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キングスレイヤー序  作者:


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32/63

32.覚悟と蝋燭の灯り

夜。

家族が寝静まった部屋で、アーノルは机に向かっていた。

昼間のロバーソンの言葉が、胸の中で反響している。

『お前を見てると、俺も農民じゃなくていい気がしてくる』

(……責任重大だな)

自分がレールを外れたことで、友人の人生も変えてしまったのかもしれない。

だが、ロバーソンのあの強い瞳は、誰に言われたからでもなく、彼自身の意思で選んだ道を示していた。

机の上には、アサータクへの提案書。

その横で、アーノルは自分の手のひらを見つめた。

「見る力」の制御は、相変わらず進まない。

だが、焦ってはいけない。ロバーソンがあれだけの覚悟で積み上げているのだ。自分も、地道に積み上げるしかない。

ふと、視界がチカッと瞬いた。

(……!)

脳裏に浮かんだのは、『蝋燭の炎が揺らぎ、消える』映像。

その直後。

ヒュウッ……。

窓の隙間風が吹き込み、フッ、と炎が消えた。

「……また、これか」

暗闇の中、アーノルは苦笑した。

見えたのは、ほんの数秒先の些細な未来。

だが、確実に「見えた」。

「……タイミングは合ってきた。あとは、これをどう使うかだ」

アーノルは暗闇の中で羊皮紙を手探りし、最後の行に書き加えた。

『目標:ロバーソンに、自警団の古着か木剣を調達する』

アサータクが来たら、子供用の装備がないか聞いてみよう。

お菓子で釣るような相手じゃない。あいつは、対等な「戦友」になる男だ。

アーノルは目を閉じ、深く息を吸い込んだ。

未来を変えるための準備は、まだ始まったばかりだ。



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