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キングスレイヤー序  作者:


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47. 遺児たちの才能と砦の兵士

 クルム村には、古くからの習わしがあった。

 険しい森と隣接するこの村では、足腰の強い狩人と力自慢の木こりを中心に自警団が組織され、その子供たちもまた、将来の自警団員候補として育てられるのだ。


 10日に一度、仕事の合間を縫って行われる合同訓練。

 その教官役を務めるのは、この村に常駐している正規兵たちだった。


「腰が高い! そんな構えで猪の突進が止められるか!」


 怒号が飛ぶ。

 辺境の村には似つかわしくないほど、彼ら兵士の質は高かった。

 実は、クルム村は要所としてポルム教の肝いりで整備された砦としての側面も持っている。

 そのため、教会からの要請もあり、国軍の中でも比較的優秀で規律の取れた兵士たちが派遣されていたのだ。

 彼らは腐敗した役人たちとは違い、純粋に守る力を子供たちに叩き込んでいた。


 その訓練の列に、二人の新しい顔があった。

 あの日、理不尽に切り捨てられた自警団員たちの子供、サワノとメイシーだ。


 サワノは、父親譲りの狩人の才能を色濃く受け継いでいた。

 まだ10歳ながら、気配を殺して森に溶け込む術や、弓を構える所作は大人顔負けだった。

 無口で、どこか影のある少年だが、その瞳はずっと遠くの標的を見据えているように鋭い。


 そしてもう一人、メイシー。

 彼は一見すると可憐な少女のような顔立ちをしているが、紛れもなく少年だ。

 線が細く、力も弱い彼は、兵士の怒号に怯えながら、必死に基礎訓練についていこうとしていた。


「おい、メイシー! 足がもつれているぞ。もっと地を踏みしめろ!」


 教官の叱責が飛ぶ。

 メイシーは、槍の重さに振り回され、自分の足で転んでしまうほど頼りなかった。

 周囲の子供たちからも、どこか心配そうな、あるいは呆れたような視線が向けられている。


 だが、列の後ろで同じく基礎動作を繰り返していたアーノルだけは、別のモノを見ていた。

 彼が持つ「見る力」が、メイシーの奥底に眠るある文字を捉えていたのだ。


 才能、瞬。


 アーノルは眉をひそめた。


(……瞬? なんだそれは)


 今まで見たことのない才能の名だ。

 文字から推測するに、ものすごい瞬発力や、瞬間的に状況を捉える目の良さといった意味だろうか。

 だが、詳しい内容は分からない。

 アーノルの知識にもない、未知の能力だ。


 目の前のメイシーは、泥だらけになって涙目で立ち上がろうとしている。

 そのひ弱な姿からは、「瞬」という鋭利な言葉が持つ響きは微塵も感じられない。


(今はまだ、ただの言葉でしかないのか。それとも……)


 アーノルは、頼りない少年の背中をじっと見つめた。

 もしその文字通りの力が眠っているのだとすれば、この弱々しい少年は、とんでもない化け物に育つ可能性を秘めていることになる。


 まだ何の片鱗も見せていない原石。

 しかし、アーノルはその未知なる言葉に、強い興味を抱かずにはいられなかった。


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