31.農王の畑とそれぞれの役割
午後はバテンの畑へと向かう。
「キャハハ! 待てー!」
「こらルンナちゃん、そっちは踏んじゃダメー!」も
畑の端では、ケニと隣家の幼女ルンナが追いかけっこをしている。
ドンナが追いかけてるが結局みんなで畑を荒らしてるようなのだ。
なんとも平穏な風景だ。
「……ったく、騒がしいチビどもだ」
バテンは鍬を振るいながら憎まれ口を叩くが、その顔はどこか緩んでいる。
邪魔にならないように畝の幅を広げているあたり、彼なりの優しさなのだろう。
一方、ロバーソンは遊びには加わらない。
「……フンッ!」
彼は黙々と、畑の開墾作業を手伝っていた。
子供では持ち上げるのがやっとの大きな岩を、身体強化のコツを掴んだ全身運動で抱え上げ、畑の外へと運び出す。
「ほう……いい腰の入り方だ」
バテンが感心したように目を細めた。
「ロバーソン、お前、農家の親父さんより筋がいいぞ。将来は間違いなく村一番の農家になれる」
バテンからの最大級の賛辞。普段なら喜ぶべき言葉だろう。
だが、ロバーソンは岩をドスンと置くと、土を払いながら静かに首を横に振った。
「俺は、農家
にはならない」
「あ?」
「自警団になる。……だから、体を作る」
バテンは少し驚いた顔をしたが、すぐにニヤリと笑った。
「そうか。なら、もっとデカい岩を運べ。腰を低く、地面を掴むように踏ん張れ。それが槍を構える時の土台になる」
「……わかった。やってみる」
ロバーソンはバテンの指導を素直に聞き入れ、再び黙々と作業に戻った。
遊びたい盛りの年齢なのに、彼は自分の目標のために「労働」すらも「修練」に変えている。
アーノルはその様子を見ながら、肥料の配合表を修正した。
(すごいな、あいつは。……僕も負けてられない)
キャッキャと遊ぶケニたちの平和な声と、黙々と岩を運ぶロバーソンの荒い息遣い。
その対比が、この村の日常と、少年たちの決意のコントラストを際立たせていた。




