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正式調査、ならびに処遇について

会議室は、静かすぎた。

 白い石壁。

 長い机。

 並ぶのは、七人の聖職者。

 誰も怒っていない。

 誰も声を荒げない。

 ――それが、余計に怖かった。

「被験……いえ、対象者。

 名前、ルカ」

 一番奥に座る老司祭が、記録を読み上げる。

「年齢推定、十四。戦争孤児。

 修道院にて、無詠唱・無自覚の高位癒しを発現」

 紙を置き、視線を上げる。

「事実で相違ないな?」

「……はい」

 ルカは、短く答えた。

 隣にはアリアが立っている。

 聖女候補としてではなく、立会人として。

「問題は、加護の性質だ」

 別の司祭が言う。

「単一神のものではない。

 癒し系統の複数加護が、重なっている」

「通常なら、魂が耐えられない」

「現に、暴走と意識喪失が起きている」

 淡々とした声。

 だが、視線は鋭い。

「……危険だと?」

 ルカが、ぽつりと聞いた。

 老司祭は、首を横に振った。

「危険“だけ”なら、ここにはいない」

 一瞬、沈黙。

「問題なのは」

 ゆっくりと、言葉が落とされる。

「聖女の加護として確定している点だ」

 空気が、重くなる。

「男であることは、前例に反する」

「だが、否定すれば教義そのものが揺らぐ」

「肯定すれば、世界が揺らぐ」

 誰かが、ため息をついた。

「……結論を言おう」

 老司祭が、ルカを見る。

「君を裁かない」

 ルカの肩が、わずかに緩む。

「だが、自由にもさせない」

 次の言葉で、再び緊張が走る。

「聖女候補――

 正確には、聖女様見習いとして扱う」

 アリアが、目を見開いた。

「それは……」

「聖女候補学校に通わせる」

 老司祭は、はっきり告げる。

「管理。教育。観察。

 すべてを兼ねた、最も穏健な処遇だ」

 別の司祭が付け加える。

「学園には、各地から聖女候補が集められている」

「癒し、浄化、加護の制御を学ぶ場」

「男であることは伏せない」

「だが、特別扱いもしない」

 ルカは、思わず聞いた。

「……俺が、拒否したら?」

 老司祭は、静かに答える。

「その場合、隔離研究になる」

 それだけで、十分だった。

 アリアが、一歩前に出る。

「……私が、監督役を務めます」

 会議室が、ざわつく。

「聖女候補として、責任を持って」

「彼が“力”ではなく“人”として扱われるように」

 老司祭は、しばらくアリアを見つめ――

 小さく頷いた。

「許可する」

 決定だった。

 会議が終わり、廊下に出る。

 ルカは、天井を見上げた。

「……学園、か」

「嫌?」

 アリアが聞く。

「正直……怖い」

 彼女は、少しだけ笑った。

「私も」

 そして、真面目な顔で続ける。

「でも、ここにいるよりはマシ」

「少なくとも――

 祈って倒れたら、すぐ治してあげる」

「それ、フォローになってない」

 二人の会話に、微かな日常の温度が戻る。

 だが、ルカは知らない。

 その学園が――

 信仰・嫉妬・期待・恐怖が

渦巻く場所だということを。

 男の“聖女様見習い”を、

 誰もが歓迎するわけではないということを。

 物語は、次の段階へ進む。

 ――聖女候補学校編、開幕。

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