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その暗殺者は蜜の味  作者: 赤海 梓
第2章 学校の七不思議
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図書室

「何だかよくわかんないけど、何故か若返ってるね。でもそれだけじゃ私を倒せないんじゃない?」


「ふっ、安心しろ。この姿の私は無敵だ。それに、まだこれからなのだからな」



 『時間魔法』 パラドックス



 奴の髪の毛の色が青色に変わる。


「え?髪の毛が青色になっただけ?」


「ふはははは!どうだ!魔力濃度が濃すぎる余り、髪の色にまで影響を及ぼしてみせた!どうだ!この強化を重ねた私に勝てるかな!」


「若返ったと思ったら急によく喋るおじいちゃんだね。その口、二度と開けなくしてあげる」


「ふん!面白い。いいぞ?どこからでもかかってきなさい?」


 強がってはいるが、パラドックスとやらを使った途端、とてつもなく恐ろしい気配になった。さすがの私も身震いするレベルである。

 でも落ち着けば大丈夫。それよりも攻めるべきかを考えろ…。

 とりあえずこういう時は、


「正面突破だ!」


 刀を振り、切りかかる。


 ガギィン!!


「ま、簡単には当たらないよね」


 ギリギリと鳴る刃同士を離し、少し間合いをとる。



 〈紺の術〉 その九 咲紫



「ふん、ぬるいな」


「ちっ、舐めんな!」


 剣の腹で突きを受け止められ、振り払われる。


「次はこちらの番だな?」


 真っ向から向かってくる。そして斬り合い。


 ブォン!!

 高速の突き!!


「おっと…」


 コイツは出来るやつだ。強すぎる。


「くっ…」


「おや?もう苦しいのかい?」


 右、左、突き、左とフェイントをかけながら攻撃をしているのだが、上手く当てられない。突き技の後隙をしっかりと狙って剣を胴に振ってくる。ギリギリで躱せているものの、このままではいずれ斬られる。

 っていうかなんだコイツの反応速度…早すぎるだろ…。私の咲紫が避けられるなんて、始めたばかりの頃以来だと思うな?

 まずい!考え事してたら押され始めてきた。段々とスピードが速くなってきて、コイツじゃなかなか止められない…。


「ふむ。大口叩く割にはこの程度なのか?」


 イラッ


「は?上等だよ!」



 『時間魔法』 エクセプション・ゼロ



「n」


「ふん、どう?対象の時間軸を指定する時間魔法。まあこの今の私の発言も速すぎて聞き取れてないんだろうけどね」


「a」


「…?違和感だな?」


 時間が進むのが余りにも速すぎる気がする。確かに子音単位で聞き取れてしまう程には減速に成功したけどな…?



 ヒュッ



「おおっと。え?」


 なんで?なんで魔法をかけたっているのに、コイツは剣を振れたんだ?


「ふっふっふ…私に時間操作の魔法は効かないんだよなぁ?」


「は?」


「いいだろう!ネタバラシだ!私の魔法『パラドックス』は対象の時間軸を増減させる魔法!!貴様の魔法程度、簡単に打ち解けるんだよ!!」


「ま、私の魔法と全く同じって事か。だからさっきの私の咲紫が避けられたのか。私の時間軸を限りなく遅くしたから…。でもなんで同じ魔法を使えているんだ…?」


「…」


「…」


「隙ありだ」


「おおっと。私も自分に時間魔法かけさせてもらったからね?もう反応速度は戻ったよ?」


「くっ、私以外に時間魔法が使える者がいるとは…!聞いてないぞ…?」


「でももう攻略完了だ。強者に見えたのは気のせいだったのかな?」


「くっ…」


「じゃ、ばいばい」


 そもそも何なのだろうかコイツは?確かにちょくちょく威圧的な何かを感じていたんだけどな…?時間を操れるからってここまで強く見えるのか…?

 同じ魔法っていうのも引っかかる。五大元素から特に離れたこの時間魔法、確かに発想だけなら被るだろうけど、この精密的な最高峰の魔法をこの瞬間に2人も存在するという違和感。


 ま、とりあえずコイツは殺す。



 〈紺の術〉 その十三 来疾




 ベチィン!!


「!?」


 剣が何かに弾かれた。感覚からして何かの鞭…?でも鞭なんて何処にも持ってなかったはず…?


「ちょっとー、油断してんじゃないよー」


「あ、すまない。時間魔法がコイツには効かない。相性が私とは絶望的に悪いんだ…!」


「ふーん?自分にそのパラ…パラ…パラパラオムライス?とかいうの掛けてもダメだったんだ?」


「パラドックスだ。ああ、コイツは強い」


「ふーん、じゃあ手伝うね」


 なんだコイツ…?2人目が現れたぞ?

 見た目は大分幼い。それこそ10~12歳くらいの見た目の女の子だ。だが手元には禍々しい鞭を握りしめている。


「あ、私の名前はウカミロ。この通り、この魔鞭の使い手さ」


「へぇ、自己紹介わざわざありがとうね?」


「ほら、立って立って!早く殺してあの方に報告しなきゃ!」


「ん?あの方?」


「…やべ、口滑らしちゃった」


「…問題ない。俺たち2人がいれば、殺せないやつなんかそうそういないさ」


「それもそうだね」


「あの方って?」


「ん?教えなーい」


 なんだコイツ…怪しすぎるだろ…。


「じゃいくねー」


 =鞭摩(べんま)= 森羅万象鞭(しんらばんしょうべん)



「おっと」


 あの魔鞭とかいうのが伸び、私の目の前をうねるように埋め尽くす。


「コイツはあくまでサポートだ」


 =皇剣= 真剣達等(しんけんだっとう)


「おっとっと」


 高速の一太刀を後ろに跳んで躱す…が、そこに片割れの方の鞭が襲いかかる。


「よっ」


 難なく刀で弾くが、背後からまた一振り、受け流したら鞭が飛んでくる。


「やかましっ」


「どうだ?この調整に調整を重ね、ただ人を殺すためだけに連携した最凶の御業!」


「正直なところ、絶対に負ける気がしなーい」


「確かに2人で上手な連携は取れてるよ?」


「そうだろう?そろそろいい加減余裕ぶってないで諦めるんだな!」


「いや、別に余裕ぶってるんじゃない」





 余裕なんだよ





 〈紺の術〉その十四 来数



「な


 まずは時を操るほうの首を一突き、からの心臓を断つ。


「え?」


「お次」


 グチャチャ


 脳を木端微塵にする。

 生命活動の維持が不可能となった2人はどちらも灰となり、崩れて消えていった。


「うーん、調子悪い」


 相手が子供に見えるっていうのもあるけど、なんだか動きにくい。ぎこちないし上手く思考を回せない。


「動揺かな…。まだまだ私も未熟だな…」


 気づいた時には魔法をかけられていた事。不意打ちとはいえ鞭が来た事に気が付かなかった事。そしてそれらの大元である、ウミアタとやらが異常に強く見えたという事実。


「あれは…なんだったんだろうね?」


「なあ蜜奈」


「ん?」


 万妖麗寿が話しかけてきた。


「ここには大量の書物がある。やつらの事を私たちは全く分かっていない。ここにある書物になにかヒントがあるかもしれないだろ?だから、ここで少し本を読んでいかないか?」


「んー、そうだね。実際私は七不思議どころか、この世界の事すらよく分かってないからね…。ちょっと見てみよっか」


 そして私たちは本を漁ってみる事にした。


「ふぅん…、この北高の歴史…ねぇ」


 内容はまあ大体歴代の行事の事だったり、校長の事だったり、極めて一般的な記録ばかりだった。

 だが、この学校が設立されたばかりの頃に、大きな事件があったことが分かった。


 『魔族襲撃事件』


 人間とはかけ離れた存在である魔族が、7人の生徒会によって鎮められたという事件だ。この事件で生徒の内の約半数が死亡、7人の生徒会も力を使い果たし、亡くなってしまったと書かれている。

 しかもこの学校が実力者を集めていたので、実力者のいない周囲の街の被害はとてつもなく大きかったそうだ。


「へぇ…魔族ねぇ」


「他に魔族に関して書かれていることを探すか?」


「うん。この七不思議、魔族となにか関わりがあると思うんだよね」


「同感だ。かつて鎮められたと書かれているが、殲滅などの表現が使われてない辺り、封印か何か、一時的な対処しか出来なかったのだろう」


「うん。だからもうちょっと魔族について調べておかなきゃ…」


「こっちにそれらしき資料があるぞ」


「ん?そうだね。ありがと」


 『魔族と人類』という題名の本を見つけた。

 早速その本を開いてみた。


 魔族は強大な力を保持している。神代唯一であり最大規模の戦争『鏖終末戦争(アルマゲドン)』、その戦争に勝利した一族である。ほぼ全ての魔族が好戦的で、人類には手がつけられなかった。

 だがしかし人類と魔族では協定が結ばれたため、この二種族が争うことは二度とあるはずがなかった。

 だがそれも、一部の強く破滅を望む魔族は面白く思わなかった。そしてその一部の魔族は人類を保護する考えを持った魔族を皆殺しにし、人類に攻め入ってきたのだ。

 人類はほぼ壊滅、七人の北高の生徒会によって封印されたものの、効果は一時的だろう。恐らく5万年後には復活してしまう。

 だが七人の生徒会は死亡、都市も壊滅。人類は5万年後に滅ぼされる運命だと、神は考えたのだろう。



「ふぅん…。アルマゲドンに壊滅を望む魔族ねぇ…」


「蜜奈、これからどうするんだ?」


「そんなの決まってるさ」


「ほう?魔族を殺すのか?」


「うん。もちろん」


 この手で魔族を暗殺して、人類を救ってみせるさ。

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