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傾国の悪女になんかなりません! ~蛮族令嬢クリスティナは予言された破滅フラグを【カンスト】パワーでへし折ります~【書籍化・コミカライズ企画進行中】  作者: 川崎悠
二章 アルフィナ領への旅

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21 クリスティナは旅を続ける

「ねぇ、リン。馬って薔薇は食べると思う?」


 新しく手に入れた馬車の御者席に座る私の従者、リンディスに話しかける。

 私の方は王都から一緒だった馬に乗り、馬車の隣を進んでいるわ。

 私たちが連れている馬が二頭に増えたということね。

 そうなると、もちろん馬の世話も旅には重要な課題になってくる。


「流石に薔薇は消化に悪いかと。食べさせない方がいいですよ、お嬢」


 リンディスったら呆れたようにそう返してくる。


「そっかぁ。そうよね、私もよくない気はしていたわ!」

「本当ですかねぇ」


 リンはリンディスの愛称ね。リンディスは魔術を使える〝魔族〟なの。

 銀髪が特徴ね。赤い瞳をしていて、見た目は若いんだけど。

 実はリンディスの年齢は、見た目の倍くらいあるんだって。

 小さい頃から私の面倒を見てくれていたのだし、それくらいの年齢よね。

 両親から嫌われている私にとって、リンディスはずっと私の親みたいなものよ。

 魔術で姿を隠していたから最近までその顔を見たこともなかったんだけどね!

 前までの透明なリンディスのことを私は『声だけリンディス』って呼んでいたのよ。


「クリスティナお姉ちゃん……」

「うん? ヨナ、どうしたの?」


 幌馬車の中から御者席側へ、ちょこんと顔を出す少年、ヨナ。

 ヨナは王国人と魔族のハーフらしいけど、銀髪だからリンディスと並ぶと兄弟みたいね。

 見た目の年齢は十二歳くらい。

 でも、リンディスと違ってヨナは見た目のままの年齢だそうよ。


 魔族は大人になるまでは私たちと一緒の成長具合で大人になってから、あまり年を取らないらしいわ。

 大人の活動的な時期が長く続く一族なんですって。不思議ねぇ。


「……僕もお腹すいた」

「あはは! それじゃあ、休憩にしましょう!」

「うん!」


 そんなヨナは私たちが、とある事件で保護した子だ。

 私は少し前のことを思い出す。


 私、クリスティナ・マリウス・リュミエットが旅をしているのは王命によるものだ。

 そもそもの発端は旅を始める少し前のことだった。


 王太子レヴァンの婚約者だった私は王宮に呼び出され、そこで〝言いがかり〟をつけられた。

 異界から現れた予言の聖女アマネ曰く、私は未来で『傾国の悪女』となる運命らしい。


 それまでに聖女の予言によって、リュミエール王国で起きた嵐の被害から多くの民が救われていたの。

 そんな実績のある聖女アマネの予言を無視することができなかったレヴァン。

 レヴァンは私との婚約を破棄しなければならないかもと、多くの貴族が見守る中で告げた。


 アマネの予言では、どうやら婚約破棄された後の私が側妃になるのもダメ、実家に帰るのもダメ、修道院に行くのもダメ、だから国外追放! らしい。


 その場には私とは異なる力、『聖守護』の【天与】に目覚めたルーナ様がいたんだけど。

 ルーナ様の【天与】の光を見た私はビビッときたの。

 これ、今なら私も【天与】を使えるかも! ってね。


 元々、『怪力』の【天与】の発現が原因でレヴァンの婚約者に選ばれ、なのに幼い頃の一度を除いてそれまで使うことのできなかった異能の力。

 その時になってようやく、私は再び『怪力』の【天与】を発現した。

 その力で『聖守護』の結界を破り、聖女のお腹を殴って、最後にレヴァンをぶん殴ったの。

 ふざけんじゃないわよ、ってね!

 そこからは【天与】を使いこなせるようになったわ! フフン!


 それでまぁ、王太子をぶん殴ったことで不敬罪となり、私は貴人牢に投獄されたの。

 そのあと、レヴァンとの婚約は無事に破棄され、さらに三つの王命を賜ったのよ。

 一つ目、王都追放。二つ目、実家に帰るな。

 三つ目、王国西端のアルフィナ領へ向かえ。

 三つの王命は、すべて聖女の予言を参考にしたものみたい。


 リュミエール王国の西端、アルフィナ領では大規模な魔獣災害が未来で起きるらしい。

 他の予言と違って災害が起きるかは、かなり曖昧らしいのだけど。

 国王陛下は、私が未来で『傾国の悪女』にならないことを証明するため、アルフィナの魔獣災害を鎮めよと仰せよ。

 ちょうど『怪力』の【天与】を使えるようになって戦闘もできるようになったからね!

 あとからわかったことだけど【天与】の光は魔獣によく効くみたいなの。

 だから、適材適所ではある王命だと思うわ。


 そうして私は旅用の衣服や荷物、お金と馬を支給され、王都を旅立った。

 リンディスとは旅の途中で合流したのよ。


 元から家に仕えているというより、私個人の世話をしてくれていたリンディス。

 だから今回もリンディスは、私が王都を発ったと聞いてマリウス家の仕事を辞めてまで私を追ってきたの。

 まぁ、リンディスが一緒にいるなら寂しくないし、楽しい旅よね!


 それから私たちは、まっすぐに西に向かわず、無軌道に移動している。

 というのも、リュミエール王国の各地には既に魔獣被害が出ているみたいなの。

 私には『怪力』の【天与】があるから騎士団を待たずとも魔獣を効率よく倒すことができる。

 だから、そういった被害を解決しながらアルフィナへ向かっているのよ。


 そうして私たちは、あの事件に遭遇(そうぐう)した。

 黒いローブを着て邪神をあがめていた謎の組織、邪教徒たちと相対した私。

 あいつら、各地から若い女性を誘拐して邪神の生贄にしようとしていたのよ。

 私もそれが目的で誘拐されちゃった。


 ヨナはそんな連中の被害者だったの。

 出会った最初はどうも操られていたみたいね。

 私を気絶させたりしたんだけど、今のヨナにはそういう危ない様子はないから安心よ。


 どうもヨナのことを彼らがあがめる〝神の器〟とやらにするつもりだったとか。

 正直、これについては意味がわからないままね。

 あのウニョウニョした見た目の邪神をヨナに取り憑かせて身体を乗っ取りたかったのかな。


 邪神との戦いで私はさらに新しい力を発現した。

 その名も『毒薔薇』の【天与】。薔薇を生やし、操る力よ。

 さらに浄化の力まであったの。

 私は『毒薔薇』の浄化と『怪力』を使って邪神を倒した。

 そのあと、誘拐された女性たちと一緒にヨナを邪教のアジトから救い出したのよ。


 救出したヨナ以外の人々はその地の領主であるヘルゼン子爵に保護してもらった。

 私たちが見聞きしたことを王家へ報せるよう、子爵にお願いしているわ。

 新たに発現した『毒薔薇』の【天与】のことも報せてもらったわ!


 ヨナを一緒に連れてきたのは、彼が魔族とのハーフだったから。

 王国では前まで魔族は迫害の対象だったの。今でもその名残があって。

 だから、同じ魔族のリンディスと一緒の方がいろいろといいんじゃないか、ってね。

 ヘルゼン子爵から領民を保護したお礼に食料やら何やらと馬一頭、幌馬車をもらったわ。

 私たちの旅は、こうして三人旅になって今に至るってところね!



「それにしても薔薇の【天与】は大問題ですよねぇ」


 馬車を止めて、休憩と食事の準備をしながらリンディスが言う。


「なぁに、リン」

「【天与】で薔薇ですから、誰が聞いても『イリス神』の授かりものじゃないですか」


 三女神の一柱、イリス神。剣と薔薇の女神ね。

 三女神はリュミエール王国で信仰されている国教の神様よ。

 また、そもそも【天与】とは女神の授かりものとされているの。

 その【天与】で薔薇ってなると『怪力』とは話が大きく変わってくる。

 少なくともリュミエール王国では、かなりね。神殿が黙っていないかもしれないわ。


「お嬢、薔薇の力も、もう自在に使いこなせるようになったんですか?」

「ええ、なったわ!」


 コツを掴めばなんてことはなかったみたい。


 『毒薔薇』の【天与】は、どこでも、どれだけでも薔薇を咲かせ、それを自在に操る力よ。

 魔獣を縛って拘束することもできるし、硬く尖らせて槍のように使うこともできる。

 大規模な魔獣災害の対処って、この力があってこそだと思うわ。

 流石に殴って蹴ってするだけで大量の魔獣はどうにもできないもの。

 さらに『毒薔薇』の【天与】の力はそれだけじゃない。

 光る黄金の薔薇を咲かせることで『大地の傷』を浄化することもできたの。


 これ、ルーナ様が『聖守護』の【天与】で、これから各地を巡ってやろうとしていることと同じよね! 浄化の光が私の【天与】にも宿っていたのよ!


 本当は、私とルーナ様の二人で手分けして災害の対処をするべきなんだろうけど。

 この【天与】を発現するのも、使いこなすのも遅かった。

 あいにくともう王都を追放されたうえ、アルフィナに行けと命じられている身よ。


 なら、アルフィナへ向かいながらも各地を巡って、できるだけのことをするしかないわよね!

 というわけで、決して寄り道が楽しくて無軌道に移動しているんじゃあないのよ?

 ちゃんと西へ移動していて、アルフィナ領にも近付いているし!

 これは民草のため! 私が果たすべき責務のためなんだから! フフン!


「食べられる薔薇と、毒がありなら解毒のための薔薇、それから普通は咲かないような薔薇も咲かせられるみたいね!」

「なんでもありなんですかねぇ」

「いろいろと試しているけど楽しいわよ。でもリンディスも魔術を使えるし、一緒ね!」


 リンディスの魔術は幻影が基本よ。彼は透明になったり、幻を見せたりできるの。


「そういえば、ヨナも魔術を使えるんじゃないの?」

「え?」


 驚いたような顔をするヨナ。この感じだと当人は知らない?


「使えるでしょう。素養はあるはずです。だからこそ連中に狙われたのかもしれません」

「もしかして私を気絶させたアレがヨナの魔術?」

「ごめんなさい、クリスティナお姉ちゃん。そのことは僕、覚えていなくて」

「気にしないでいいわよ、ヨナ。あの時はどう見ても貴方の意思じゃなかったもの」


 ヨナの瞳の色はアメジストのような薄紫色よ。

 その瞳の色があの時、真っ赤に染まったの。でも、それはヨナの魔術じゃないみたい。


「ヨナもリンディスと一緒の魔術を使えるようになるの?」

「いえ、使える魔術は私とは異なるかと思います。ハーフだからですかね。私が教えますので、近いうちにお嬢にもお披露目できるかと」

「じゃあ、楽しみにしているわね! ヨナも無理しなくていいけどがんばって! 私たちとお揃いになりましょうね!」

「……うん。僕、頑張るよ、クリスティナお姉ちゃん」

「フフン!」

「【天与】と魔術は一緒の扱いをしない方がいいんですけどね。お嬢は本当……」


 リンディスがもう諦めたようにそう呟く。いいのよ、今は私たちだけなんだし!


「『毒薔薇』と『怪力』はいいんですが、できれば『予言』を使いこなしてほしいですね」

「『予言』ねぇ。イメージが悪いのよねぇ」


 なにせ聖女アマネと同じジャンルなんだもの!

 私が今、発現している異能、【天与】は実はもう一つあるの。


 それが『予言』の【天与】。この『予言』だけど、あんまりコントロールできないみたい。

 たまに見たこともない光景を視るの。しかも、なんていうのかしら。

 その予言の世界、時間軸? に私の意識が迷い込む感じになることもある。

 それに単純に予言なのかも怪しいのよ。

 だって未来を視ているのとは、はっきり違うこともある。


 この前、私が視たのはリンディスが死ぬことになる〝可能性〟の光景だった。

 その可能性の中の〝私〟は、どうも幼い頃に発現した【天与】が違っていたみたい。


 『怪力』ではなく『毒薔薇』を発現し、レヴァンに婚約破棄されていた。

 現実と違って、かなり一方的な扱いだったみたい。婚約破棄された私はマリウス家に帰る。

 すると、そこではお父様がリンディスを殺していたの。


 リンディスを殺された悲しみと怒り、憎しみで予言の世界の〝私〟は『毒薔薇』の【天与】を暴走させた。

 マリウス家の皆を虐殺したのよ、使用人たちも含めて全員ね。

 ルーナ様も殺して、左眼が自分の薔薇で潰れていた。薔薇が目の代わりになっていたわ。


 ……あれが、きっと聖女アマネが予言した『傾国の悪女』の私なのね。

 『婚約破棄された後で実家に帰り、家族を皆殺しにした傾国の悪女』な私よ。


 でも、それは現実とはまったく違う。

 リンディスは今も生きているし、そもそも私はマリウス家に帰っていない。

 なので、あの光景は〝起きなかったこと〟なのよ。

 そんなのを視てもねぇ。まぁ、役には立ったんだけどね!


「まぁ、使える時は使えるようになるわよ、きっと!」

「楽観的ですねぇ。それがお嬢のいいところでもありますが」

「フフン!」


 私は胸を張って勝ち誇ったわ。もっと褒めていいのよ!


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