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第28話 いつもと違う席

 季節が移り変わるのは早い。日本は既に、12月を迎えていた。

 今年は例年になく暖かい冬になっていた。地球温暖化だとか難しいことは夏樹にはわからなかった。でも、ちょっと天気がおかしいな、とは思うようになっていた。

 そんな12月。夏樹に1枚の手書きの手紙が届いた。それは、優翔からだった。


 ☆ X'masパーティーのお知らせ ☆

 来る12月24日(火)に僕、坂上ゆう翔の家でクリスマスパーティーをします♪

 クラスメイトや友達を中心にこのお手紙を送ってます。

 プレゼントとかそんなのいらないので、気軽に参加してほしいです☆

 当日、待ってます☆★☆★


「……。」

 夏樹はあの自殺未遂以来、優翔と顔を合わすことが極端に減っていた。この優翔のクリスマスパーティーは毎年あったが、今年はさすがに来ないだろうと思っていただけに驚いた。

 手紙の最後に、わざわざ書き足したと思われる夏樹宛のメッセージがあった。


 会いたい。

 夏樹と話がしたい。

 お願いだから、来てください。

           ゆう翔


 なぜ優翔が自分の「優」の字をいつも平仮名で書いているのか夏樹は気になっていたが、今はそれよりもなぜここまでして優翔が夏樹に会いたがっているのか、真意がわからなかった。

 考えた挙句、夏樹は水穂と一緒にパーティーに参加することにした。そして二人で現れた姿を見た優翔はかなり驚いた様子を見せた。

「久しぶり」

 夏樹は最近になって、ようやく自然に笑顔が出せるようになっていた。

「え……っと。こちらは?」

 優翔が水穂のほうをジッと見て夏樹に聞く。

「あぁ……クラスメイトで……その……」

 言おうかどうしようか迷ったが、言った。

「いま付き合ってる、飯沼水穂」

「初めまして、飯沼です」

「……。」

 優翔はポカンとしたまま二人を何度も見つめた。

「な、なんだよ。そんな見るなよ。恥ずかしいから……」

「い、いや。ゴメン! それより入れよ」

「うん。行こ、水穂」

「お邪魔します」

 夏樹と水穂は仲良さそうに廊下を歩いてパーティー会場であるリビングへ向かった。

「ゴメン……俺、全然知らなくって」

 優翔の弟の部屋から出てきたのは、明日香だった。

「いいよ。私は知ってたから」

 明日香はこんな手紙を、優翔からもらっていた。


 ☆ X'masパーティーのお知らせ ☆

 来る12月24日(火)に僕、坂上ゆう翔の家でクリスマスパーティーをします♪

 クラスメイトや友達を中心にこのお手紙を送ってます。

 プレゼントとかそんなのいらないので、気軽に参加してほしいです☆

 当日、待ってます☆★☆★


 P.S 夏樹、誘っておきます。俺も話したいことがあるので。ぜひ来てね☆


 夏樹が水穂同伴で来ることは事前に知っていた。それを承知で、パーティーに来た。むしろ、彼らがうまくいっているのかどうかが心配で今日パーティーにそれを確かめに来たようなものだった。

 優翔に悪い気はしたが、仕方がないと言い聞かせてきた。

「ゴメンな。なんか……」

 優翔がばつ悪そうに呟いた。

「いいってば! 私、純粋にパーティーを楽しみたかったしね」

「ホント? 良かった。じゃあ、リビング行こうぜ」

「うん!」

 明日香は優翔の後を追ってリビングに入った。

 夏樹はしばらく水穂とジュースを飲んだりお菓子を食べたりしていたが、しばらくいると緊張して汗が出てきた。夏以来、人の多いところにいるとなぜか落ち着かなくなり、気分が悪くなることが多くなった。まだ、精神状態が安定しないために起きることだった。

 それに、家のリビングや学校のような慣れた場所ではなく、いつもと違う席に座っているというのも緊張を高めている原因だった。

 その様子を察した優翔が声を掛けた。

「夏樹。ちょっといい?」

「あぁ……うん。水穂、ちょっと行ってくるね」

「うん。体調、大丈夫?」

 水穂が心配そうに尋ねた。

「大丈夫だよ。ありがと」

 夏樹は努めて笑顔で答えた。

 部屋を出て外に出た。やっぱり少し寒いので、夏樹は思わず手に息を吐きかけた。

「ゴメンな。急に呼んだりして」

 優翔が申し訳なさそうに話した。

「ううん。いいよ。それより、久しぶりだな」

 夏樹が笑顔で話し掛けてくれたので、優翔もリラックスして話すことができた。

「それと……本当にゴメン。今まで、素っ気ないフリして……」

「え?」

「俺さ……お前が……その……あれ以来、様子がおかしいから怖くて、話しかけらんなくて……」

 あれ。自殺未遂の件であるのは、夏樹もすぐわかった。

「しょーがないよ。俺、別に優翔がどうとか思ってない。俺が逆だったら、ゼッタイ話しかけないし」

 夏樹はクスクスと笑った。優翔もつられて笑う。

「良かったよ。俺、夏樹に嫌われたかと思った。夏祭りの件もあったし。今日も……来ないと思ってたから……」

 優翔は涙ぐんでポロポロと涙をこぼした。

「わわわ! 泣くなって、も〜」

 夏樹は慌ててハンカチを優翔の頬に当てた。

「ありがと」

 しばらく沈黙が続いた。

「なぁ、夏樹」

「なに?」

「お前、飯沼さんと付き合ってるの、マジ?」

「……マジだよ。ウソついてどうすんのさ」

 夏樹は庭に置いてあった椅子に座った。違う人の家の違う椅子に座るのは、やっぱり少し緊張する。

「岡本は?」

「……。」

「お前、岡本のこと好きじゃなかったのかよ?」

「……好きだったよ」

「じゃあなんで、飯沼と!?」

「俺といると、岡本がイジメられるから……だから、付き合わないって決めたんだ」

「……。」

「それだけ」

 優翔はそれ以上、問い詰めも何もしなかった。ただ、さすがは親友だと思える行動をした。


 初めて、男友達に頭を撫でられた。


「お前……強いな」

「……!」

「俺だったら、そんな風に……他人(ひと)のことまで考えられないよ。夏樹は、強い」

「強くなんかないよ」

 夏樹の声が急に震えだした。

「俺、ホントは明日香が好きだよ。でも、水穂も好きだよ。もう、何がなんだかわからないんだ。自分が自分じゃない気もすることがあるし、もう頭の中がグシャグシャで……」

「……お前さ、ずっとそんなだよな」

「え?」

「なんか、自分が他人に迷惑を掛けないように、自分の気持ち隠して毎日過ごすっていうか……なんかさ、そんなのしんどくね?」

「……。」

「もっと、ポジティヴに行こうぜ!」

 優翔はやっぱり、いい友達だ。夏樹は心底そう思った。

「よーし! そうと決まればとりあえず中に戻って料理とケーキ食べようぜ!」

「えぇっ!?」

「ほーら、グズグズすんな! レッツゴー!」

 優翔は強引に夏樹を家へ連れ戻して、リビングに連れて行った。

クリスマスパーティーで絆を取り戻した優翔と夏樹。クリスマスパーティーはまだまだこれから! 思う存分楽しんで想い出は作れるでしょうか?


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