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キングスレイヤー序  作者:
第2章 侵食の始まり

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107/189

107. 基準点Cと、市場の有象無象

 工房には「死体」が二つ転がっているが、見なかったことにして俺たちは街へ出た。


 目指すは馬車を引くための動力――馬の調達だ。


「いいかアーノル。馬選びってのは商人の基本にして奥義だ」


 レーマネの大通りを歩きながら、アサータクさんが得意げに語り始めた。


「ダメな馬を掴まされれば、納期は遅れ、荷物は傷み、最悪の場合、荒野の真ん中で立ち往生して野垂れ死ぬ。俺がこれまでの行商で生き残ってこれたのは、この『相馬眼そうばがん』のおかげと言っても過言じゃねえ」


「なるほど。頼りにしてますよ」


「おうよ。俺の目は誤魔化せねえぞ」


 俺たちはまず、庶民向けの『鉄の蹄鉄屋』という大きな馬市場へとやってきた。


 そこは活気に満ちており、農家のオヤジや行商人たちが、何十頭もの馬を品定めしている。


「まずは相場を知るために、この辺の一般的な馬を見て回るぞ」


 アサータクさんの後について、俺は繋がれている馬たちを眺めた。


 人間を見るときと同じように、深く、焦点を合わせる。


 すると――脳裏にいつもの文字列が浮かび上がった。


 【鑑定完了】


 種別:馬(茶)

 速さ:D

 頑丈:D

 体力:E

 気性:温厚

 能力:なし


 隣の馬も見てみる。


 種別:馬(黒)

 速さ:E

 頑丈:D

 体力:D

 気性:鈍感

 能力:【鈍感】


 さらに奥の馬。


 種別:馬(斑)

 速さ:D

 頑丈:E

 体力:D

 気性:臆病

 能力:なし


(……ふむ。DとEばっかりだな)


 俺は腕組みをした。


 文字が出るのはいいが、俺には馬の知識がない。

 この「D」という数値が、どの程度の能力なのか。

 「E」というのは、使い物にならないレベルなのか、それとも愛嬌で済むレベルなのか。

 基準モノサシがないから判断がつかないのだ。


「どうしたアーノル? 難しそうな顔をして」


「いえ……どれも似たり寄ったりに見えて、良し悪しの基準が分からなくて」


「はっはっは! 素人はそんなもんだ。毛艶だけ見ても中身は分からんからな」


 アサータクさんは笑いながら、自分が乗ってきた愛馬の首をポンポンと叩いた。


「いいか、迷ったら『手本』を見るんだ。俺のこいつは、長年苦楽を共にしてきた相棒だ。飛び抜けた才能はないが、どんな仕事も確実にこなす優等生だぞ」


 俺はアサータクさんの愛馬をじっと見つめた。

 彼が絶対の信頼を置く、プロの商人の馬。


 【鑑定完了】


 種別:馬(鹿毛)

 性別:牡

 速さ:C

 頑丈:C

 体力:C

 気性:従順

 能力:【運搬】


(……なるほど! これが『基準』か!)


 アサータクさんが「優等生」と呼ぶ馬が、オールC。

 そして能力に、荷運びに特化した【運搬】がついている。


 つまり、この世界の馬の基準はこうだ。

 Dが「一般的」。

 Eが「少し劣る」。

 そしてCがあれば、それはプロが認める「優秀な仕事馬」ということになる。


 謎は解けた。

 俺は改めて市場を見回した。


 ……酷いもんだ。

 ほとんどがDとEのオンパレード。

 たまにCが一つ混じっている程度で、アサータクさんの馬のようにバランス良くCが揃って



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