00
今回から第二章です。
手紙を書いていた。手紙を書くことが習慣になっている。相手は最愛なる母親だ。
シャーペンを置き、手紙に誤字脱字、文法に誤りがないか推敲する。
──うん、大丈夫だ。
「親愛なる贈り物-datum-」
転送魔術が発動して、手紙が音もなく虚空に消えていく。
無事に母親の元に送れたのか、それだけが心配でならない。
教室の窓から外を覗く。今は放課後で生徒達はそれぞれ家に帰るか、部活へと向かっている。
その様子を見て、胸が痛くなった。隣には友達がいる。それが羨ましかった。けれど自分には今のところそんな人はいない。
憧れていた学園生活がこんなものだとは思わなかった。けれど、ここに来て良かったと思っている。
過去に出会った少年と再会できたからだ。もっとも、あっちは覚えてはいないだろうけど。それでも彼女にとって彼との思い出は、母親の次に大切なものだ。
耳元で手紙が落ちる音が聞こえた。母からの返事だ。このくらいの事ならケータイのメール機能を使えばいいのに、母はケータイを持っておらず買う気もない。『機械魔術』音痴だからだ。
封を切って、母親からの返事を読んでいく。
母親からの手紙を読むこの時間が一番大好きだ。ずっと繋がっている──そんな感覚がするからだ。
しかしこのときはまだ知らない。
あの日になれば、母親との繋がりが断ち切られる事を。




