プロローグ
その日、全世界各地で流星群が観測された。
日本時間では深夜0時だった。
なんの前触れもなく、突然の出来事だったという。
人工衛星からもそのような情報はなく、全世界の人が皆、何も知らなかったのだ。
もちろん、その全世界の人のうちの一人である、天神弦人も知るわけもなく、深夜0時にコンビニで菓子や雑誌を買い自宅へ向かっていた。
「……? なんだ?」
俯いて歩いていた天神を、真っ暗だったはずの空から赤く、青く、黄色く、白い摩訶不思議な光が包み込む。
そんな理解不能な色の正体を確かめるべく空を見上げる。
天神は目を見開く。
「これって……流星群? しかもそのひとつひとつの色も違う……?」
頻繁に流れ星を見るわけではないが、この現象が常識から外れたものだということは、専門的な知識を持っていない彼にも理解出来ることだった。
天神はこの現象を見て「感動」と「恐怖」を感じた。
まるで地球が終わってしまいそうな異常現象が、感動してしまうほどに綺麗だったから、ただ怖かった。
「はやく、帰ろう」
なんとなくだが、このまま見とれていては嫌なことが起きそうだ。胸騒ぎがする。
走り出そうとして空から目を離し正面向くと、こちらへ直進してくる車があった。
その距離、約10m。
避けられるはずもなく、彼はまるで石ころを蹴飛ばすように車に跳ねられた。
石ころのように宙を舞う天神の膝の骨は砕け、足がありえない方向を向いている。
そのまま数メートル飛んだ天神は無残にもコンクリートに身体を叩きつける。
「あっ、がはっ……」
肋骨も折れただろうか。
口からは大量の血が溢れ出す。
ああ、そうか。俺はこの綺麗な景色を見て死ぬのか。
奇妙な流星群はいまも降り続いている。だが、彼にはそんなものを気にしている時間などない。あとは迫り来る死を迎えるだけだ。
「まだ……死にたく、なかっ……たな……」
そして、天神はそのまま眠りにつく。
ーーはずだった。
『それはかなり困るな!』
聞いたこともない声が聞こえてきた。
天神は驚き目を開く。
そこは程よく気持ちのいい風が吹き、大地を覆い尽くす目に優しい緑の芝。天気は少し雨模様だが。
『せっかく宿ったというのに、早々に死なれては困るでしょ?』
声が聞こえる方を向くと、見た目的には同じくらいの年の少女が佇んでいた。
「あ、あんたは……?」
『はじめまして、わたしはおとめ座のデーメーテール。テールちゃんと呼んでくださいね!宿主様!』