11. 琥珀色のしずくと職人たち
村の職人たちが寝食を忘れて組み上げた「装置」が、ついにその真価を発揮し始めました。
バテンの納屋の奥、外からの光を遮った静寂の中で、規則正しい滴りの音だけが響いています。
村の濁った安酒が、アーノルの指示通りに作られた幾層もの炭と砂の層をゆっくりと潜り抜け、最後には焦がしたオーク材のチップを満たした樽へと導かれていきます。
「……信じられん」
樽職人が、受け皿に溜まった液体を覗き込んで絶句しました。
かつて泥のように濁り、鼻を突く酸味を放っていたはずの安酒が、冬の朝日を透かしたような、一点の曇りもない琥珀色へと変貌を遂げていたのです。
「まだだ。これをこのまま三日、この温度で寝かせる。焦がした木の香りが馴染んだ時、本当の『上級品』になる」
アーノルは小刻みに揺れる自分の手を、もう片方の手で静かに抑えました。知識としては知っていても、この世界の粗末な道具で再現するのは綱渡りの連続でした。職人たちの妥協のない手仕事がなければ、この琥珀色は生まれていなかったでしょう。
職人たちは、自分たちが作り上げた奇跡のような液体を前に、誇らしげに、しかしどこか畏怖を込めたような眼差しでアーノルを見つめていました。
しかし、その達成感に浸る時間は、突然の暴力によって打ち砕かれました。
村の入り口から響く、軍馬の嘶きと不吉な鐘の音。予定の期限まで、まだ三日あるはずでした。




