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春と和歌

作者: りんぷ

萩村中学校と言えば、地元では偏差値が低くも高くもない私立学校である。

そんなそこそこの中学に通って二年目になる椎木遊は、とある問題にぶつかっていた。


「え、まだ書けてない?」


「うん、なんだかどれもよく分からなくて。」


「あんなん適当に書いとけばいいのに。」


国語の授業で出された宿題が、椎木は未だに出来ていないのだ。宿題の内容は、教科書に載っている和歌を一首選んで小説を書いてみるという至ってシンプルなもので、これを問題というには、些か大袈裟すぎるかもしれない。しかし、椎木にとっては重要なことだった。


「適当にすら書けないから困ってるんだろう。」


むしろ書くどころか、和歌すら決めにれていないのだ。

そう伝えると目の前で焼きそばパンを頬張っている幼馴染みは、目をまん丸とさせ、やばいじゃんとだけ言った。

そうなんだよ、やばいんだよ。

周りが嬉々としている昼休みに溜息しか出ないほどやばいんだよ。


「明日、締め切りだぜ?せめて、和歌くらい今決めとけよ。」


「だな……。」


パラパラと教科書をめくって眺めていると、教室が少しざわついた……というか、どこか色めき立っている。


「あ、中原さんだ。」


そんな周りの様子に気づいたのか、幼馴染みもどこかソワソワと廊下を見ている。


「中原さん?」


「知らない?中原夏って、入学した時から美人って騒がれてたんだけど……。」


そんな人いたんだ、初めて知った。


「ほら、右の方……って、何見惚れてんだよ。」


褐色が良く、ニコニコとした笑顔の中原は噂通り美人だと思う。でも、椎木がそれより釘付けとなったのは隣のポニーテールの方だった。全体的にひょろ長いポニーテールの子は、まるでキリンのようだ。


「ポニーテールの子の名前分かる?」


「え、そっち!?柚月律だよ。お前、柚月さんに惚れたの?」


惚れたとかそう言うことじゃなくて、ただ少し気になるのだ。目で追ってしまうというか、何というか。


「柚月さんは辞めといた方が良いぞ。確かに美人な方ではあるけど、中原さんには敵わん。それに男嫌いって有名だからな。」


C組の杉野が話しかけても塩対応だった、なんて聞いてもいないことをしゃべり始めた幼馴染みを他所に椎木は席を立ち、柚月を追いかけた。

どうして追いかけたかなんて自分自身でも分からなかったけど、気がついたら走っていたのだ。

やうやく追いついた柚月の背中に、椎木は大きな声を出した。


「柚月さん!オレと友だちなって下さい!!」


廊下中に響いた椎木の友だち申請に、周りにいた人たちは一斉に笑い出した。


「ほら、律。友だちだって。」


しかし、周りと同じように笑う中原に背中を叩かれている柚月だけは、黙って椎木を見ていた。


「君、変わってるのね。申請しなくても、友だちぐらいなるのに。」


"男嫌い"そんなデマ誰が流したのだろう。こんな暖かく微笑む人なんてそうそういないのに。幼馴染みは中原の方が美人だと言ってたけど、椎木には柚月の方がずっと美人に見えた。


「これから、よろしくね。」


「こちらこそ、よろしくね。」


"その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな"

ふと、教科書に載っていた和歌を思い出した。まるで彼女のことを言っているような和歌だ。おかげで宿題はなんとかなりそうだ。

初めて投稿させて頂きました。拙いし、恋愛と書いておきながらあまり恋愛要素のないという駄文で申し訳ないです……。

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