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キングスレイヤー序  作者:


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34/68

34.商人の腰痛と黒いバネ


数日後。

泥濘ぬかるみに車輪を取られながら、アサータクの荷馬車が村へと到着した。

「やあ、アーノル君……。いてて……」

馬車から降りてきたアサータクは、腰をさすりながら顔をしかめた。

「お疲れ様です、アサータクさん。道、悪かったですか?」

「ああ、最悪だ。雪解けのデコボコ道で揺られ続けて、俺の腰も、積んでたガラス瓶も粉々になりそうだよ」

アサータクは嘆きながら、それでも商品の積み下ろしを始めようとする。

アーノルは、ここぞとばかりに提案した。

「おじさん。その腰の痛み、少し楽にしてみませんか? 実験中の部品があるんです」

アーノルは「黒鉄の枝」を薄く削ぎ、重ねて革紐で縛り上げた部品を取り出した。

ロバーソンとガリオンに手伝わせて、アサータクの馬車の車軸と荷台の間に強引に噛ませる。

「……木の板? これで何が変わるんだ?」

半信半疑のアサータクを御者台に乗せ、ロバーソンが後ろから荷台を揺らす。

ギィ……フワッ。

ガツンという衝撃が来ない。波に揺られるような、不思議な浮遊感。

「……!? おい、なんだこれは」

アサータクが目を見開き、何度もお尻を浮かせたり座ったりした。

「『板バネ』です。枝のしなりを利用したクッションですよ。まだ試作段階ですけど、おじさんの馬車で試してほしくて」

「素晴らしい……! まるで雲の上だ! これなら卵を運んでも割れないぞ!」

アサータクは感動し、すぐさまこの馬車で王都まで帰って耐久テストをすると快諾した。

「あと、これもどうですか?」

アーノルは、木箱に入った茶色い固形物――試作の石鹸を差し出した。

アサータクは鼻を近づけ、少し顔をしかめた。

「……獣臭いな。なんだこれは?」

「『石鹸』です。服の汚れがよく落ちますよ。まだ匂いがきついので安物ですけど、平民向けの洗濯用なら売れませんか?」

アサータクは少し考えた後、一つ手に取った。

「なるほど、固形で使いやすそうだ。匂いは気になるが……まあ、汚れ落ちが良いなら安値でなら捌けるかもしれん。ついでに預かっていこう」

石鹸の反応はそこそこだったが、板バネのインパクトが強かったおかげで、商談の雰囲気は良好だった。


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