中年と年中
せっかく家族でカフェに来たのに夫も息子も家にいるときと何も変わらない。
「ユウキ、おしぼりで顔を拭かないでよ。みっともない」
「今は静かにしてくれる?競馬の予想してるから。今日はG1があるんだ」
「日曜日でせっかくのみんなの休みなんだからカフェを楽しもうよ」
「この場の空気は稍重って感じか」
「ねえ、ユウキ。その服ずっと着てるから着替えようって言ったよね」
「勝負服だからこれでいいだろ?この服着てると三連単の勝率がいいんだよ」
「カフェまで来て競馬しか考えてないって変だよ。ねえ、サトシもおかしいと思うよね?」
「えっ?」
「サトシもゲームやめよっか?」
「ヤダ!」
「格ゲーだか何だか知らないけど、ゲームは家でやろうね」
「ヤダ!」
「クマのくうちゃんも置いてこようって言ったよね」
「だってモコモコできもちいいんだもん」
「ここはサトシの好きなクッキーもモンブランもあるよ。食べよっか?」
「うん。ヤッター」
競馬を嗜む中年みたいな年中の息子。
ゲームやお菓子が大好きな年中みたいな中年の夫。
二人を養う私の苦労はずっと絶えることはないだろう。