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全てを怨む人の業-スベテヲウラムヒトノゴウ-
エレノアが部屋を出た後、バルガはミトラを取る。
ミトラで隠されていた頭頂部に、狼のような耳が生えていた。
バルガは立ち上がり、窓へ近づき外を見やる。
視界に広がるのは、夕日で茜色に染まる岩肌がさらされた山岳。
背の高い木は存在せず所々に低木が生え、冬が明け暖かくなってきたおかげで草花が少なからず芽吹いている。
もう少し立てば一面が鮮やかな緑に包まれるだろう。
だが、バルガが見ているものは見えるはずのない山岳の向こう側。
視界に広がる景色に興味すら示さず、ただ一点のみを見据えている。
その視線の先はオーケアス王国がある方角だった。
「前の戦争以来か。ようやくこちらから見つけたぞ……」
バルガは目を細める。
「今度こそ……」
口角が上がり、笑みを浮かべる。
「殺してやる」
先ほどまでの美しく輝いていた碧眼の瞳は、光を宿してはいなかった。
「愚かな父よ」