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夢見る彼女は幸せを  作者: 緑野鳶
天佑神助を待つ者よ、汝、黎明を告げる
4/13

何が崩れ、誰が崩したのか

「わかってたでしょ。あれ(だんまり)が最善だったって…」


フォルマは自分のベッドに潜り顔を出そうとしない。時々中からすすり泣く声が聞こえる。


「わかってたよ…!っでも…!お父さんっ…をあんな風に言わっれて…。我慢できなかったんだもん…!ごめんねっ…!私、い、言い返したりっしなきゃ良かったぁ…!」


うわんと声をあげて泣き始めた。私はそっと近づき、シーツの上から抱きしめる。


「ごめん」


ごめん、怖かったよね、ごめん。本当は私が言い返さなきゃいけなかったのに。フォルマは私の代わりをしてくれたんだ。あの時すぐに止めなかったのは、「もっと言ってやれ」ってちょっと思っちゃったから。


フォルマが顔を出した。私の頬をじっと見ている。


「…痛い?私…なんか庇うから…。…ごめんね」


「いいんだよ。私はフォルマに傷ついて欲しくないん。私が勝手にやったんだから、気にしないで?…ちょっと痛いけど大丈夫。それにほら、こうやって冷やせば…。ねっ?」


私は頬に手を当てる。ひんやりとして気持ちいい。

昔から私の手は冷たい。手だけじゃなくて足先もだけれど。お母さんも私と一緒だった。体温はちょっと低くて、夏の暑さが嫌い。私は人族だけど、()()()だったお母さんの血を濃く受け継いだみたい。


氷闘族は暑いのが苦手で寒いところに住んでいる「戦闘種族」らしい。暑いところではあんまり力を出せないけど、暑ささえなければとっても強い種族だって聞いた。世界最強の種族だってお母さん、誇らしそうに教えてくれたっけ。


まだ泣き止まないフォルマに、部屋に入る前に急いで回収した(世界種族事典)を与える。本を与えれば大体すぐに泣き止んでくれる。

…ほら、落ち着いて来た。

それと同時に私の気も抜ける。

あ、フォルマが本を読んでいる姿を見て思い出した。まだプレゼント開けてない。カードで満足してしまっていた。

本当と一緒に回収した私宛のプレゼント。()()()の包みを開ける。出て来たのは箱。なんだろ?


「…ネックレス?」


入っていたのはシルバーのネックレスだった。二重になっているひし形のフレーム。その中に石が入っている。─光当たり具合によって色が変わる。


「綺麗ね…」


いつの間にかフォルマは読書をやめ、私の手元を覗き込んでいた。うっとりとして見つめている。

お父さんはどうしてこれをくれたんだろう。


少し考えて、私はネックレスをそっと箱に戻した。


きっと似合わない。











◇◇◇


夜、玄関の開く音と人の声で目が覚めた。


レギナ、何か企んでいるの?そう思ったけど違う。男の人の低い声がするし、ラクリマさんの声もする。ラクリマさん…なんだか声、震えている?


「約束通り────た。取────」


私はドアの隙間から声を聞く。


「あの子────出さないと誓っ──────」


人が家の中に入ってきた。足音が聞こえる。…多分3人。

2人がリビングの椅子に座った音がした。1人はラクリマさんだと思う。

さっきよりもはっきりと声が聞こえるようになった。


「…さて、あの少女の代わりは用意できてるんでしょうね?あの少女であれば我々は…これだけお出しするのですが」


「…止めてちょうだい。もう話はついたでしょう…。子供2人を差し出す…。双子で片方は器量の良い子よ。…もう片方の姉の方は顔に傷があるけれど」


寝ぼけていた頭が冴えた。子どもの私でもわかる。この人たちは()()()()だ…!

なんで家にそんな人たちが…!!いや、今はそんなことどうでもいい!!


「フォルマ…!起きて!」


横で寝ていたフォルマを呼び起こす。すぐにフォルマは目を開けた。寝ぼけている。


「ん〜…?なぁにんもご!?」


「声を出さないで…。今奴隷商人が来てる、売られる、私たち!」


フォルマの口を塞ぎ、できる限り小さな声で説明をする。フォルマの顔が恐怖に変わる。何か言いたげだがそんな時間はない。それに何を言いたいかはわかっている。


この国は普通の人が奴隷を販売するのを禁止している。許されているのは、「国が販売している元犯罪者の奴隷の購入」と「国外で購入して許可をもらう」の2つのみ。

この2つのことと、そしてこの国にはそれ無視して人を連れ去るなどして奴隷を販売している悪い人たちがいると、親は教える。気をつけてね、と。


家に来ている人たちは違法な奴隷商なのは間違いない。捕まればどうなるかわからない。


私は静かに窓を開ける。外で誰かが見張っている気配はない。行ける!ここから脱出できる!


「急い」


その時、部屋のドアが開いた。光が差し込み、私たちを照らす。心臓がより強く音を立ててた。


「何してやがる!」


私は窓に足をかけた。大きな男─ツノがあるので多分()()()の2人が、こちらに急いでやって来る。が、この距離なら家の外にはギリギリ出られる。


フォルマの手を引いた。でもびくともしない。近づいてくる男を涙でいっぱいの目で見上げている。


「っフォルマ!!!」


私がそう叫んでようやくフォルマは動き出した。男たちの背を向けて窓の縁に手を置き、越えようとする。


でも、もう遅かったみたい。


「─ん!───んんんん!」


動き出した次の瞬間には、男たちは私たちを捕まえていた。

【氷闘族】

暑に弱い種族。暑ささえなければ最強です。長時間暑い中活動すると電池切れ間近のリモコンのように動きが鈍くなります。アルナイル王国では人口の少ない種族で積雪地域の一部でしか出会うことができません。SSR。アルナイル王国のお隣の国にはたくさんいるようです。

外見はムキムキマッチョ。という訳ではなく大抵が細マッチョです。あと、肌が白い人が多いです。彼らは寒い地域、特に積雪地域を好むので太陽にあまり当たらないからです。



【竜人族】

褐色肌の種族。身体能力が高いことから戦闘種族分類されています。大柄な人が多く、力のみの勝負ならば右にでる者はいません。頭を使うことが苦手な人が多いです。お馬鹿というより天然ですかね。あと、形は様々ですがツノが生えてます。

昔は奴隷になってしまう人も多かったそうですが、戦で名を挙げ英雄となった猛者もいるようです。アルナイル王国では珍しくない種族です。


序盤も序盤ですが重い話が続きます。お付き合い下さい。



明日も投稿予定です。

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