第2話「減っていく時間」
画面を変えると、項目の見出しがあった。
パラメーター
スキル
その他
設定するのはこの三つ。
異常に小さくなったスクロールバーが見える。
項目が多い。
おそらく全てに目を通すのは不可能。
まずはざっと確認し、大枠を理解する。
パラメーターの項目はほとんどない。
年齢、体力、魔力、魅力、権力。知力、財力。
その7つだ。
年齢は15が初期値。
1つ動かすごとにポイントが1下がる。
増やしても減らしてもポイントが減る。
ここを操作する意味は薄そうだ。
体力は100が初期値。
10減らすとポイントが10増える。
30程度まで減らしたところ、生命活動の維持が困難、という警告が出た。
現実の体までが重くなったように感じる。
これを削るのはまずい。
僕は少し考え、80程度まで数値を戻しておく。
魔力も100が初期値。
これはゼロにしても警告がでなかった。
生きるのに必要ではないのだろう。
ひとまず50で固定する。
魅力は10まで落とすと、コミュニケーションが事実上不可能、と出た。
70程度まで戻しておく。
権力はゼロにすると、逃亡奴隷で職業が固定、となった。
100まで戻し、180まで伸ばす。
これ以上増えない。
どうやら上限らしい。
知力は現状維持。
財力をゼロにすると、借金100億相当、と出た。
自己破産できるだろうか。
わからない。
負の人脈もありそうだ。
とりあえず初期ポイントを残して全部つっこみ、120としておく。
時間を見る。
46:11。
思ったより経過が早い。
急がねば。
残りの項目はスキルとその他。
大量の文字ばかりが目につく。
例えばスキルだと、
斧戦闘、火薬の知識、錬金術、薬品取り扱い、怪力、剛力、火事場の馬鹿力、踏ん張り、戦闘勘、直観、分析、解析、整理整頓、水耐性、潜水、水魔、睡眠効率、槍戦闘、格闘術、刀剣取り扱い、危険物知識、戦闘速度、魔力回復、探索術、謎解き、フック、漢字検定、恋愛指南、女衒の心得、速読術、記憶術、聴覚向上、健脚、龍眼、硬気功、値切り、火魔法、水道技術者、街開発、たらし、早食い、消化効率、性欲向上、自爆、破壊王、緑の王、塩害、交渉術、サーチ、軍の知識、一般人、料理、お菓子作り、栄養管理、碧眼、奴隷使い、妖精の恋人、太陽剣、電子感知、自殺衝動、修理、詐術、算術、物理知識、航海術、星読み、星詠み、祭祀、未来予知、歴史家、政治の心得、蹴りの技能、金運、胃拡張、細菌耐性、咬筋力増加、大音声……etc
などなど。
画面を埋め尽くすほど文字で埋まっている。
ソート不要と言わんばかりの文字の羅列。
合計は1万を超える。
脈絡は一切ない。
ただ候補として並んでいるだけだ。
この中から使えるスキルを発掘?
冗談だろ?
とても成功するとは思えない。
ctrlとfキーを押すと、検索機能が表示された。
これなら。
なんとかなりそうだ。
試しに鑑定、アイテムボックス、運などの項目を調べてみる。
鑑定検索……「鑑定」を含む文字列
鑑定 鑑定眼 鑑定勘 鑑定知識 古書鑑定 故買商鑑定 人物鑑定 魔物鑑定 魔力鑑定 神具鑑定 武具鑑定 毒鑑定 遺跡鑑定 鑑定家 相場鑑定 総合鑑定 宝石鑑定 素材鑑定 能力鑑定
これはだめだ。
候補が多すぎる。
どれも5ポイント以上消費する。
すべてチェックするのは無理だろう。
ひとまず鑑定にだけチェックを入れておき、次の項目に移る。
アイテムボックス……該当なし
アイテム検索……「アイテム」を含む文字列
初期アイテム サバイバルアイテム一式 アイテム整理 回復アイテム 薬品アイテム 応急処置アイテム アイテム投げ アイテム節約 アイテム効果小 アイテム効果中 アイテム効果大
わからない。
どうすればいい。
無人島スタートならサバイバルアイテムが欲しい。
街ならポイントの無駄だ。
情報が少なすぎる。
時間が過ぎていく感覚が恐ろしい。
運だ。
運さえあればなんとかなる。
運検索……「運」を含む文字列
金運 運 神運 天運 地運 幸運 強運 豪運 運送技能 運命鑑定 運動技能 資産運用 運転技術 海運事業 開運 女運 運賃節約 領地運営 運送屋 運のツキ 企業運営 組織運営……etc
類似品が多い。
運は無理だ。
どれがいいのかわからない。
博打覚悟でどれかにチェックを入れるか?
一番強力そうなのは「神運」か?
あるいは「強運」のほうがいいいのか。
違いがわからない。
判断に迷う。
どのようにクリックしても、詳細な説明は現れない。
40:55。
右上のカウンタは刻一刻と減少を続けている。
危険だ。
このままでは。
レベルの違う実力考査を受けたときのような絶望が押し寄せてくる。
何か別のアプローチはないだろうか。
その他の項目に移動する。
少ない。
スキルと比べれば。
はるかに。
転生場所、仲間、ペット、奴隷、人格固定、種族、家族構成、容姿固定、汎用世界言語、汎用竜言語。
これだけだ。
転生場所を選んでみると、
ランダム、
市街地、
同級生の隣、
という選択肢が出た。
初期設定はランダム。
同級生の隣を選べば、おそらくクラスメートと一緒にスタートできる。
協力できるかもしれない。
情報交換をするなら絶対に「同級生の隣」を選択するべきだ。
異なる技能を持ち寄ってパーティーを組む。
それはいい。
仲間がいれば安心だ。
一人よりもはるかに効率的に異世界を攻略できるだろう。
いいのか?
それでいいのか?
この、明らかに殺し合いを推奨していると思われる状況で?
友達を信用していいのか?
ばかな。
クラスメートは他人だ。
他人ほど信用できないものはない。
転生場所を変えるのは不可能。
仲間、ペット、奴隷などの項目を調べてみる。
設定をいじればいじるほどポイントが減っていった。
その他の項目をいじるのは無理なのか?
スキルに戻るべきか。
だめだ。
何も決められない。
有用そうなスキルを選んで、運に賭けるしかないのか。