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キングスレイヤー序  作者:
第1章 再誕と観測者

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54/180

54. 確実なる富、揚水ポンプ

部屋に、重苦しい沈黙が落ちる。

 ガリオンは悔しさに唇を噛み切り、メイシーは俯いて震えている。

 だが、アーノルだけは静かに立ち上がり、部屋の隅にある棚へと向かった。

 そこには、書き溜めた羊皮紙の束と、いくつかの試作品が乱雑に放り込まれた木箱があった。

 アーノルはその中から、迷いなく一枚の設計図と、バルブや鉄で出来た試作部品を取り出し、テーブルの上に広げた。


「アサータクさん。……これなら、間違いなく金になります」


「……何だ、それは?」


 アサータクが涙を拭い、怪訝そうな顔をする。


「『揚水ポンプ』です」


 アーノルは淡々と、しかし確信を込めて説明を始めた。


「これを使えば、深い井戸や鉱山の底から、驚くほど楽に水を汲み上げられます。テコの原理と、この『弁』の仕組みがミソです」


 アーノルには分かっていた。

 農業国であるこの国において水は命だ。

 そして、ナバラ帝国などの鉱山を持つ勢力にとって、坑道の水没は最大の悩みだ。

 便利グッズや遊び道具ではない。

 これは、産業の根幹に関わる装置だ。

 だからこそ、これには間違いなく高値がつく。

 白金貨20枚どころではない価値がある。


「酒は売りません。あれはバテンさんが帰ってきてから、みんなで祝杯をあげるためのものです。だから、僕はこの『確実な技術』を売ります」


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