学園初日・女子寮・同室ガチャ(※操作済み
女子寮の玄関前。
白い石造りの建物は、修道院よりもずっと華やかで、
それでいてどこか「逃げ場のない」雰囲気を纏っていた。
「……ここが、住む場所」
ルカは小さく呟いた。
隣にいるアリアは、にこやかに頷く。
「うん。聖女候補は全員、ここで共同生活だよ」
「全員……女子だよな」
「? そうだね」
アリアは首を傾げる。
――この子だけだ。
自分が“例外”だと知っているのは。
寮の中は、すでにざわついていた。
「同室、誰になるんだろうね?」
「私、緊張してきた……」
「当たり外れあるって聞いたよ」
楽しげな声が飛び交う。
その中で、ルカは一人、背中に汗をかいていた。
*
寮母が、名簿を手に立つ。
「では、部屋割りを発表します」
一瞬、空気が引き締まる。
「101号室、ミリアとセシル」
「102号室、リーナとフローラ」
名前が呼ばれるたび、
小さな歓声や安堵の息が漏れる。
そして――
「……205号室」
寮母が、一拍置いた。
「アリア・エルフェン」
アリアが手を挙げる。
「はい」
「ルカ・――」
一瞬、寮母の視線が揺れた。
だが、すぐに言い切る。
「ルカ・セリウス」
その瞬間。
ざわ、と空気が波打った。
「え?」
「今の……?」
「アリアと、あの子?」
囁き声が広がる。
アリアは一瞬だけ驚いた顔をして、
すぐに、穏やかに微笑んだ。
「……一緒なんだね」
ルカは、反射的に頷く。
「……ああ」
心の中では、理解していた。
――これは“配慮”だ。
いや、“隔離”に近い。
校長と教頭が、
最も安全で、最も管理しやすい配置を選んだ。
*
205号室。
扉を閉めると、外の喧騒が嘘のように遠のいた。
「……はぁ」
ルカは、思わず息を吐いた。
「緊張してた?」
アリアが、くすっと笑う。
「当たり前だろ……」
ベッドは二つ。
机も二つ。
完全に、普通の“女子寮の一室”。
「でも、よかった」
アリアは、窓際に荷物を置きながら言った。
「知ってる人と一緒で」
ルカは、少し黙ってから答える。
「……俺は、
お前とじゃなかったら詰んでた」
「大げさ」
「大げさじゃない」
アリアは、その言葉を否定しなかった。
「ね、ルカ」
「ん?」
「校長先生と教頭先生に言われたよ」
ルカの背筋が伸びる。
「“何かあったら、まずアリアに知らせなさい”って」
「……やっぱり」
「うん」
アリアは、少し真面目な顔になる。
「私、見張り役でもあるみたい」
「最悪だな」
「でもね」
アリアは、柔らかく微笑んだ。
「守る役でもあるんだって」
その言葉に、
ルカの胸の奥が、少しだけ温かくなった。
*
夜。
それぞれのベッドに座り、灯りを落とす前。
「……なあ、アリア」
「なに?」
「俺、ここでやっていけると思うか?」
一瞬の沈黙。
アリアは、はっきりと言った。
「うん」
「理由は?」
「だって」
彼女は、ルカを見る。
「あなたはもう、
一人で耐えるのをやめたでしょ」
ルカは、言葉を失った。
「それに」
アリアは、少し照れたように続ける。
「同室だし」
「逃げても、すぐ捕まえるから」
「……それは脅し?」
「激励」
二人は、小さく笑った。
学園生活は、始まったばかり。
だがこの部屋は、
ルカにとって初めての――
**“戦わなくていい場所”**になる。
少なくとも、今は。




