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傾国の悪女になんかなりません! ~蛮族令嬢クリスティナは予言された破滅フラグを【カンスト】パワーでへし折ります~【書籍化・コミカライズ企画進行中】  作者: 川崎悠
二章 アルフィナ領への旅

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47 闇の中で

『私にちょうだい、私にちょうだい』

『体! 体! 体!』


 ……体がないの?


 そうね、きっと彼ら、彼女たち? は、体がない魂だけの存在なのよ。

 だから体を欲しがっている。シルバに取り憑いた奴と同じ。


 でも、それなら無差別に誰かを襲えばいいのに。

 こいつらはなぜか私の体に執着している。


 私になり代わろうとしている。私の体には【天与】があるから?

 そうかもしれない。

 それが彼らの本当の願いなのかさえわからないけれど。


「……寒い……」


 憎悪のような執着の声が私を取り囲んでいる。

 成す術もないまま、闇の中に沈み、空に落ちていく。

 このままじゃいけないとわかっているのに抵抗する気力が奪われる。


 ……ああ、私は早かったのね。


 この邪神は今の私の手には負えない。

 まだここに来るべきじゃなかったんだ。

 もっと時間をかけて、この場所に辿り着くべきだった。


 今の私には戦うだけの力がない。【天与】をつかいこなせていない。

 悔しいけれど、逃げなくちゃ。

 私一人ではこいつはどうにもならない。【天与】に力をもっと……。


「……【天与】の力の源は……」


 女神への信仰心? それは違うと思う。

 すでに与えられた力は私のものだ。そう思っている。

 だから、力にもっとちゃんとしたエネルギーを注がないといけない。

 それをするのは女神じゃなくて私。

 私が注ぐべきなのは……心で。その心は、きっと。


「……愛……」


 たぶん、私には足りないもの。欠落しているもの。


 リンディスへの信頼はある。

 でも『予言』の世界の彼女のようには愛していない。

 カイルのことも、セシリアのことも、ヨナのことも好き。

 でも、きっとそれらは愛しているとまで言えない。


 家族は……『予言』の内容が正しいのなら、本当の家族じゃなかった。

 私の本当の両親は死んでいるらしい。もう会うことができない。


 レヴァンのことはよくわからない。

 家族になりたいとかつては願っていた。

 でも、そうはならなかった。

 きっと私たちはそうならない運命だった。


 ルーナ様のことはよく知らないまま。私が勝手に親近感を抱いているだけ。

 現実にいる、本物のルーナ様は私のことなんて嫌いかもしれない。


「……ああ」


 考えれば考えるほど。私は愛から程遠い。

 いつだって平気なふりをして生きてきたけれど。

 今までは本当になんでもないって振る舞ってきたけれど。

 それは内側に大きな力を抱いていたから。


 きっと私には根拠があって、自信があった。でも、もうそれもない。


「……フィオナ、私……だめかもしれない」


 学園でできた親友、フィオナ。

 目的地のアルフィナ領は彼女の領地の近くにあるから、また会えるかもなんて思っていたのに。

 もう会えないかもしれないと思うと、とても悲しい。


 本当に、現実でも最期かもしれないと思うと、寂しい。

 私はここで終わるの?

 得体の知れない邪神に体を乗っ取られて?

 そんなのは嫌だ。そう思うのに抵抗できない。

 どうせ終わるのなら。終わるのなら……せめて。


「……せめて」


 『予言』が視せた悪夢の世界。何十回と繰り返される処刑。

 その中で、たった一つ、私の救いだった光景があった。


「……エルト」


 現実の彼が知るはずもない邂逅。私だけが知る物語。

 でも、悪夢の日々を過ごす中で私の希望だった人。

 地獄の中で楽しみにしていた時間。

 もう一度くらい、会いたかったな。

 ……そんなふうに私は思って。


「────」


 闇を切り裂くように一筋の光が溢れる。

 それは私を取り込んだ闇が〝外側〟から切り裂かれてできた、穴。


「──ティナ!」


 誰かが呼ぶ声が聞こえる。

 周囲の雑音に交じって聞こえにくいけれど、それは確かに。


「クリスティナ!」


 私を呼ぶ声! あの光は出口だわ!

 ここは悪夢の中じゃない!

 出口のない迷路なんかじゃない!

 だから抜け出すことだってできる!

 私はもう囚われない!


「……!」


 闇に飲み込まれそうになっている私の体は【天与】の光によって、かろうじて守られていた。

 外側から差し込んだ光によって、それが理解できるようになる。

 私はまだ終わっていない!

 どこをどう動けばいいかもわからないけど!


「こんなところで死ねないわ!」


 もがいて、あがいて、暴れて、泳いで!

 私は光に手を伸ばす。

 伸ばした手を、誰かの手が思いきり掴んで。


「私は! ここにいるわ!」


 その手を離さないように、ぎゅっと握り返す。

 力強く引っ張られる私の体。

 私はその手に導かれるままに闇から抜け出す。


「──クリスティナ!」


 私を引っ張っていた手の主は。


「……エルト?」


 かつて出会って、決闘をした騎士だった。

 え、夢? 違うわよね。これ、本物エルトだわ!


「なんで?」

「とにかく、こっちへ!」

「……うん!」


 私は彼に手を引かれるまま、彼の胸の中に飛び込む。

 強引に引っ張り込まれて、そのまま地面にぶつかる。


「わっ!」

「舌を噛むなよ!」


 彼に抱かれたまま、ゴロゴロと転がる。


「わぁ!」

「口を閉じろ!」

「む!」


 言われるままに口を閉じて、転がって、止まった。


「ん!」

「立て! まだ終わっていない!」

「ん?」


 とりあえず言われた通りに立つ。そして状況を把握する。

 場所は変わっていないわ。修道院の高い壁が近くに見える。

 邪神も目の前にいる。

 邪神に取り込まれた私をエルトが救出してくれたみたい。

 当然、救出が最優先だったのか、邪神はまだピンピンしていて私を狙っている。


「もう喋っていいわね!」

「ああ。とにかく無事だな、クリスティナ」

「ええ! ありがとう、エルト! ところでなんでここにいるの?」

「偶然だ」

「偶然!」


 そんなことあるの?

 ていうか、エルトも国内巡りしているはずじゃ?

 でもまぁ、それこそ今すぐ話すことじゃないわね!


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― 新着の感想 ―
エルトーーー!!!待ってたよ。゜(゜´ω`゜)゜。クリスティナの最大のピンチに駆けつける貴方は希望の光!2人のイチャイチャパワーで邪神をぶっ飛ばしてください!!!!
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