを細々描こうかな……


 そんな風に思っていた時に、今までキャラクター性を重視して、書くのを我慢していた話が色々あったことを思い出しました。

 このキャラはこんなことはしない。言わない。だから書けないけど、自分が大好きな展開。



 そんなものを自由気ままに、自分の好きな要素を詰め込んだキャラクターを動かして書いたら、楽しいんじゃない?



 なんて安直な思いで一次創作の沼に足を踏み入れることになりました。

 だって、好きなものに好きなもの足したら大好きなものになるじゃん。多分。



 そして一次創作用Twitterアカウントを作成し、迷走すること半年。

 初めての一次創作に四苦八苦し、自由過ぎると逆に何を書いていいか分からなくなるんだなという知見を得た頃。


 とりあえず短編でもいいから書いてみようとムーンライトノベルズに投稿し始めたのが、「相性最高な最悪の男」という小説でした。


 本当は最初、人に見せられるような綺麗な一次創作を目指していたのですが、全く書けなかったので、逆に欲望詰め込んだらびっくりするほど筆が進みました。

 人間素直が一番ですね。


 創作処女作ならず、小説処女作でもある本作品。

 思ったよりたくさん読んでいただいて、感想なんかもいただいて、忘れていた熱が呼び覚まされることとなりました。


 物語を作るって超楽しい。

 日常に忙殺されて忘れていたそんな気持ちを取り戻し、3日に1度3000字更新という生活を半年間続けた結果、短編の予定だった話は伸びに伸び、当初予定の3倍以上になる30万字を書き倒して無事本編の完結に至りました。



 完結を迎えて、完結祝いの感想もいただきすごく有頂天になっていたんですね。

 その時に思ってしまったんです。



 また、本を出したいと。

 自分の描いた漫画を、本にして手に取った瞬間の嬉しさを思い出してしまったんです。


 だから描き始めてしまったんですよね、漫画。

 楽しい地獄の始まりです。




 やっぱり仕事や家事をしながら執筆というのは正気の沙汰じゃない。

 何度そう思ったか分かりません。


 もちろん漫画を描くのは楽しいのですが、同時に不安も大きかったです。

 ちゃんと話が伝わるのか? 面白いと感じてもらえるのか? そもそも見てもらえるのか?


 元々二次創作の人間だっただけに、まるで無名の作家が拙く描き上げた素人の漫画を、誰かに読んでもらえるのか? という自問自答は日々繰り返していました。

 一次創作は自由で気ままでだけど孤独ですね。



 それでも何とか、小説執筆時から応援してくださっている方に力を貰いつつ漫画を描き上げていき、10か月後。


 とうとう漫画完成の目途が立ち、11月のコミティアへの申込みを決意しました。

 一次創作を始めてから1年ちょっとでのイベント参加です。


 人生最長となった88ページの漫画を引っ提げての初コミティア。

 社会人になってから初めてのサークル参加となる大型イベント。



 絶対に風邪を引かないよう、重要会議の前よりも徹底した体調管理を行い迎えた当日。

 魂の故郷、東京ビックサイトまで、サークル参加の注意事項を読み返したり、宅配搬入の引き取り方を思い出したりしながら向かいました。


 そして、広い会場に胸を高鳴らせ、迷いながらも自分のスペースに辿り着き、印刷所から届いた段ボールを開けた瞬間。

 ――今までの苦労と不安の全てが吹き飛びました。


 社会人の財力に任せて凝った装丁と、今まで見たことのない厚みとなった本を見て思わず笑み崩れましたね。

 同人誌ってサイコー……!



 なんでしょう。

 散々画面上で見ていた自分の漫画が、紙になると新鮮に映るんですよね。

 ページも台詞も暗記するほど見直しているのに、1ページ目からじっくり読まずにはいられない。


 時代は電子書籍ですが、紙の魔力と言うものは強い。そう思いました。



 ぶっちゃけ1冊も売れないことも覚悟していたのですが、ありがたいことにちょこちょこお手に取っていただき、初めての創作イベントは大満足で終えることが出来ました。


 イベント開始直後に訪問していただけたときのありがたさ。

 目の前で見本誌を読まれている時の緊張感。

 そっと戻されてしまった時の御縁が無かった切なさも、そのままお迎えいただいた時の嬉しさも、すごく良い思い出です。


 また、イベント会場では実に幅広い年齢層の方が参加されていて、いくつになっても、社会に出ても、結婚しても、同人活動はやれるんだと勇気をいただきました。


 5年ぶりとなったイベント参加ですが、懐かしくも新鮮な気持ちで楽しむことが出来ました。

 もうすっかり一次創作の沼にハマり込んでしまい、描きたいものが沢山あって幸せです。


 もちろん楽しいことだけじゃなくて、産みの苦しみも上手く描けないもどかしさも、作品を見てもらえない辛さも諸々たくさんあったんですけど、出来上がった同人誌の前にはすべてが霞んで見えます。鳥頭なので。




 社会人になって同人活動はやめてしまった、という人は多いんじゃないかなと思うんですけど、仕事が少し落ち着いたらいかがでしょう。

 楽しい地獄で待ってます。


ただただ楽しかった思い出を書き散らした文章を最後まで読んでいただきありがとうございます。

とにかく同人活動って楽しいんだなぁってことが伝われば幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] よき
[良い点] 大変なんだけど、すごく楽しくて、すごく生きてる感じがして、それが宝物になるのですよね。 とても綺麗なエッセイでした。
[良い点] 情熱と解放感が伝わってきます! 懐かしいですね。 私も20代までは、漫画描きとして同人誌を作っていました。 完全オリジナル志向だったので、ごった煮サークルに入れていただいて売上げ度外視…
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