天佑神助を待つ者よ─11
「…お嬢ちゃん?どうした?」
「この建物、崩れるんです!!崩れて!火が出て!っ、人が下敷きに!」
騎士さんの腕にしがみつき必死に訴えてみる。たかが夢かも知れない。だけど私の夢は!
「…夢を見たの?そうでしょ!夢を見たのね!?騎士様!!姉の見る夢は特別で正夢になることがあるんです!!中にいる人たちを避難させてくださいっ!!」
私の夢は本当になることがある…!
「夢が本当になる」のか、それとも「本当に起こることを夢に見る」のかはわからない。
けれど共通しているのは正夢ってこと。
「ちょっと待ってくれ。お嬢ちゃんは未来予知ができる神族なのかい?」
首を振る。
「神族」。
特別な能力を一つ持って生まれた種族。普通に人にはできっこないような奇跡、その名前の通り神の御業のようなことをやってのける人たち、って印象しかない。私の顔の傷を塞いでくれたのも神族。フォルマが言うには人族が急に変化して生まれてくる種族らしい。本当に貴重なんだとか。
でも私は神族じゃない。
それでもあの夢に出て来た騎士さんは、今目の前にいる騎士さんと確かに同じ格好をしている。これは偶然なの…?
「人が死ぬんです!騎士さん一人と小さな子が!下敷きになるんです!!」
「人が死ぬ」。この言葉で皆さんの困り顔が固まった。騎士さんたちは髭の騎士さんをじっと見ている。その髭の騎士さんは建物を見つめる。
と思ったら急にしゃがみ、私に視線を合わせる。
「確かに…この建物だったんだね?」
さっきまで私たちを「お嬢ちゃん」と呼んでいた時とは目が違う。貫くように私をまっすぐ見ている。
私は大きく頷いた。それを見た髭の騎士さんも頷き、そして立ち上がる。
「わかった。…団長!!団長はどこだ!!!」
髭の騎士さんが何度も「団長」さんを呼ぶ。
その声を聞いた騎士さんたちがザワザワとしだす。団長をお探しだ、と騎士同士で伝達して行っている。
「中だ!!中で指揮をとっている!!」
遠くから一人、走ってくる。周りの騎士さんが背筋伸ばしたのが分かった。
ピンク色の髪の毛に空色の瞳、それから長い耳。優しそうな人。この人も上着を羽織っている。アストラさんよりも地面に近い長さの。肩にはモジャモジャしたものがついている。モップみたいな。豪華な上着。
「フィデスか!早急にノーメンに…あぁ失礼。副団長、急ぎ団長にお伝えしたいことが」
副団長…!上着が豪華なのはこの騎士さんが偉い騎士さんだからなんだ!
髭の騎士さんが副団長さんに私の「夢」を伝える。一通り髭の騎士さんが話終わると、副団長さんは私と髭の騎士さんを交互にみる。
「中にが火薬があるのが確認済みでしたよね。もし本当に崩れ火が出たとしたら大変なことになります」
髭の騎士さんが私の肩に手を置き副団長さんに迫る。
「ですが……。子どもの夢ですよ!?彼女が神族だと言うのであればあれですが、そうではない!そんな信憑性のない話では作業の手を止めさせられない。この人数、動かせません!」
そんな!!今動かなきゃあの男の子は…!
「………四番隊の若いの。中に行って団長に話して来てくれ。急ぐんだ」
髭の騎士さんが近くにいた黒髪の獣族に指示を出す。
獣族の騎士さんがはっ、と返事をし駆け出す。
「……ヴィシオさん!!」
「俺は、このお嬢ちゃんには『特別な力』があるんじゃないかと思っている。それにだ。火薬があるんだぞ?もし引火してみろ!!…理由なんて、『火薬があり万が一を考えて』でいいんだ」
副団長さんは黙り込む。それを見つめる髭のヴィシオさんと言う騎士さん。
私は…このままでいいのかな…。私からもお願いするべきかな。
「………君は、本当に起こると思うのかい?」
副団長さんが急に聞いて来た。どうするべきなのか考えていたところに急に振られたからビクリとしてしまう。
…回答次第で動いてもらえるかが決まる。
「わ、私の夢では、小さい子と騎士さんが死にました。人が死ぬのを見たくないです。死なずに済むかもしれない人を、私は殺したくありません」
フォルマが手をぎゅっと握って来た。すこし汗をかいている。
副団長さんは瞬きをせず私を見つめていた。私も目を逸さなかった。
「全隊員に伝えるんだ。我々は危険回避のため百メートル後退し、再度安全を確保する。速やかに行動を開始しなさい」
フォルマと顔を見合わせる。動いてくれる!!
ヴィシオさんを見上げる。頭を撫でてくれた。
「副団長!ヴィシオ隊長!伝えて来ました、捜索を開始するそうです!」
黒髪の獣族の騎士さんが戻って来た。副団長さんとヴィシオさんが大きく頷く。
「「ありがとうございます!」」
フォルマと声を合わせ、お辞儀をする。副団長さんが少し優しい顔をする。
「私は人を救うために騎士になったんだ。救える命は救いたい」
「そうだな。俺らは騎士だ。………さぁ、お嬢ちゃんたちも下がってくれよ?避難だ、避難!」
副団長さんに同意したヴィシオさんが背中を押して来る。
いや、でも!その子の顔を知っているのは私だけだし、見つけた時の確認必要なんじゃ…!
「ほら、私たちも奥行こ!ここにいても何もできないし邪魔になるだけよ!もう大丈夫だよ」
フォルマがグイグイと腕を引っ張る。騎士さんたちの避難の呼びかけによって、他の人たちはもう奥に行き始めている。建物の方に向かっていく騎士さんもいる。フォルマの言う通り何も心配ない。
大丈夫。




