プロローグ
そこは白と黒しかない世界だった。
そこに1人の、美しい女性が立っていた。どうらや軍人らしい。軍服を身に纏い、凛としてあたりを見回していた。腰には剣を1つ携えている。
女性の後ろには大きな屋敷のような建物の一片が見える。
その時、女性が口を開けた。
「───────、──────様!」
どうらや人を探しているようだ。
女性は歩き出した。その間も誰かを呼び続ける。
「こっち!」
女性呼ぶ、玉を転がすような声がした。その方へと駆けていく、女性の声は途切れ途切れに聞こえ続けた。
「…探しました、──────様。皆さん、慌てて───ますよ」
そこにもまた、1人の美しい女性がいた。年齢は軍人と思える女性と同じくらいだろう。ただその女性は見るからに高価そうな、ふわりとしたドレスをとコートを着て、切り捨てられた木の上に腰掛けていた。どこかの上流貴族の令嬢だろうか。
ごめんなさい、と令嬢は申し訳なさそに笑った。
「でもどうし────たと話したかったの。…2人っきりで」
令嬢は女性に自分の横に座るよう、促した。
女性は小さく笑い腰掛けた。
「少しですよ」
令嬢は口を開き、何かを語りかけ始めた。
その時、世界が途切れ途切れになり始めた。時間が飛んでいるのか、2人の動きが不自然に見える。ガガッ、と言う音も入る。よく見えない、聞こえない。今、2人が何をし、何を話しているのかが全くわからない。
次に世界がはっきりとし出したのは、2人の会話が丁度終わった頃らしかった。
女性が立ち上がり、令嬢に手を差し出す。令嬢はその手を取ろうと自身の手を伸ばしかけ、ピタリと止めた。
「いけない!忘れ───ろだったわ!!」
令嬢は羽織っていたコートのポケットから何かを取り出し立ち上がり、女性の手にそっと置いた。
自身の手に置かれた物を見た女性は目を見開く。すぐさま顔を上げ、令嬢に何かを告げている。
また世界が乱れ出した。音声を捉えることはできない。
ただ、2人とも微笑みを浮かべている。
令嬢が不意に女性に抱きついた。その目には涙が浮かんでいた。また音が聞こえるようになる。
「また…、会えるとわかって─るのに…、どうして───に悲しいのかしら…!」
令嬢は涙をこぼした。
女性は令嬢の背中に手を回し、その気持ちに応えた。
「──がとう…。大好きよ」
令嬢は幸せそうに微笑み、女性の名を呼ぶ。
「スペス」




