桜が咲いた日
このお話は、阿賀崎高校という架空の高校に通う5人の男女の青春ラブストーリーを目指しています。
完全に趣味で書いているので、文章がへんだったり、話がまとまっていなかったり、大変読みづらいものとなっています。
不定期連載です。
それでもよければ読んでやってください。
ふわり、と舞った桜の花びらは風に乗ってどこかへ飛んでいった。
天気は快晴、気温もぽかぽかな本日は、少々風が強いところさえ目を瞑れば、絶好のお花見日和と言えそうだ。
とくに、河川敷に沿って植えられた桜並木はまさに見ごろで、ひらひらと散る様子が儚さを演出していて、これもまた美しい。
桜並木を通る人々は、時折立ち止まっては桜を眺め、あるいは写真を撮ったりして、春という季節を堪能しているようだった。
そんな春めかしい風景のなかを、全速力で走る少女がいた。
肩のあたりでくるりと内側に巻かれた、綺麗なボブヘアにも、学校指定の上品なセーラー服にも、桜の花びらがたくさん付いている。
そんな彼女、藤倉羽菜は学校へと急いでいた。
羽菜が昇降口に辿り着いたとき、そこは既にひとで溢れていた。
ああ、と羽菜はため息をつく。
こうなってしまっては、背の低い羽菜ではアレを見ることはできない。
だから目覚まし時計をかけたのに、まったく肝心なときに仕事をさぼってくれる。
羽菜は仕方なく、ある程度人混みが解消されるまで待つことにした。
真奈美と同じクラスなら嬉しい。
愛花と奈央が同じならなお嬉しい。
それから……。
ああもう、だから早く確かめたいのに!
羽菜はちらりと昇降口のなかを覗くが、見えるのは人の頭だけで、肝心のクラス発表の掲示板はまったく見えなかった。
本日ふたつめのため息。
羽菜にとって、クラス替えはとても重要なイベントだ。
羽菜の通う阿賀崎高校では、1年から2年にあがるときしかクラス替えがない。
つまり。
「それから、あの真城悠くんと同じクラスに…!」
このクラス替えに、羽菜の恋の命運がかかっているのだ。
混雑もだいぶ収まったころ、羽菜は自分の名前が呼ばれていることに気づいた。
「羽菜ちゃん、羽菜ちゃん」
小鳥がちゅんちゅんと鳴くような、高くて可愛らしい声だった。
「あっ、ソラちゃん!」
羽菜は、自分を呼んだのが幼馴染みの本田空乃であることを確認すると、彼女に駆け寄った。
本田空乃は長い髪の毛を揺らしながら羽菜に近づくと、にっこりと笑った。
「私と羽菜ちゃん、おんなじクラスだったよ」
「ほんとに!?」
やったー、と、羽菜は右の拳を突き上げた。
羽菜と空乃は小学校からずっと同じ学校に通う幼馴染みだが、クラスが同じになったのは実に6年ぶりだ。
「羽菜ちゃん、もしかしてまだ掲示板見てない?ひと、いなくなってきたから一緒に見に行こう、私たち1組だよ」
羽菜は空乃に連れられて、人がまばらになってきた掲示板へと近づいた。
1組の教室は校舎2階の角だった。