第3話「天啓」
時間が減っていく。
33:26。
もう半分ほどしか時間が残っていない。
頭が疲れてくる。
まずい。
何か手を打たなければ。
そういえば……このスキルというのは、設定期間中も有効に使えるのか?
体力の値を減らした時、どことなく体がだるくなったような感覚があった。
生命活動が困難というほどではなかったが。
リンクしているのかもしれない。
能力やスキルの設定は、今こうしている間にも発動しているのでは?
舞い降りた天啓に従う。
パラメーターの項目に戻って知力と体力を200にする。
心なしか精神が冴えてくるような気がした。
頭がすっきりとする。
気力も充実している。
31:45。
時間はまだある。
勝負はここからだ。
運を検索して、幸運補正があると思われるスキルすべてにチェックを入れる。
初期ポイントマイナス790。
かまわない。
後で戻せばいい。
何かが起こってくれ。
僕は祈るような気持ちで画面をスクロールする。
流し読みをはじめる。
全体の中ほどから下あたりで違和感があった。
あわててポインタを戻す。
何が気になった?
スキル一覧の画面をよく見てみる。
一つだけフォントと書体が違う。
ほんの少しの違和感。
設定勘。
スキルをチェックしてすぐ、警告が入った。
このスキルは取り外しができません。
効果時間は1時間です。
1時間たつとスキルが消滅し、減ったポイントも戻りません。
30ポイント消費。
取得しますか?
これだ。
直感が告げる。
僕はこれを待っていた。
迷わずに「はい」の文字をクリックする。
世界が変わって見えた。
いや、変わったのは画面だ。
僕にとってふさわしいスキルだけが自然にフォーカスされる。
画面の文字が黄金色に輝いて見えるのだ。
必要なスキルだけが光っている。
これなら間違えようはない。
あとは時間との勝負だ。
目を引くスキルにだけ、次々チェックを入れていく。
天運、転速剣、地聖の体捌き、視神経強化、血管強化、内功、基礎体力、話術、再生、内臓強化、金雁軽身功、人心掌握50、魔力耐性……
魔力耐性?
思わず手が止まる。
スキル一覧の最後尾に置かれているスキルだ。
異常に消費が大きい。
初期ポイントのすべてをつぎ込まねば取れないほど。
魔力耐性 消費100
これを取っていいのか?
魔力強化や魔力操作のほうがはるかに有用に思える。
そちらの消費は5だ。
耐性だけが100。
普通なら取ろうとは思えない。
だが、勘は取れと言っている。
強く輝いている。
設定勘を信じないのなら僕にすがれるものは何もない。
僕はチェックを入れた。
ふうと一息つく。
残り時間は17:09。
もう仕上げに入らないといけない。
まずは初期ポイントをプラスにしなければ。
現在の初期ポイントはマイナス1020。
ずいぶん減ったものだ。
ステータスを戻して運のチェックを外してもマイナス230。
寿命換算でマイナス115年。
増やさないと。
検索機能でチェック入りのスキル一覧を表示させる。
チェック済み検索……取得スキル一覧
日本語、公用語、算術、一般常識、死への忌避、怒る、恥じる、怖がる、道具箱、鑑定、天運、転速剣、地聖の体捌き、視神経強化、血管強化、内功、基礎体力、話術、再生、内臓強化、金雁軽身功、人心掌握50、魔力耐性。
最初からチェックが入っている項目がある。
道具箱のチェックを外す。
100ポイントが増えた。
これを外すのはまずくないか?
アイテムボックスの機能は重要に思える。
いや、しかし。
勘に従おう。
100ポイントを増やせる選択肢はめったにない。
まだ足りない。
マイナス130。
どれを削る?
一覧にある「死への忌避」や「怖がる」といったチェックを外してみた。
とたんに悪寒が走る。
やばい。
これを外すのはだめだ。
見た目には不要そうだが、おそらく外すと致命的な何かが起こる気がする。
取得スキルの一覧をざっと見る。
削れる項目はない。
パラメーターか、その他の項目をいじるしか道はない。