宿りしエネルギー
俺は現在、非常に混乱している。
だから今起きたことを頭の中で整理することにした。
まず、俺はバイトの帰宅途中でコンビニに寄り軽く買い物をした後、多色に輝く流星群を目の当たりにする。
しかしその直後にかなりのスピードで走ってきた車に跳ねられ、致命傷を負ってしまう。
そのまま死を覚悟したのだが、デーメーテールと名乗る謎の少女が現れ今に至る。
「……マジで意味わかんねぇよ」
「ああっ、宿主様が悲しそうな顔をしています! これは"おとめ座の力"を発揮し、宿主様に安らぎを与えなければ…!」
おいおい、マジでやばそうだぞ。死に際に頭の狂った女の子とお話するイベントなんざ望んでないから。
「ってか、お前何者なんだよ! なんで俺は死んでねぇんだよ! 思いっきり車に轢かれて吹っ飛ばされだんだぞ! そもそもここどこだよ、天国か!?」
「落ち着いてください宿主様。貴方の疑問に私がお答えしましょう!」
この状況で落ち着いていられる猛者は存在しないだろう。ただ、この少女は何かを知っているようだ。
「まずは私は何者なのか? ぶっちゃけこの星に飛ばされた理由は聞いておりませんが、"人の形をした高エネルギー"と考えてください!」
はい、分かりました。とはならないよなぁ。
「次に何故致命傷を負った貴方が死んでいないのか。それは、死ぬ直前に私が宿ったことにより、宿主様は高エネルギーを手に入れました。このエネルギーにはどんな怪我もあっという間に回復してしまう治癒能力も備わっていますから、簡単には死ななくなりました! ナイスタイミング! テールちゃんかわいい!」
漫画みたいな設定に頭を抱える。
死ななかったことは確かに嬉しいのだが、自分が人間離れしていることがかなり衝撃的だ。
「最後にここはどこなのか。結論から言うとここは宿主様の精神空間です! 私を目で認識出来る唯一の空間であり、宿主様の感情を詳しく表せる世界です! ここでの出来事は、現実世界では電気がバチッとなった一瞬の間に行われています」
一通りの説明が終わると、デーメーテールはふうっと息を吐く。
「ただ、私が何故この星に飛ばされたのかをハッキリ覚えてないんですよね……なので! 私が目的を思い出すまで、宿主様の中に住ませていただきますねっ!」
「いやいやいやいや、勘弁してくれよ!」
「残念ながら決定事項です! それに、宿主様はよく見るとイケメンですし、私のタイプですので離れたくありません!」
サラッと人生初の告白をされる。しかし、彼女はとてつもなく美少女だ。告白をされて嫌な気持ちはしない。
でも、それとこれとはワケが違うだろう。一瞬でも心が揺れた自分を殴り殺したい。
「ダメだダメだ! 他を当たってくれ」
「嫌でーす! 宿主様には拒否権はありません! それではこれからよろしくお願いします!」
彼女がそう言った瞬間、空間がグニャリと歪曲し、俺だけがどこかに吸い込まれていく。
どんどん遠ざかっていく彼女に向かって全力で叫んだ。
「俺の中に勝手に住み着くんじゃねえええええええ!!!」
ーーベッドの上にいた。
「……は?」
いきなりの場面転換に頭が追いつかない。何がどうなっている?
目の前には2人のナースが立っている。
どうやらここは病室らしい。
「せっ、先生! 意識不明の重体だった患者様が起きましたあああ!」
***
病院に運ばれたとき、俺は折れた肋骨が肺に刺さり腰と膝の骨が砕け、両足はとんでもない方向に曲がり確実に死亡したと思われていたらしい。
しかし、俺は退院した。肋骨も腰も膝も足も全て正常である。擦り傷程度の傷すらも見当たらない。
医者には「なんで生きてるの!?」と仕事上絶対に言ってはいけないだろう発言をいただいた。光栄だな。
これは、精神空間でデーメーテールが言っていた治癒能力のおかげなんだろうか。
「……デーメーテール、いるのか?」
「はいはーい! 呼びましたか宿主様? あとテールちゃんって呼んでくださいっ」
姿は見えないが、無邪気な少女の声が耳に響く。やっぱり俺の中に住み着かれているのか。
「1晩で致命傷が治ったんだが、これはあんたがやったの?」
「そうですね! 正確には私を宿したことで得たエネルギーが、血液等の細胞達よりも早く対応して身体を修復したって感じですね〜」
ああ、なんて便利な身体なんだろう。もう一生、死ぬ恐れはないだろうな。
「ところで宿主様。ご自宅には戻らないんですか? ご家族が心配しますよ?」
大学が見えてきた頃彼女は疑問に思ったのか、俺に「タブー」な質問を投げかける。
昨日宿ったばかりだし、仕方のないことなんだろうけど……
「家族は、いない。俺が小さい頃、何者かに全員殺されたんだ」
バトルアクションのお話です。
熱い戦闘シーンでもりあげれたらいいなと思います。