天佑神助を待つ者よ─3
私は身震いをし、立ち上がった。視界には何も入り込んでいない。だから恐怖なんて感じるはずないのに。ただほんの一瞬「何か」がやって来るのを感じた。
「どうかしたの?」
私が急に立ち上がったから、他のみんなが不安そうに私の顔を覗き込む。変化のないこの顔からは感情を読み取ることはできないはず。余計に不安になるんじゃないかな。少しでも安心してもらうために言葉を濁す。
「なんか…、来ているような気がして…」
「それってお客様じゃなくて?」
わからない、と首を振る。そうだとしても普通のお客様じゃないような気がする。
「…あっ、気のせいだと思うから気にしないで!!」
だめだだめだ!私がみんなを不安にさせてしまっている!全然濁せてない!やっぱり言わなきゃ良かったかな。身体が痛くて系の嘘ついた方が良かったかも。反省しなきゃ。
またマットに腰掛け、目を瞑る。
その時ちょうど足音が聞こえて来る。部屋の緊張が高まり、隅で固まり息を殺す。あんな話をした後だからか手が震える。他のみんなはもっと震えていた。気のせいでありますように…!
「──チッ、数えにくいな。おい、全員こっち向け!」
定期的に行われる確認に男が回って来ただけだったらしい。私たちは少し安心して集合を解いた。解いたと言ってもみんな他の子からは離れようとはせず、多少近くの子との感覚が空いた程度だけど。
「あぁ〜?…さっきよりゃましか。一、二、三、…四、………」
確認が終わり、男はため息を吐き次の部屋に向かった。嫌な思いをしているのはこっちなんだからため息なんて吐かないでよ。
男が来たことで私が感じた気配は見回りだったんだ、と部屋は安心ムードになりかかっていた。みんなの震えは止まり、また横になる子もいる。私も横になろうとした。
──良かった、気のせいで。
「誰か来る。声がする」
その声は部屋の緩んだ空気をすぱりと切った。カリゴちゃんがはっきりとそう言った。私たちはまた、集合する。微かに音?声?が、するような気がするけれど、。こっちに来るかなんてわからない。音なんてしないっていう子もいると思う。
カリゴちゃんは目が見えない。その代わり、「音」に対しては人一倍敏感。他の感覚も耳ほどでは無いけれど優れているそう。
「────────」
音…、いや声が近づいて来ている。部屋のみんなも声だと分かったみたい。声も足音も徐々大きく聞こえるようになって来た。かなり人数がいそう。
足音は少し離れたところで止まった。
「なんて言ってるの…?」
一人が不安でカリゴちゃんに質問をした。その質問答えようと、耳をすましている。
「………力…奴隷ならあちら…。…扱いやすい…おすすめ…?ありがとうございます…」
誰かが売れたんだ。また足音が聞こえだす。カリゴちゃんは話すのをやめて小さくなった。
私たちにも会話が聞こえる距離までやって来る。
「これで全てでしょうか?…それでは、今回のお会計はこちらになります」
別の男が困ったような声で呟いた。
「……予算を超えてしまっていますね。…いかがしましょう」
「そうですね…、困ったなぁ」
最後の声に私たちはつい反応してしまう。聞こえて来たその声にはまだ幼さがあったから。低い声だけど他の男の人と比べて威圧感が少ない気がする、しなんだか物腰柔らか。
「お支払いできなくはないのですが、この値を支払ってしまうと帰りの資金がなくなってしまうのです。──これはご相談なのですが、今回だけ少しまけていただくことは出来ませんか?おっと、タダでとは申しません」
その人は間を開ける。空間がしんと静まり返った。
「近いうちに、今度は『個人的』に来させていただきます。その際、定価の一・五倍の価格で購入させてください。B以上を買いましょう。…いかがですか?」
悩んでいるのか、また静寂がやって来る。次回高く買うから今回安くしてくれ、ってことだよね?奴隷商側が損をする内容じゃないと思う。…多分。フォルマが居たら詳しく説明してもらえるんだけどな。
「…わかりました。本来であればお断りするところですが、『貴方様』ですから。では今回、お安くさせていただきます。……こちらの値段でいかがでしょう?」
「これからもどうぞよろしく」
交渉が成立したらしい。笑い声が聞こえる。
交渉上手すぎない?もしかして声は幼いけど、大人なんじゃ。子どもの発言にしては場慣れを感じる。
「──さて。少し見て回らせていただいても?次買うモノを決めておきたい」
今まで数字は漢数字で書いていたのですが、もしかして算用数字の方が読みやすいですかね…?ご意見あればぜひ教えてください。




