憐れなクズに華を
携帯のパズルゲームをいじりながら将来の不安をひとつずつ消していく。
私の職業はフリーマン。会社に勤めては仕事がきついから辞め、体を壊しては辞め、向いてないと自分に言い聞かせて辞めてきた。
長く続いたのはアルバイトでやっているパチンコ店員とスーパーのレジ打ちぐらいだ。
今は、唯一続けてきたアルバイトを辞め運送会社に入社し、それを辞めちょうどフリーになったところ。
会社を2週間で辞めた為まだアルバイト先に在籍しているので月末までは職に就いている事になっている。私は今の状況を正確に理解し、正解を導き出した。私の職業はフリーマンであると。
私の人生を振り返ると説明のつかない事柄がたくさんある。
小学生の時に休み時間から帰ってくると机の上に花瓶が置かれており、作りかけの天体星座表には新たに無数の星がこれでもかというほど描かれていた。
私は最初、いじめを疑ったが残念なことに私にいじめを受ける謂れはなく、決定的に否定できるのが花瓶に刺さっていたのが菊やユリではなく見たことのない美しい花だったのだ。
先生に報告をするか迷ったが、この行為がいじめ以外に何かのメッセージだと考え、花を一輪手に取り、花の名前と花言葉を聞きに職員室へ向かった。
担任は腕の毛が濃いつぶらな瞳をした熊のような先生だったが私が後ろ手に隠しておいた花を差し出した時、つぶらな瞳にうっすらと涙が浮かんでいたのを覚えている。
先生が勘違いをしているのを尻目に私は容赦なく、端的に花の名前と花言葉を聞いた。
「成熟した大人の魅力」カトレアの花言葉だ。
誰がどういった理由で私にこのカトレアをプレゼントしたのか私には皆目検討がつかない。
私は怪訝に思いながらも先生にそのカトレアをプレゼントした。
腕の毛が目に入って痛くないのかなと思いながらも先生は開いていたパソコンを閉じながら涙を拭っていた。
私のリアクションが小さかったせいかこのようなことは二度と起こらなかった。私は誰にどう相談すればいいのか、どう説明したらいいのかわからないまま小学校を卒業した。
ちなみに天体星座表は区で開催されている小学生工作部門で銅賞をいただいた。