表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤング キングスレイヤー  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/36

27.聖域の愉快な管理者

『ポルム様です』

その名前に、アーノルは眉を動かした。

ポルム。この国では「ポルム教」の信仰対象として、その名を知らぬ者はいない。

「……ポルムって、あのポルム教の? なら、奴らはここに来るのか?」

『肯定します。ポルム教の上層部において、ポルム様の直系の血統を受け継ぐ者のみが、この場所への入室権限を持っています』

「……入れる奴がいるのか」

アーノルは顔を引きつらせた。

『はい。現在、この部屋への正規アクセス権を持つ生存者は、2名のみです』

「2名? 少ないな……いや、逆にリアルで怖い数字だな」

『彼らは不定期にここを訪れ、過去のデータを閲覧し、満足して帰っていきます。ちなみに、直近の訪問確率は本日午後が40%と算出されています』

「高っ!? 帰る、今すぐ帰る!」

アーノルは弾かれたように立ち上がった。

鉢合わせしたら終わりだ。神聖な場所にいる「薄汚い村の子供」なんて、問答無用で消されるに決まっている。

「おい、システム。もし今、その2人のどっちかが入ってきて、僕を見つけたらどうなる?」

『推測される結末は一つです。あなたは「不浄なる侵入者」として即座に物理的に排除――ミンチにされるでしょう』

「言い方!」

『ポルム教は教義のためなら、掃除も殺人も実に熱心ですからね。見つかれば大変なことになりますが、まあ、ドンマイです』

「ドンマイで済むか!」

システムの声は無機質なのに、どこか他人事のような軽さがあった。

まるで、数百年ぶりのマスターとの会話を楽しんでいるかのようだ。

『ですので、賢明なマスター・アーノルには即時退避を推奨します。……あ、ちなみにここでのことは他言無用でお願いしますね。あなたが喋ったとバレたら、教団が村ごと消しに来るでしょうし』

「お前、サラッと怖いこと言うなよ……! わかった、誰にも言わない。だから無事に帰してくれ!」

『了解しました。それでは、護衛をつけましょう』

ウゥン……という駆動音と共に、壁の一部が開き、そこからシュルシュルと一本の銀色の線が飛び出してきた。

それは、指のように細く、機械仕掛けの一匹の小蛇だった。

「……これ一匹? さっき『森での生存率0%』とか言ってなかった?」

『ご安心を。この子はただのナビゲーターです。あなたの通る道に魔獣がいないよう、すでに森全体には私の可愛いペットたち――「掃除屋スパイダー」を数百体ほど放ってあります』

「え、いつの間に?」

『先ほど、あなたがここに入室した時点で展開済みです。彼らは高い隠密性を持ち、森の木陰や土の中に潜んでいます。マスターに近づく不届きな熊や猪は、彼らが人知れず処理(お掃除)しますので、ご心配なく』

アーノルは森の方を振り返った。

静まり返った森。

あの中に、見えない機械の蜘蛛が数百体もうごめいているのか。

想像すると魔獣より怖いが、今は頼もしい味方だ。

足元の機械蛇が、キュッ! と可愛らしい音を立てて、出口の方角を指し示した。

『その蛇についていけば、誰にも見つからずに村の近くまで帰れます。……名残惜しいですが、お別れですね』

「ああ。……助かったよ、システム」

『いえいえ。またのお越しをお待ちしております、マスター。あなたの魔力を解凍するにはここの設備が必要ですし。あ、来る時はくれぐれも教団の人に見つからないように。見つかったら私も庇いきれませんので、その時は潔く諦めてくださいね?』

「縁起でもないこと言うな! ……それに」

アーノルは振り返らず、重い口調で答えた。

「『また来る』なんて、軽々しくは言えないよ。見つかったら終わりなんだろ? ここに来ること自体が、命がけのギャンブルみたいなもんだ」

『おや、つれないですね。まあ、生存していたらで結構ですので』

「……ああ。とにかく、今は帰してくれ」

『はい。お待ちしています――おかえりなさいませ、そして、いってらっしゃいませ』

少しお茶目なAIに見送られ、アーノルは銀色の蛇と共に扉をくぐった。

外に出ると、やはり森は不気味なほど静かだった。

だが、アーノルが歩く先々で、茂みの奥から「カサカサ……」という小さな音が聞こえ、何かが道を譲る気配がする。

時折、遠くで「ギャッ」という魔獣の短い悲鳴が聞こえるが、すぐに静寂に戻る。

(……過保護すぎるだろ)

最強の隠密護衛部隊に守られながら、アーノルは聖域の森を駆け抜けていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ