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夢見る彼女は幸せを  作者: 緑野鳶
天佑神助を待つ者よ、汝、黎明を告げる
5/13

救世主はいない

男に口を押さえられ、足が地面から離れる。呼吸が速くなる。


「危ねぇ、逃げられるところだった。勘のいいガキだ」


男の人をここまで怖いと思ったことはない。自分より何倍も大きくて力も強い。ましてや力の強く戦闘種族に分類されるという()()()。一度捕まったら逃げることはまずできない。私たちは力のない子供だ。

その事実がさらに私の呼吸を速くする。心臓も痛いほど速く、全身から熱がなくなってしまたかのように冷えいく。身体がガクガクと震える。

明るいリビングに運ばれ、周りがよく見えるようになった。私を押さえている男の褐色の手や、ラクリマさんとお金のやり取りをしている小太りな男の顔がはっきり。


──フォルマ!!


私はフォルマを横目で確認する。私と同じで、褐色肌の種族、竜人族によって捕まえられていた。恐怖の涙で顔をぐちゃぐちゃにして、ラクリマさんに助けを求めるようにして足をバタつかせている。んん、と何か言葉を発しようとしている。

…ラクリマさんは助けてくれない。私もフォルマも分かっている。


「へぇ…?確かに綺麗な顔だ、勿体無い。傷さえなければなぁ」


お金のやり取りをしていた小太り男がこちらを確認するため、顔を近づけてくる。

気持ち悪い。その視線をフォルマにも向けるな。嫌な何かが全身を駆ける。

男はフォルマに目線を移した。フォルマは目線を合わせまいと下を見ている。涙が床に落ちた。男はじっと顔、身体を見ていきなり髪を掴み、グッと顔を上に持ち上げた。んぐぅ、という声がフォルマから漏れる。


──フォルマに、


「おお!こちらは完璧だ!A…いやSクラスか?素晴らしい…!良い値が付きそうだ」


私は無理やり口を開き、押さえていた男の手を渾身の力で噛む。いてぇ、と言う声がし拘束の手が緩んだ。その場の目が一斉にこちらに向く。私は男の腹に足で蹴りを入れ、床に着地しフォルマへと駆け寄る。


「触るな!」


フォルマに触るな!

私はフォルマを抱えている男の足を思いっきり蹴飛ばす。男がバランス崩した。そして上に飛び、男の顔めがけて拳を突き出す。

──しかしそれが男の顔に届くことはなかった。


「クソガキが!!ってーな。こいつら縛っといていいですか?」


手を噛んだ男が私を押さえつけ、完全に身動きが取れないようさっきよりも強い力で拘束した。口は布で押えられる。


んっごんっ(はな…せっ)!!」


「ほぅ、顔は惜しいがなるほど…。その身体能力に威勢の良さ…」


小太りの男は静かに1人、何か考えている。


()()()が気にいるかもしれん」


そう小さな声で、だけど確かにそう言った。

()()()って誰…?奴隷を買うぐらいだ。しかも男の言い草から考えるに頻繁に購入しているのだろう。私は太った貴族や大商人のおじさんを想像した。………絶対嫌!!


抵抗しようと身体を捩り必死に声を出すが、「ん」以外の音にならない。そうこうしているうちに小太りの男はラクリマさんにお金を渡し始めた。フォルマのことで頭に血が昇っていた状態だったけど、その光景を見て血の気が引いていく。自分が本当にまずい状態だと思い出す。フォルマももう時間がないと気づいたようで、さっきよりも身体を大きく動かしている。


男たちは私たちを縄で縛り始めた。足を、手を縛られる。もう身動きが完全に取れない。


「…それでは姉の方を12万4000、妹の方を20万()()()でお取引成立ということで」


「えぇ、…それでいいわ。もう用は済んだでしょう、早く帰ってちょうだい。()()()が怖がるわ…!」


ラクリマさんは机に置かれたお金に手をつけず、腕をさすった。

ラクリマさんは私たちをよく思っていなかった。だけど本に出てくる悪いお母さんと違って、ご飯は作ってくれたし私たちの物を勝手に捨てたりしなかった。なんだかんだ世話をしてくれた。


でも私たちを売ったんだ。

お金のために?それともレギナを怒らせたから?目障りだったから?…どうして?私…そんなに悪いことしたの…?…お願いします。レギナを嫌な気持ちにさせたりしないし、今まで以上にお手伝いもする。フォルマと頑張るから。わがまま言わないから、なんでもするから!だから…、だから!!お願い!止めて。


「んぐぅん、んん…!」


言いたいのに言えない。嫌だ、嫌だ…!視界が滲み、よく見えない。それでもラクリマさんから目を逸らさない。やっぱり無かったことにしたい、と言って欲しい。


何もない方を見ていたラクリマさんは横目で私を見てた、がすぐにそっぽを向いた。


……どうして辛そうな顔をするの?ラクリマさん自身が私たちを売ったのに。


「おし、お前ら行くぞ。……それではまたご縁がありましたら何卒」


私たちは男の肩に担がれる。男たちは外に向かって歩き出した。

その時奥でカタリと音がした。見るとレギナが自分の部屋ドアを少し開け、こちらを見ている。その可愛らしい顔には、いつもの笑みを浮かべていた。私たちにはいつもそれが悪魔にしか見えなかった。そして今日も変わらず悪魔的な笑みだった。


レギナがゆっくりと声を出さず、口を動かす。


『さ•よ•う•な•ら』


確かにそう言っていた。

『ベルス』はこの国のお金の単位です。


1ベルス→小貨1枚

10ベルス→小銅貨1枚

100ベルス→中銅貨1枚

1,000ベルス→大銅貨1枚

10,000ベルス→小銀貨1枚

100,000ベルス→中銀貨1枚 ……

という感じで続いていきます。MAX大金貨まであり、10億ベルスです。わあ。


一般市民がよく使うのは小銀貨までです。それ以降はかなり高い買い物をした時ぐらいしか使いませんし、滅多に手にしません。貯金の時はかさばらなくて便利そうですね。

商人や貴族等の富裕層は金貨を使うことがあるっぽいです。それでも大金貨なんてまず使わないんだとか(そりゃそう)。じゃあなぜ作ったんでしょうか。それになんでスタートが小銅貨からじゃないんでしょうね。不思議です。

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