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38.地下の小樽
その夜。
アーノルはガリオンに頼み、30樽の別に用意した「半分の大きさの小樽」2つを自宅へ運んでもらった。
向かう先は、自宅の床下にある冷暗所、食物庫のさらに奥だ。
「よいしょ……。これなら場所も取らないな」
ガリオンが小樽を隅に置く。通常の樽の半分のサイズにしたのは、隠しやすく、運びやすくするためだ。
「うん。ありがとう、父さん」
アーノルは小樽に『製造年』を刻んだ木札をかけた。
残りの通常サイズ30樽のうち、15樽はアサータクに売る。残りの15樽は村での消費と備蓄だ。
だが、この可愛い小樽2つだけは別だ。
「ここでじっくり寝かせるんだ。僕が大人になって、この苦い味が『美味い』と感じるようになる頃までね」
「ハハッ、そりゃあ楽しみだ。その頃には、もっといい男になって酒を酌み交わそう」
ガリオンは息子の頭を撫でた。
地下の闇の中で、2つの小樽は静かに眠りについた。
それが、いつか訪れる苦難の日の終わりに飲むことになるとも知らずに。




