10
短いです。
そして主人公のオヤジについて書き忘れたことがあったのでこのタイミングで書きます。じゃないと、一生語られることなく、もしくは忘れたまま終わりそうです。
すみません。
相変わらずクオリティは低いままですが、なるべく高くなるように頑張ります。
ユウが長身の武人の女性についていって着いた先は『鍛冶屋』であった。彼女の実家らしい。
この鍛冶屋では『機械魔術』を扱うためのデバイスを製作している。あの機械兵やケイゴが使っていた二丁拳銃みたいな物もだ。
「それにしても、アンタよくこんな古いモン使ってるよな」
「貰った物だし。それにたまにしか使わないし」
「そうかい」
鍛冶屋の彼女はそう言って、またまじまじと二丁拳銃を見つめた。
しばらく眺めた後、「やっぱり」と呟いて二丁拳銃を鍛冶屋の奥にある卓袱台に乗せた。
「やっぱりって何が?」
「この拳銃さ、二〇年くらい前にウチのオヤジが作ったモンだよ」
ほら、と言って彼女は拳銃のグリップの部分を見せてきた。よく見てみるとグリップの下の方に人の名前が彫られているのに初めて気づく。
ドクト・フェッラー。それが目の前にいる武人の父親の名前だろう。
「そういや、ウチの紹介がまだだったね。ウチはレンディ・フェッラー。アンタは?」
「ユウ・ブライト」
ここでわざわざ『ルークス』と名乗る必要はないだろう。というより、名乗れないという方が正しい。
父親との約束もあるし、それにこの国では『ルークス』という姓に良い印象を持たない。
「ユウ・ブライトな。覚えたよ」
「そんな事より、その拳銃を改造するって言ってたけど……いつまでかかるんすか? 俺急いでんだけど……」
ユウがそう言うと、レンディは少し渋い顔をした。
「悪い、一週間かかる」
まあ実際の話、使い勝手の悪い今の拳銃を改造してくるのは嬉しいが、どのくらいの期間がかかろうともユウが主に使っている武器は拳銃ではなく刀な訳だからどうでもいい。
「そういや、アンタ誰かに似てるね」
「気のせいじゃないっすか?」
シド・ルークスは自分の肉親を殺した大罪人である。実の両親を殺している。
悪鬼の子。シドはそう呼ばれ、法で裁くよりも和国にそんな悪鬼の身を置く事に危険を感じた政府は、シドを他の国へと追放した。
こうしてシドは、辿り着いた首都──それも人気の無い森の中にひっそりと建っていた小屋に住みついた。
そこから魔術学園に通うようになり、カイトと出会う。
それがシドの一四歳の記憶である。
ユウは『無銘』に込められていたシドの記憶を読み取っている。だから一応はシドがどんな人生を送ったかはわかっているつもりだ。
シドが両親を殺したのは『感染』したからだ。当時はまだ悪魔の存在が周知されていなかったし、シドも混乱の中で殺人を犯してしまった。仕方が無かったといえば仕方が無かったといえるのだろうが。
「あのさ、改造って……どんな事すんの?」
「まだ実用段階に入ってない新しい魔装に作り変える」
「うわぁ、何だろう……すごく、心配です」
「まあ任せろってぃ」
ユウは若干の不安を残して嘆息し、一週間後に受け取る約束をして鍛冶屋を去った。とにかく少し長居しすぎたかもしれない。
ゴルドーだってバカじゃない。いつまでも隠れ家に居座っているとも限らない。
ゴルドーがどこかへ移動してまた変な事をやらかす前に、確実に仕留めなくてはならない。
どこへ逃げようとも、完全にギルドを敵に回したうえにあれだけ派手な『機械魔術』を使ってくるのだから、逃げ切れるとは思えないが。
●
和国の西端。そこにゴルドーの隠れ家があると聞いていたが──、
「隠れ家じゃなくて豪邸じゃん! どこも隠れてない!?」
到着して早々驚愕していた。
「おいジンさんや」
『あ? んだよ?』
「キミ隠れ家って言ったよね? 思いっっっきり目立ってるよ!」
『知るか』
その場の雰囲気にはそぐわない、あまりにもきらびやかで煌々しい。
金持ちの考える事は平凡なユウの頭では全く理解できなかった。
『とにかく、奴の隠れ家に着いたんならさっさと始末しろよ』
「わかってるよ」
無線機をオフにする。戦闘の準備は大丈夫だ。
ユウはゴルドーの豪邸の中に足踏み入れる──そのはずだった。
入って早々に足場を失ったのだ。確認するひまもなく、ユウは底へと落っこちてしまった。
すぐさま『強化』を発動する。
左の眼球の奥が痛み始めるのを感じると、一〇枚の『翼』が展開されるのを感じた。
反転しかけていた体勢を整えて、ようやく地面に足を着けた。
そこは固い石畳だった。薄暗いが、周りをよく見れば石を積み重ねて固めた壁が周囲を囲っていた。おそらく、この豪邸の地下室だろう。
ユウから離れた場所で一筋の光が降り注いだ。その光を浴びているのは、今回の敵であるゴルドーだった。
「やはりあの高さから落としても、トマトのようには潰れんか」
「ご期待に沿えなくて残念でした。まあ、こっちは愉快な『翼』が生えてるから無傷なんだけどさ。俺以外が落ちても潰れはしないだろうけど、かすり傷程度で済むだろうさ」
『無銘』に手を伸ばす。『アレ』を使うには武人化しなくてはならない。それは『黒い雷』を利用するからだ。
『黒い雷』は武人の姿でしか上手く発動できない。
本当は人の前で武人化するのは避けたい。だが武人化と同時に『アレ』を発動すれば問題ないだろう。ゴルドーの視覚で捕捉することは不可能だからだ。
「つかゴルドーさんよ、アンタその気になればここから逃げられたんじゃないのか?」
「ああ。お前らがここに来ることは安易に予想できた」
そしてゴルドーはさも面白そうに高らかな声で語りだした。
「ならなぜ逃げなかったっか? はっ、答えは単純明快だ。オメエらをここで根絶やしにするためだ!」
気づけば、ユウの周りでは機械兵団が銃器を構えてぐるりと囲んでいた。
「知ってるぞ! 機械兵の『機械魔術』はただの
魔術師では防げん事をな!」
「ふざけた事を──」
ただの金属の塊であるはずの機械兵から、ユウにめがけてそれぞれの銃器から銃弾が発射された。
ここで待ち伏せていれば、ここを嗅ぎ付けたギルドの連中が攻めてくるとわかっていた。だからあの罠を使って一気にここに誘きだして、機械兵で一網打尽にする算段だった。
だが実際に来たのはユウという黒髪の少年だけだった。
予定とは違ったが、あの少年からは並々ならないものを感じる。そう思ったのは、その少年の目が変になったときからだった。
漆黒の夜空に浮かぶ金色の月。そういった印象を受ける禍々しい左目。すぐに危険だと判断した。
まあどちらにしろ、一番厄介そうな奴は排除した。後は確実にあのギルドを潰すだけだ。
あのギルドさえ滅ぼせば、また自分の商売が上手くいく。
そのはずだった。
「何だ……!?」
──電気が弾けるような音?
──いや雷が落ちたような音か?
それらが合わさったような音が地下室に鳴り響いていた。
「何が……何が起きている……!?」
機械兵の故障か?
否、機械兵は正常に起動しているようだ。
ならば何が原因で……?
気づけば、機械兵の一体が爆破した。
自爆か?
だがそんな機能は無い。
「何なんだ……? こんなの、ありえないぞ……!? 奴はたった今蜂の巣になって……」
機械兵が勝手に爆発するはずがない。誰かが破壊しているのだ。
それは誰か?
それはユウ。
しかしあの少年は銃弾に体を貫かれ死んだはずだ。
そこに死体だって──、
「!?」
そこには死体など無かった。何も無かった。
ありえない。
あの弾幕を躱す魔術師がいるなど、絶対にありえない。
「言ってなかったか?」
あの少年の声が地下室で木霊する。
それはあの少年が生きている事実を証明している。
また一つ、機械兵が破壊されて爆発する。
他の機械兵達がキョロキョロと頭部みたいな場所を動かすが、未だに襲撃者の姿を捕捉することなく破壊される。
「俺さ、普通の魔術師じゃないんだぜぃ」
全ての機械兵が破壊された。
爆炎が地下室を支配する。
その炎の中で、黒い雷が閃いた。
誤字脱字があったら報告お願いします。
今に始まったことではありませんが、確認しても多いもので……。




