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その暗殺者は蜜の味  作者: 赤海 梓
第2章 学校の七不思議
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第1の不思議

「会長、うちだよ?クレイカリアだよ?ねえ分かる?」


「…ふん、お前が蜜奈か。」


「無視なんて酷いね?で、何しに来たの?」


 見たところ、見た目はただの人間の様に見える。多少ガタイの良い、茶髪の男。だがこの魔力の質、人間のものとして捉えるにはあまりにも異型だ。やはり彼は反転魔法の影響を受けているのだろう。


「何しに来た…か。そんなの分かりきっているだろう?お前を殺しに来たんだよ」


「ま、そりゃそうだよね。でも私強いから。負けるつもりは毛頭ないよ?」


「ふん、なぶり殺しにするには丁度いい獲物だ」


「殺されるのはどっちかな?」


「待って!」


 急にクレイカリアが叫ぶ。


「裏切り者のクレイカリア、貴様の意見など、この私が聞く耳を持つはずないだろう」


「殺し合いは駄目!うちはもっと平和的な解決をしたいんだよ!ね、蜜奈もそう思うよね?」


「…気持ちは分からなくもない」


「だったら…」


「でもね、これしか方法は無いんだよ。反転魔法を消す魔法の研究なんてしてたら、その間に大勢が殺される。そんな事してまで、昔の会長だったら生きながらえたいと思う?」


「…思わない」


「そうだ。それぐらいなら死を望むはずだよ。かつての生徒会長は、絶対にそういう人だ」


「でも…でも!」


「でもじゃない」


「!!」


「私だって殺す覚悟をしてきたんだ。甘えるな」


「…ごめん」


「ほう、殺す覚悟?これから殺される立場の人間が、殺す覚悟か…。くっ、くくく、あーっはっはっは!!こいつは滑稽だ!」


「うるさいな、あんたはこれから死ぬんだよ!黙って息絶えな!」


 〈紺の術〉その十三 来疾


 ザン!!


「おっと危ない、右腕が落とされただけだ。この程度なら再生出来る」


「…相変わらずの再生力だね、七不思議ってのは」


「まあな。あのお方…魔族であるあのお方のおかげよ」


「でも心臓さえ断てば死ぬんでしょ?不死の術式は心臓に組み込まれているから。違う?」


「へぇ、なんとも見事な解析だ。全くもってその通りだ。だが今までのやつらと違って、私は流派や武器に特筆したものは無いが、単純なフィジカル、瞬発力、そして特異とされる言霊魔法を使うことが出来るのだよ。この力の差は歴然。今までのやつらと同じようにかからない事だな」


「はいはい、わざわざ説明ご苦労さ



 『言霊魔法』設定「(スライダウン)



 魔力の流れ…!この前と同じか…!


「よっと」


「くっ、ギリギリで避けるか…」


「ま、この位なら余裕だよ」


「ちっ、小癪な…!」


 恐らく「死ね」と命令しないあたり、相手への影響が大きいほど魔力消費が大きかったり等のデメリットがあるのだろう。


「この程度の緊張感じゃ、私は止められないよ」



 『言霊魔法』設定「(ブレイク)



 魔力の流れをやはり感じる。

 もう流石に慣れた。まるで魔力が鮮やかな色を纏うかのように、鮮明に感知することができる。

 私はその流れを簡単に回避する。


「部分攻撃を狙ったとしても、私はもう一度対峙した魔法に引っかかるつもりは無いんだ。君の魔力は荒いから、尚分かりやすいね」


「ふん、なかなかやるな…」


「まだまだこれからだ!!」


 私はアワタナラに切りかかる。


「はい、はい、はい!!」


「くそっ、コイツ…!」


「まだまだぁっ!!」


「(強い、強すぎる…!一撃一撃が重たすぎる!!)」


「どうだい?紺の術で全力のバフを掛けた連撃は!?流石の第1の不思議様でも、これはきついでしょ?」


「くっ、なかなかやるな…!口だけでは無かったと言う訳だ!」


「ま、実はまだ見せてない手の内があるんだけどね」


「なっ…」



 =麗剣= 掠凪ハ昴(りゃくなぐはすばる)



「うおっ」


 私はアワタナラの周りを回り、細かい傷を付けまくる。


「うっ、ぐっ、」


 そして最後、


「最後だ」


 首を一突き、貫く。


「うっ、グハァ…」


「ま、こんなもんだ。私の流派は流石に読みにくかったかな?」


「その技は…まさか…」


「?」


「貴様…なんという力だ…」


「まあいいや。残念だけど、私は油断しないって決めたんだ。それじゃ、もう死んでもらうね」



 〈紺の術〉その九 咲…



「待って、殺さないで!!」


 クレイカリアが私の目の前へと両腕を広げて止めに入った。何してるんだ全く…!

 そう思った刹那だった。


 ブワァッ


「!?」


 クレイカリアが叫んだ影響か否か、私はアワタナラの魔力が唐突に上がったのを感じた。


「これは、一体なんの



 『呪禁魔法』設定「死」



「なっ!?」


 私はクレイカリアの右手を引いた。ギリギリで何とか助かったものの、奴の攻撃が始まる。


「ちっ…!」



 『呪禁魔法』設定「死」



「くそっ!しつこい!」


 私は少し乱暴になるが、やむを得ずに被服室外にクレイカリアを投げ飛ばす。だがしかし、


 ガキィン!!


「くそ、結界か…!」


 クレイカリアを庇いながらこのまあまあの範囲の魔法から逃げ切るのは正直厳しい。


「魔力量が格段に上がった…!またか…!」


「あのお方から力を一時的に貰ったのさ。私たち七不思議は、そうやって力を貸してもらえるんだよ!これで終わりだ!!」


 恐ろしい程の量の魔力を宿らせたアワタナラ。その影響で、使う魔法が1段階上の呪禁魔法になってやがる…!


「くそ、ウミアタの時もそうだったじゃないか…!いやでも、ウミアタの時の魔力よりも格段に大きい!ここまで強くなるのは予想外だ…!」


「所詮雑魚は雑魚。その辺でうずくまってな!!」


 ここまで大きい魔力量は初めてだ…!魔族ってのは、私すらも凌駕する魔力があるって事なの…?



 『呪禁魔法』設定「全員死(オールダイ)



「この魔力の流れ…まずい!」


 広範囲の呪禁魔法…!避けるのが流石に厳しいが、それだけじゃない!クレイカリア!

 しまった!?さっき投げたせいでクレイカリアが遠い!とても庇えるような位置じゃない…!


「!?まずい!!躓いて…!?」


 これじゃ自分すら…!


「くそ、間に合わない!!」


「ふはははは!!雑魚共が調子に乗るなよ!!死ねぇぇぇぇえ!!」


 こんなに力があるっていうのに、自分すら守れないの?誰かを見殺しにしてしまうの??

 そんなの絶対に嫌だ…!!

 どうにか、どうにかしなきゃ…。























































 あれ?ここは?


「蜜奈、お前は天才だ」


「何さ父さん。唐突だなぁ」


 あれ?前世の頃の父さん?ここは、私が前世の頃に好きだった、村の上の小さな公園…?


「お前には紺の術の奥義を伝える。お前には早すぎると思ったが、天才のお前ならば、必ず成功に至るだろう」


「変な言い回しだね?父さんは出来ないの?奥義」


「紺の術の奥義は2種類あるんだ。俺はその内の片方しか出来ない。というより技術が難しすぎて、初代を除く今までの全ての長が、2つ目の奥義を出来た試しが無いのだ。蜜奈がどれだけ天才でも、2つ目は流石に厳しいだろうが、1つ目の奥義ならば、お前なら習得できると、そう確信している」


「へぇ、奥義かぁ…」


 懐かしいなぁ、確かにそんな話もされたっけな。


「だが使い所を見誤るなよ?1つ目のこの術は寿命を削り、毛細血管を傷つけ、脳は劣化する」


「危なすぎるでしょ。そんな術、いつ使うっていうんだよ」


「蜜奈にも使わなければと思う時が来るさ。それまでは、この術の事は忘れてもいい」


「へぇ…」


「じゃあ指導するぞ?この奥義の名は…




































 私は右手を前に出して、冷静にあの頃を思い出し、感覚を研ぎ澄まし、何かを掴む。

 …来た。これだ。

 蜜奈の手から、数枚の桜の花びらが舞出てくる。

 具現体と言うべきそれらを、受け入れる。

 刀を花びらと一緒に握りしめる。

 刀は白く輝き、純白の刀を振り上げる。

 世界がゆっくりと見え、まるで動いていない。


 天を喰らい、地を穿つ。

 自身を削り、悪を断罪する紺一族最高の一撃。


「紺の術」


 《奥義》(ユイ)

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