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ヤング キングスレイヤー  作者:


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12/36

12. 北の森を背う男たち

納屋の外は、一瞬にして地獄のような喧騒に包まれました。

「期限など知ったことか! 陛下への忠誠を示すなら、三日早くとも差し出すのが道理。逆らう者は『資材の破損』として処理して構わん!」

傲慢な役人の怒号に、アーノルは冷静に、しかし素早く動きました。完成したばかりの琥珀色の液体を満たした小樽をしっかりと抱え、外へ出ようと扉に手をかけます。

そこへ、数人の男たちが風のように納屋へとなだれ込んできました。

村の自警団。その先頭に立つのは、アーノルの父、ガリオンでした。

北に広がる黒鉄の森。そこから現れる巨獣を退けるため、この村の男たちは日々命を懸けています。鉄のように硬い神木を毎日一本作伐するという過酷な義務が、彼らの肉体を鋼のように鍛え上げていました。ガリオンが背負う巨大な戦斧は、その実力の象徴です。

「父さん……」

ガリオンは何も言いませんでした。ただ、息子と、その腕の中にある小さな樽を、射抜くような鋭い眼差しで見つめました。

「父さん、これを。これさえあれば、無駄な血を流さずに済むんだ」

本来なら、五歳の子供の言葉に耳を貸す状況ではありません。しかし、ガリオンは息子の瞳の奥にある、大人顔負けの冷徹なまでの「確信」を見逃しませんでした。

ガリオンは、自分の息子が「普通の子供」ではないことを、既に本能で受け入れていました。

「……行くのか」

短く、重い問い。そこには疑いも制止もありませんでした。一人の男として、息子の覚悟を問う響きだけがありました。

「ああ。父さんたちに死んでほしくない。……力でねじ伏せるんじゃなく、価値で屈服させる」

アーノルの声は、冷たく、そして鋭く響きました。その隣では、口数の少ないロバーソンが、重心を低く保ったままアーノルの影のように並んでいます。修練を経て、ロバーソンの立ち姿からは五歳児特有の隙が消え、まるで北の森の巨木のような、静かな威圧感を纏い始めていました。

ガリオンは無言で道を空けました。そして、手にしていた戦斧を力強く握り直すと、アーノルの背後を守るように歩き出しました。自分たちが剣を抜くのは、息子が失敗したときだ。それまでは、この小さな背中に村の命運を預ける――その決意を、無言の背中が語っていました。

アーノルは小樽を抱え直し、ロバーソンと共に、怒号と悲鳴の渦巻く広場へと一歩を踏み出しました。

広場の中央では、鎖に繋がれた若者たちと、それを指揮する役人が勝ち誇った笑みを浮かべていました。

アーノルは、その役人の真正面へと、迷いのない足取りで歩み寄りました。

「役人さん。……王子の誕生日に、そんな汚れ物の『資材』を贈るつもりですか?」

幼い、しかし透き通るような声が広場に響き渡り、狂気に満ちた喧騒が、一瞬にして凍りつきました。


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