天佑神助を待つ者よ─13
中は埃と煙で視界が悪くなっている。早くあの騎士さんを探さなきゃ。
…確かこっち。
足元に気をつけて奥に進む。
「騎士さ〜ん。居ませんか〜?誰か〜!」
もう少し大声を出した方がいいのかも。もう一段階大きくする。
私の声に反応するかのように、左横のドアが急に開く。
「わ!!」
「…女。お前も逃げ遅れか」
居た!!自分の記憶の騎士さんと目の前の騎士さんを比べてみる。
身長は…確か大きかった。この人は百九十センチくらいあるからビンゴ。格好も一緒。鎧は一切つけていない。紺色の髪をポニーテールにしたお兄さん。そして特徴的な竜人族のツノ。
早い段階で会えて良かった。これで会うのか遅かったり、そもそも会えなかったりなんてしたら来た意味がない。
「…救助者が1人増えた。……お前、出口まで送るから着いて来い」
そう言って出口に歩いて行く。っ待って!
「違います。私、男の子の場所がわかります」
騎士さんがピタリと動きを止める。勢いよく振り返り私をギロリと睨みつけた。…怖い!
「居場所を知っているだと…?だがほぼ全ての部屋を当たったが発見できなかった」
「花の模様が入っているドアノブが付いた部屋はどうですか。床下まで探しましたか?」
騎士さんの目が大きくなる。床下だと?と小さな声。そして自分を記憶を辿っているのか、黙り込んでしまった。
確か夢で見た部屋は…。
廊下を見渡す。…今見えるところにはないかな。もっとしっかり確認して行かなきゃ。
「花柄の取手だな。情報提供感謝する。ここは崩壊の危険がある。今すぐ引き返せ」
騎士さんは私の背をグイグイと押す。ちょ、待って。私が助けたいのは男の子だけじゃない。
くるりとターンし、加えられた力を逃す。
「嫌です」
「なぜだ」
あなたを助けるためです、って言って信じてくれるかな。…きっと問答無用で押し返させる。
男の子を見つけてから騎士さんが部屋を出るまで時間がかかっていた。もちろん床下の空間の存在に気づくのに時間がかかったってことはあると思うけど、それだけじゃなくてさ…。
心の中で呟くのを止め、ドアノブを一つ一つ確認して行くことにする。何か言おうとする騎士さんから目線を逸らし確認を急ぐ。
「あった」
ここだけ豪華なドアノブ。手を伸ばす。ここに男の子が。
「待て。……問題ないとは思うが火事で取手が高温になっている可能性がある。中に危険が潜んでいないとも言い切れない。俺が開けるから動くな」
追い返されなくなった。
…これは私とのやりとりに時間をかけるのは勿体無いって判断したからだろうな。大人しく一歩下がって待つ。騎士さんが扉を蹴破った。なんてパワー…。
中の安全を確認するとすぐに床を調べ始めた。もう蹴破った時点で警戒もクソもないのでは。
騎士さんは入り口から調べ始める一方、私は部屋に置かれた棚の横に移動する。確かこの辺…。カリカリと持ち上げられそうなところを探すと…あった。
引っ掛かりを見つける。
「そこか」
それに気づいた騎士さんが近づいてくる。待って、と手でサインを出す。止まってくれたのを確認し板を持ち上げるとそこには空間が現れた。大人がやっと通れるぐらいのサイズの穴から身体を入れ目を凝らす。
「……誰?お姉ちゃん、何しに来たの?」
空間の奥の方に男の子の影が見える。
「私は助けに来たの。ここは危ないから一緒に逃げよう」
手を伸ばしてみるけど知らん顔。警戒心が強い。そうだよね。この子は奴隷なんだから。いつ買われるか分からない状況で人を信用しろって言われても無理だもん。同じ奴隷の人にだって心を開くのは難しいよね。
私たちの部屋だけじゃないかな、あんなに信頼し合っていたの。
「何をしている。どけ、俺が引っ張り出す」
わ!ちょっと待った!!
慌てて這い出て立ち塞がる。ちんたらするな、という不満が顔に出ている。
「この子は怖がっています。今騎士さんが入っても抵抗するだけです。年齢も境遇も近い私が話をして、出てきててもらいます」
顔が!顔が怖いの!!それにその威圧感のある感じも!
私でも怖いんだから、あの子はもっと怖いはず。
「……早くしろ」
お辞儀をし、床下に潜る。それにしてもこの子はどうしてこんなところにいるんだろう。部屋にいた奴隷たちは騎士さんが全員救出して人数も確認してるし。…考えるよりひとまず避難しよ。
「この建物、壊れちゃうかも知れないんだって。だから急いで逃げなきゃいけないの。今外にアルナイル王国の騎士さんがいる。私たちを助けに来てくれたんだよ。もう、私たち奴隷じゃないんだよ」
「ほんと…?ぼく、どれいじゃない…?もうこわいのイヤだよ…」
優しく手を握ってあげる。私の手に涙が落ちて来た。
「行こう、もう大丈夫。お日様の光を浴びよう」
私が這い上がると続けて男の子も這い上がってくる。目線を上げると騎士さんが。その手には水がいっぱい入ったピッチャー。
何するの?
騎士さんの手が動く。
「……かける時言って欲しかったです」
ぴちゃぴちゃと髪の毛や洋服から水が滴り落ちる。続いて男の子にも水がかけられた。騎士さん自身も花瓶の水をかけている。頭を一振りすると男の子を持ち上げ抱っこした。
「火が強くなって来た。倒壊の危険も上がった。急ぐぞ」
「あの窓からは出られないんですか?」
部屋には窓が付いていた。
「無理だ。頑丈な木で補強されている。ガラスだけを割っても身体が通らない。脱出できそうなのは礼拝堂のあそこからだけだ」
周囲の安全を確認しながら廊下を走る。もう火が回り始めていてかなり熱い。火がないところに足を置き先へ進む。
もう礼拝堂、後少し!




