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頑張れ! 開発者さんたち!

掲載日:2026/08/11

頑張れ! 開発者さんたち!


 しばらくMacを使っていた。電源ケーブルに黒い箱がないすっきりとした美形のマック。


 とても使いやすい。むしろ、電話がかかってくればMacが知らせてくれるし、スマホとの連携も便利だった。


「やっぱり、同じ仲間なんだね」


 そんなことを思いながら、快適に使っていた。


 ところが、必要に迫られてWindows 11のノートパソコンを買うことになった。


 電源を入れて、パスワードではなく数字を設定。(変わったのね)


そして知ってるようで知らない画面が表示された。


 わたしは画面の下にあるタスクバーへマウスを持っていった。


 わたしは昔から、タスクバーを画面の左端に立てて使っている。初めてパソコンを買った時から、ずっとそうしてきた。


 ところが、つかんで引っ張ろうとしても動かない。


「あれ?」


 もう一度やってみる。


 動かない。


「どこかに固定を解除する設定があるのかな?」


 設定画面を開き、それらしい項目を探した。けれど、いくら見ても見つからない。


 タスクバーは画面の下に居座ったまま、まるで、


「わたしはここから動きません」


 と宣言しているようだった。


 わたしがタスクバーを左側に置くようになったのは、初めてパソコンを教えてくださった先生の影響かもしれない。


 先生は、マウスを握るわたしたちに、こうおっしゃった。


「マウスでどんどん先へ進んでしまったら、自分がどこにいるのか分からなくなります。けれど、パソコンのよいところは、今やった作業をなかったことにして戻れることです」


 先生はそう言うと、マウスではなくキーボード操作で作業を進めさせた。スタートボタンを押して、横に行って下がってエンター。


 ゆっくりと進める。それが心の準備、ウォーミングアップとなった。


 正確な言葉は少し違っていたかもしれない。それでも、「戻ることができる」という考え方は、今もずっと心に残っている。


 あれは、よい教え方だったのだと思う。


 そのおかげで、ツリー表示や階層といった言葉をまだ知らなかった頃から、パソコンの中には順番や道筋があるのだと、なんとなく理解できた。


「今、自分はどこにいるのか」


「どこから来たのか」


「間違えたら、どこまで戻ればいいのか」


 そんなことを考えながら操作する癖がついた。


 よく「直感的に操作できます」と言うけれど、どうも、わたしの直感は、ほかの人の直感とは違うらしい。


 画面を見れば自然に分かると言われても、右クリックすればなんか出てくるけれど……


「いや、分からないから困っているんだけど」と思ってしまう。


――ちなみにわたしはエディットキーを使う。腱鞘炎になったら困るから――


 そもそも直感というものは、何もないところから突然生まれるのだろうか。ある程度の知識や経験があって、初めて働くものではないだろうか。


 少なくとも、わたしの直感は知識という燃料を入れてやらないと、なかなか動いてくれない。


 話をタスクバーに戻そう。


 少し前のわたしなら、検索結果を一つずつ開いて、必死になって解決方法を探していただろう。


 けれど、今はAIがいる。


「Windows 11のタスクバーを、画面の左端に縦置きする方法を教えてください」


 さっそく尋ねてみた。


 すぐに答えが返ってきた。


 AIの答えはこうだった。


――その機能は、Windows 11ではなくなっています――


 その内容を読んで、(あらまー)と思った。


「……なくなっている?」


「そんな……」


 長い間、当たり前のように使っていたものが、ある日突然なくなっていた。その衝撃は思った以上に大きかった。


 AIは、さらに奥深い設定を変更する方法も示してくれた。


 けれど、パソコンに詳しくない人が、仕組みをよく理解しないまま触ってよい場所ではなさそうだった。


「やらない」


 そこは賢く判断した。


 タスクバーを縦にしたい気持ちは強い。けれど、そのためにパソコンの調子がおかしくなっては困る。


 それにしても、ショックだった。


 MacのDockでさえ、左右に縦置きできたのに。


「Windowsさん、どうしてできなくしてしまったの?」


 画面の下に横たわるタスクバーを見ながら、ため息をついた。


 ところが、ある朝、うれしい情報が画面で光っていた。


 Windows 11で、タスクバーを縦置きできるようにする開発が進められているというのだ。


「本当に?」


 思わず画面に顔を近づけた。


 まだ、すぐに使えるわけではない。


 正式に実装されるかも、いつ使えるようになるのかも分からない。


 それでも、縦置きを望んでいる人が、わたし以外にもいるということだ。そして、その声に応えようとしている開発者がいる。


 それだけで、少し気持ちが明るくなった。


 長年の習慣は、そう簡単には変えられない。


 何より、使いやすさは人によって違う。「多くの人がこう使うから」だけではなく、それぞれが自分に合った置き方を選べることも、パソコンのよさではないだろうか。


 わたしは今日も、画面の下にあるタスクバーを眺めている。


 慣れて来たけど邪魔に感じる。


 できれば、今すぐ左端に立ってもらいたい。


「頑張れ、開発者!」


 いつかWindows 11のタスクバーを左端に立てられる日を、わたしは心待ちにしている。

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