6 大団円は雅に♪
「お兄ちゃん、格好ええわ!」
やはり、由利亜はブラコンだと、ブラックスーツを見事に着こなしている亮は少し嫉妬する。しかし、今日は親友の瑛丞の結婚式なのだと大目に見る。由利亜にぞっこんの亮は、結構嫉妬深い。
伝統的な羽織袴姿の瑛丞は、弁護士になった途端に今井さんと結婚することになった。お母ちゃんは驚いたが、おめでたなら仕方ない。花嫁さんのお腹が目立つ前にと、上賀茂神社で結婚式を挙げ、鶴の屋で披露宴をする。
瑛丞の大学の友だちが東京から駆け付けてくれた。
「あっ! やっぱり西園寺は、由利亜ちゃんと付き合っているんだ」
京友禅の振袖姿の由利亜をエスコートしている亮を見つけて、サークルの友だちが騒ぐ。京都の大学院に進学すると聞いた時から、怪しいと思っていたのだ。
サークルの先輩の江口さんは、美人の溝端さんをやっと口説き落とし、もうすぐ結婚する予定だ。
イギリス貴族の血を引く亮に、積極的にアピールしていた華やかな矢口さんは、なんとバリバリのキャリアウーマンになり、もてもてのシングルライフを謳歌している。今日もハンサムなボーイフレンドを二人連れてきて、競わせているのを見て、由利亜はびっくりするが、それも一つの生き方やと感心する。
由利亜は、白無垢の花嫁さんの手を繋いで歩いている瑛丞お兄ちゃんに、心より「おめでとう!」と声が掛けられた自分が嬉しい。ブラコンな自分が、鬼千匹の小姑になるのではと心配していたのだ。
「由利亜の花嫁姿は綺麗だろうね」
亮は早く結婚したいが、由利亜には卒業してから女将修行が待っている。それに、亮のイギリスの家族は日本の旅館の婿に入るのに難色を示していたのだ。
「でも……亮さんのご家族は反対してはるんやろ?」
亮は、晴れやかに微笑む。
「家族も、由利亜にぞっこんなんだ! 問題は気に入り過ぎて、京都にちょくちょく来そうな事だね」
パッと由利亜の顔が輝く。この前、日本を訪れた亮の両親に挨拶したのが、気に入られたのだ。
「ほんまに良かったわ!」
可愛い顔で微笑む由利亜に、我慢できずにキスをする。雅やかな振袖が、青空の京に舞った。
「これ、結婚するのは由利亜やないぇ!」
厳しい女将さん修行が終わったら、由利亜と亮は結婚しようと約束した。京都に新しい名物若女将と、ハンサムな大学講師の旦那様が鶴の屋を繁盛させていく日も近い。
結婚式の三三九度を見ながら、由利亜と亮は微笑みあった。
おしまい