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夢見る彼女は幸せを  作者: 緑野鳶
天佑神助を待つ者よ、汝、黎明を告げる
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天佑神助を待つ者よ─9

傷の騎士さんはアストラさんと言うみたい。少し顔は怖いけれど、親切な騎士さんだ。


「アストラ副隊長!上の救助完了したと報告が!!」


「ではこちらも救助を開始する!階段近くの部屋から順番に開錠し、『礼拝堂』に誘導」


了解、とたくさんの人の声が響き渡る。

礼拝堂…?あの祈りを捧げる…?

私が首を傾げていると、遠くで人声と足音がするようになってくる。奥の部屋から出始めたみたい。私たちは自分たちの順番が来るまで大人しく待つ。

ようやくこの落ち着かない部屋から出ることができる…!出たらすぐにフォルマを探さなくっちゃ。


「よし、君たちの番だ。さぁ出るんだ」


みんなお利口に列を作って順番に外に出始める。私はそれの最後尾。

約一ヶ月生活したこの不自由な部屋から出ることができた。やっと自由になったんだ。それに()()()に買われなくて済む。

そう思うと身体の力が抜けそうになる。でもフォルマの無事がわかるまで喜ぶことはできない。早く行かなくっちゃ。


「これから行く場所にいる騎士に事情は話してあるから一緒に探してもらうといい。私はここでまだ仕事がある」


アストラさんが私の肩を優しく叩く。


「ありがとうございます」


一礼し、目の見えないカリゴちゃんと手を繋ぎ歩き出す。前の人にしっかりついて行く。

綺麗な廊下を歩いているとどこからか風を感じた。草や花の匂いがする。近くにお花畑でもあるのかな。柔らかな風が私たちほぐしてくれる。




前が騒がしくなって来た。


廊下を抜けた先は…まさに教会の礼拝堂だった。

教会を奴隷を売る場所として使っていたの!?あまりに罰当たり…!

礼拝堂に神父様の姿はなく、代わりにたくさんの騎士さんと助け出された人がいる。


「B級はこれで全部?あー、はいはい。皆さん、名前を確認して行くので一列になって。確認できたらまた誘導しますんで!」


そう言った騎士さんの他にも何人かの騎士さんが手にボードを持ち、少し乱れていた列を綺麗に整えて行く。次に名前を聞き素早くチェック。列がどんどん短くなって、もうすぐ私の番。カリゴちゃんを先に行かせる。チェックしてくれたのはセンター分けの深い緑色の髪に青の瞳。顎髭を生やした騎士さん。今まで見た騎士さんの中では一番ベテランって感じがする。鎧まではいかないけど、胸の部分に鉄のものを当てている。


「カリゴちゃん、十歳ね…。はい!進んでよし。…んで最後がイチちゃんだね?十二歳であってる?あ、君だよな?妹ちゃんを探して欲しいって子は?」


そうです、と頷く。

もう早く探しに行きたい。


「おじさん、本当はまだやらなきゃいけないことがあるんだけど…。まぁ、他のやつに任せればいいかな。ほい、俺この子の妹探しにいってくるからここ頼んだ。なんかあったら呼んで」


騎士さんはボードを他の騎士さんにポイと投げ渡す。早く探しに行きたいとは思ったけど、お仕事はいいのかな。そんな軽いノリで任せちゃって大丈夫?

カリゴちゃんに離れることを説明してから歩き出す。


「そんでイチちゃんの妹ちゃんの特徴をもう一度教えてくれ。……あ、歩くの早い?」


「いえ大丈夫です……。妹は私の顔から傷を無くした感じです。メガネをかけてて多分S級?にいます」


了解、と騎士さんは私の身体を持ち上げた。急に身体が宙に浮いたからっびっくり。


「こーした方が速いしイチちゃん楽だろー?あ、あそこがS級だな」


私は騎士さんがS級だと言った方向に目を向ける。そこには他のところと比べると少ないけど、救出された人たちが一塊になっていた。

この中から私と同じ髪色の子を必死に探す。


………違う、違う、違う!


「しっかり一人一人見ていかなきゃまだわかんないぜ?しゃがみ込んでるかもしれないしな」


私の焦りを感じ取ったのか、騎士さんは私の頭をなぜて落ち着かせてくれる。騎士さんの腕から飛び降り、よく確認して行く。





居ない。


S級は人数が少なくすぐに確認し終わってしまった。一応周りも確認する。


──フォルマ、ごめん。私がちゃんと守れていたら。私が、私が、私が!






「イチちゃん!あれか!?」


私は騎士さんが指を刺している方向を注視した。少し離れたところ。壁際に私と同じ髪色の少女か蹲っている。


「フォルマ!!フォルマ!!」


私の声に少女は顔を上げた。私は走り出す。間違いない。フォルマだ…!

フォルマも私を見て立ち上がり、こちらへ走ってくる。

その勢いを受け止めるようにフォルマを抱きしめた。フォルマは私の首に腕を回す。フォルマの顔が歪み、涙が溢れる。身体の力が抜けたみたいで重みが肩にかかってくる。フォルマはもう立てないみたい。

ゆっくりと身体を屈める。


「フォルマ、もう大丈夫だから。大丈夫、私たち助かったよ」


「わだし!…私!寂しかった!怖がったよぉ」


わんわんと泣き叫ぶフォルマの肩に顔埋める。

フォルマを守るって、お母さんが死んじゃってお父さんが私たちに冷たくなった時から決めてたのに。できてないじゃん、私。こんなに怖い思いをさせて。


私の役立たず。

くそ、くそ!!!!


数分間、抱き合っているとフォルマが落ち着いて来た。時々咳をしながら息を整えて行く。


「───会えてよかった。また一緒にいられる」


フォルマの言葉で腕に力がこもる。




「そうだね、一緒だ」

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