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夢見る彼女は幸せを  作者: 緑野鳶
天佑神助を待つ者よ、汝、黎明を告げる
11/13

天佑神助を待つ者よ─5

「さっきの、凄いスピードやったなぁ。ほんま、びっくりしたわぁ」


とっても嬉しそうにニコニコしながら話しかける奴とは対照的に、私は静かに相手を見つめる。なにがそんなに楽しいのやら。私は恐怖で足の力が抜けそうだっていうのに。


「ん?あぁ。足が辛かったら座ってええで。俺も座ろうかな」


無表情なのに怖がっているのがバレた…。顔に出てたのかな。

奴は服が汚れるのは全く気にならないみたいで、床にお尻をつけた。あぐらを掻いて、膝に肘をついた。

私だけ立っているのも見下ろしているみたいで嫌。仕方がないから両膝をそろえ、曲げて座る。


「君、名前は?」


だんまりで返す。私は今、こいつに明らかに興味を持たれている。どうするのが正解なのか分からない。

私は奴隷だ。いつかは買われる。今ここで抵抗したところで、誰かしらの手に渡る。奴隷という立場を受け入れた訳じゃないけど、最善を選んで行きたい。こいつは最善じゃない…!

だから!こいつに買われる訳にはいかない…!


「こちらには『イチ』とあります」


奴隷商の男が手に持った帳簿を確認し、そこにある名前を読み上げた。()()()の名前で売られたんだ。ってことはフォルマは「フタ」になってるのかな。正直に名乗らないで良かった!


私の口から名乗ってくれなかったことが不満なのか、あからさまに残念な顔をする


「俺とはお話ししたくないん?一言も口聞かへんやん。なぁ」


手が伸びてきた。思わず身体を後ろに引く。奴は私を見つめた後、ため息をついた。

…興味がなくなった…かな?


「…それにしても『イチ』か。ザ•数字って感じやな。『1』がいるってことは『2』とか『3』もおるんか?」


「えぇっと………。Sに妹がいるようですね!『フタ』と記載があります。それと同じような顔で傷はありません」


フォルマ!まだいたんだ!表情に出さずにに喜ぶ。

フォルマの情報を聞くと奴は私から視線を逸らした。


「……そちらを見させていただいても?」


急に訛りが無くなった。いやそんな事よりもフォルマが危ない。なんで急に私への興味がなくなったのか分からない。ちゃんと相手しなかったから…!?このままじゃフォルマがこいつに買われる危険がある。ダメだ。それは絶対ダメ!

奴は立ちあがろうと体勢を変えた。


「待って!!!」


かしこまりました、と奴隷商の男が返事をするのに被せ、叫ぶ。同時に奴のマントの裾を掴んだ。

急に汗が出てきた。息がし辛い。肩で息をする。


「妹は…お願いします……」


頭を下げて、床を見つめる。フォルマだけは…、こいつの元だけは!

裾を引っ張っていた手が、冷たい何かに包まれた。手の力を緩め顔を上げる。裾からするりと離れた手は、奴の冷たい手に支えられる。超至近距離で、目が合う。私に合わせるように、奴は膝をついていた。


「私と…お喋りしてくれたら…ね?」


お喋り…?急に冷めた態度になったのは、本当に私が口をきかなかったせい?いやまさか。そんな子どもみたいな…。


「嫌?そうならS級の方に行くけど」


「黙ってたのはそういう嫌とかそういうのではないです…!」


本当は嫌だけど。

そうか、そうか、と奴は喜ぶ。


「その顔の傷はどうしたんだ?随分と大きい傷だけど。よくくっついたね」


「この傷は…十歳の時にできたものです。遊んでいた時に。かなり血が出たらしいんですが…。その、丁度『神族』がきていて…くっつけて貰ったと…聞きました」


握られた手に汗をかいてきた。今すぐに離して拭きたいけれど、下手には動けない。


「へぇ…神族。ついてるね。確かこの国でも少数の種族だったと思うけど。…ところで君のあの脚力と腕力、驚いたよ。本当に人族?両親は?」


「人族…だと思います。調べてもらってないので多分…。運動神経は…昔から良くて。父は人族で母は氷闘族です」


そうかそうか、とどこか満足そうなこいつはようやく私の手を離したかと思うと、すぐに柵のこちらに手を入れ、髪を優しく触った。

寒気。カリゴちゃんとは違う手つき。痛くされるのは嫌だけど、これもこれで嫌。


「なるほどそれで。肌も白くて…、この髪も手入れをすればとても綺麗な髪なんだろうね。少しくすんだ今も美しい」


私の傷んでいる髪の毛を見て、勿体無いな、と呟いた。そして無言の時間が来る。何かを考えているみたい。急に私の髪から手を離し、明るいトーンで話し始める。


「君はどうして奴隷になったのかな?」


「…義母に売られました」


「そうか!大変だったね!!」


心にも無いことを。


じゃあさ、とこいつはニッコニコで口を開く。


「もし君が自由の身になって、君を奴隷にした人間に復讐できるとしたらどうする?」


思考停止。


なんでこんなことを?いやそれよりもまず回答。間を作っちゃダメ!


「復讐なんてしま」


「それが妹さんの願いでも?」


「しません」と言いかけたところを止める。

ラクリマさんの最後の顔はとても悲しそうだった。あんな顔をするってことはなにかやむを得ない事情があったんだと思う。

でもフォルマにお願いされたらどうだろう。

何よりも大切な妹。一番の宝物。あの子守るため、きっとなら悪魔にもなれる。

そんなフォルマからのお願い。そんなのされたら私…、私…。











──あぁ、簡単じゃん。




「しません。フォ…妹はそんなこと言いません。絶対に」


私の妹は賢くそして優しい。そんなこと望まない。


絶対に。


「…そう。じゃあ最後にもう一つ質問」


こいつからようやく解放される。私は最後の問いを待つ。




「目の前で私が妹さんの喉に刃物を当てて脅す。人を殺してこいと。そしたら君は殺せる?」

「神族」は「人族」の突然変異によって生まれる種族です。「瞬間移動」や「浮遊」、壊れたものを直すことができる「修復」など、不思議な力(神技)を1つ持って生まれます。

人族と他種族の間のにできた子が神族として生まれる可能性はほぼ0。人族同士、神族と他種族との子になると1%満たないくらいになります。さらに神族同士の間に生まれた子では5%まで上昇します。

彼らはその神技を生かし、さまざまな場所で活躍しています。


また必要になったら本編で説明するので、なんとなくわかっててもらえれば大丈夫です。



次の更新は30日を予定しています。

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