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傾国の悪女になんかなりません! ~蛮族令嬢クリスティナは予言された破滅フラグを【カンスト】パワーでへし折ります~【書籍化・コミカライズ企画進行中】  作者: 川崎悠
二章 アルフィナ領への旅

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48 エルトとの共闘

「こいつが報告にあった邪神か」

「ちょっと違うけど、まぁそうね!」

「クリスティナ、こいつは俺が倒す。……倒せると思うか? お前はアレとの戦闘経験があるのだろう。あいにくと俺はあの手の魔獣を見たことがない」

「んー……」


 どうかしら? 前回と同じタイプなら、体がじわじわ治っていくのね。


「さっき、私を助けてくれた時はどうしたの?」

「お前が飲み込まれたらしき場所を切り開いて手を引っ張った」


 それ、下手をすると私ごと斬ってないかしら!

 まぁ、助けられたので文句はないわね!


「じゃあ斬れるのね」

「ああ、斬る。……普通は斬れないのか?」

「さぁ。ただ前の奴は切っても突いても体が治っていったの。それにほら」


 私は邪神を指差す。


「さっきエルトが斬った場所、もう治っているでしょう?」

「……確かにな」


 あれが一番厄介なところなのよね!

 図体が大きいっていうのも問題なんだけど。斬っても治るのは大問題。


「私の【天与】なら浄化していけると思うんだけど」

「難しいのか?」

「たぶん、出力不足」


 私の勘が言っている。こいつは、まだ戦うべき相手じゃない。

 もっと時間を掛けて対策を打つか。

 【天与】に何かしら付加効果が生まれて、強化されてから挑むべき敵。


「今の私じゃ倒せない」

「……そうか」


 どうしようかしら。逃げる? でも。


「逃げたいところなんだけど、エルト。あの壁の向こう。修道院の中に私の仲間が潜入してしまったのよ。合流するか、彼らが逃げられるようにしておかないと、私も逃げられない」

「……修道院に潜入?」

「まぁ、いろいろあって」

「いろいろあったか。なら、そうだな。アレに壁を破壊させよう」


 ん⁉


「邪神に、修道院の壁を破壊させるの?」

「あれだけの巨体だ。俺たちが破壊するより手間がない。別に、アレは壁を守る者ではないのだろう?」

「まぁ、そうでしょうね」

「ならば問題ない」


 壁を破壊するだけなら『怪力』の【天与】でもできそうだけど。

 ……いえ、だめね。あれだけ高い壁の、下の方だけ壊したら崩壊しそう。

 瓦礫が落ちてきて私が潰されるかもだわ。

まぁ、薔薇で支えられなくもなさそうだけど。

 邪神がここに陣取っていて、さらに私を狙っている状態でそんな余裕はない。


「方針は決まったな」

「ええ! じゃあ、やりましょう!」


 とくに異論もなかったからエルトの提案に頷く。


「フッ……」

「どうしたの?」

「お前と再戦するより先に共闘することになるとは思わなかった」

「あはは! 確かにそうね!」


 私を庇うように前に立っていたエルトの隣に、私は立つ。


「あいつ大きいけど、大丈夫そう?」

「問題ない。俺は端から削っていこう」


 『予言』の中のエルトは、私が四方八方に広げた薔薇槍を潜り抜けて、単身で突っ込んできていた。あれだけの動きができるなら、まぁ邪神相手でもいけるかしら?

 そうだわ。あの悪夢での戦いも参考にしましょう。


「エルト、まずは私の力を見ていて!」


 力を込める。

 なんとなく、さっきより力が湧き出てくるような気がする。


「浄化の薔薇槍!」


 光り輝く黄金の薔薇の槍。それを邪神と地面の接地面に無数に咲かせる。


『ぁああああああ!』


 あ、効いているっぽい!

 邪神の下半身はなくて、胴体の下部分が真っ黒な泥になっているんだけど。

 やっぱりあの泥部分も邪神の体であることには変わりないみたい。


「動きが封じられるのか?」

「いえ、だめね。もがいて、体を削りながらでも動いてくる」


 邪神の動き自体は俊敏じゃあない。下半身がないからね!

 上半身と、下部にある泥のうねりだけで進む、リュミエール・ナメクジみたい!


「やはり倒すなら首を切り落とすか」


 エルトは逃げるつもりはないみたい。ここで邪神を倒すつもりね。

 それでもまずはリンディスたちの脱出を優先しようとしてくれている。


「ふふふ」

「どうした」

「諦めていないなって思ったの。それだけ」

「そうか」


 私の力不足は否めない。

 けど、エルトにはそんなこと関係ないのね。

 なんなら私の力すら要らないのかもしれない。

 それくらいの自信が彼にはあるのよ。

 流石は王国一の騎士の名を背負っているわね!

 私も負けていられないわね!


「足場に使って! エルトならできるわ! 棘なし薔薇の……螺旋階段!」


 複数の蔓を束ねられた薔薇が捻じれ、太い〝幹〟になる。

 それらが邪神の体全体に巻きついていく。

 エルトなら、あの蔓を足場にして邪神の頭にも辿り着くわ。


 私は薔薇を咲かせながら壁に向かって駆ける。


『ぁあああ! 私の体ぁああああ!』

「誰があんたの体よ! 私の体は私のよ!」


 私が壁に走ると同時にエルトは邪神に向かって突撃していく。

 壁を破壊するには邪神に暴れてもらわないといけないからね。

 挑発する気なんだと思う。じゃあ、ついでに!


「浄化薔薇! エルトの剣に力を貸して!」


 エルトが手にしている黒い剣に、黄金の薔薇を咲かせ、巻きつける。

 もちろん彼が剣を振るのに邪魔にならない程度に。

 『怪力』の【天与】も付与できればと思ったけど、流石に遠隔では無理みたい。


「沈め!」


 エルトが薔薇の螺旋階段を足場にして、邪神の肩口に斬りかかる。

 浄化薔薇の効果か、それとも彼の技量の成せる(わざ)か。


 ザシュッ!


『ひぃぎゃぁあああああああ‼』

『痛い、痛い、痛いぃぃいい!』

『なんで、なんで、なんでぇええ!』


 エルトったら、邪神の片腕を切り落としたわよ⁉

 壁を破壊させるんじゃなかったのかしら!


「……なんだこれは」


 あ、エルトも驚いている!

 ということはアレ、浄化薔薇のせいね!

 ……私のせいだった!


『ぁああああああ!』

「シッ!」


 エルトが暴れ回る邪神を躱して足場を飛び回る。

 なかなかに人間離れした動きよ。

 私が【天与】ありきでする動きと同等かそれ以上。


『お前はぁああああ!』

『エルト! エルト! エルト!』

「……なんだ?」


 邪神がエルトの名前を呼んでいる。

 もしかして狙いは私だけじゃない?


「お前に名を呼ぶことを許した覚えはない!」


 そういう問題かしら!

 エルトは宣言しながらも邪神の体を切り裂いていく。


『ぁあああああああ!』


 でも、浄化薔薇で削ったはずなのに、やっぱり邪神の体はすぐに治る。


「いえ、あれは治るっていうより」


 泥を切り裂いても、泥を切ったことにはならない。

 それは単に二つの部分に別れただけだ。元々、体のすべてが不定形なのよ。

 だから切っても突いても意味がない。

 人型をしているのは……おそらく、邪神の元になっているのが人間だから?


「エルト! こっちこっち!」


 エルトが注意を引きつけてくれたから、私はあっさりと壁に辿り着く。

 まさか私だけじゃなくエルトの体まで狙うとはね。

 邪神の元となる存在がどこからきて、いつからああなのか。

 それを考えるとゾッとするけど、今は優先するべきことがある。


「編み込み薔薇よ、壁を這いなさい!」


 修道院の壁に、編み込む形の薔薇を咲かせる。

 どれだけ分厚いのか知らないけど、反対側にも同じ形状で咲くように。

 高い壁を上まで覆っていく。

 邪神が壁を破壊した時に内側にいるかもしれないリンディスたちや、無関係かもしれない修道院の中の人に瓦礫が落ちないように。安全のための網ってやつね!


『ぁああああああ!』


 私の咲かせた螺旋階段を引き千切って、エルトを狙って腕を振り回す邪神。

 エルトは飛び回りながら、邪神を誘導して、こっちへ駆けてくる。


 私も遠隔で薔薇槍を咲かせながら援護して、エルトの負担を減らす。

 切り落としたはずの邪神の片腕がもう治りかけているわ。

 浄化も表面を削るだけしか効果がなさそう。

 壁を壊させるまではいいけど、そこからどうするかが問題ね!


「クリスティナ!」


 背後に迫る邪神を振り切り、エルトが壁の前に立つ私のもとへ来る。


「躱す時は一緒がいいだろう」

「ん?」


 ヒョイッと。エルトが私の体を抱きあげる。

 すでに剣は鞘に収めていた。

 これはフィオナに聞いたことがある、お姫様抱っこね!


「しっかり掴まっていろ」

「ええ!」


 とくに不満もないのでエルトの体にしっかり掴まる。


『ぁあああああ! 私の体を返せぇええええ!』


 だから誰があんたの体なのよ。しかも返せって図々しいわね!


 迫ってくる邪神の巨大な腕をギリギリまで引きつける。

 心配はしていない。エルトになら任せても大丈夫と思っている。


『ぁああああああ!』


 本当にギリギリ! なところでエルトは私を抱えて、真横に飛びのく。


 ドゴォオオッ!


 邪神の巨体が修道院の高い壁を押し潰すように破壊していく。

 狙い通りね! 間一髪のタイミングでその攻撃を避けた私たち。

 エルトに優しく地面に下ろされて、私は立つ。

 避けたことに気づいていないのか、邪神はそのまま壁を破壊し続ける。

 あらあら……。

 顔がないなら目も見えていないとか? そんなことはないわよね。


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