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超人、あるいは変化をもたらす者。  作者: えくり
序章
3/35

2.能力、あるいは万人に与えられるもの。

「説明が長くなってしまいました。では、能力の決定に移りましょう」

 パトリシアが、今度はタブレットを差し出してくる。このタブレットに入力していくのだろうか。なんだかゲームのキャラメイクみたいだ、あんまりゲームをしない晴人だが、そんな風に思った。

「能力の項目は大きく3つに分けられます。1つめが基礎能力。HP、MP、力強さ、器用さ、丈夫さ、俊敏さの6つですね。便宜上1~1000くらいまでの数値で表現されます。2つめが応用能力。武器スキルや魔法スキルなどがここに入ります。生産系のスキルもここですね。習得すると、LV1~LV10で表現されます。最後、3つめが固有能力。これは体系化されていないスキルです。習得するとただスキル名が表示され、熟練度等は問題となりません。例外的に、上位スキルに書き換わるものもありますが」

 思っていたより数倍も細かく設定されている能力に、晴人は少しうんざりする。自分の能力を自分で決められるというのは嬉しいものだが、スキルについてはどんなものがあるのかわからない以上、うまく選べるとも思えない。

 しかも他の人の能力がわからない以上、バランスをみて決めることもできない。これで貴洋と全く同じスキルを選んで、同じパーティにいられないとかだったら、嬉しくない。

 まあ、逆にいえば他にこういうのが得意でいいスキルを取れている人がいれば問題ないわけだし、気軽に考えよう。

「では、どれから決めますか?」

「能力を決める際の制約によりますね。いってしまえば、全基礎能力カンスト、全スキル獲得、ってできるならそうするわけですから」

「……そうですね。えーと、基礎能力は、前提として現在の晴人さんの能力があって、これにプラス100ポイントをわりふっていただきます。応用能力は、これも100ポイントを使ってスキルをとってもらうんですけど、各々の元の世界での得手不得手によってスキルを取るのに必要なポイントが変動します。固有スキルは希望するものを2つくらいってかたちですね」

「そのスキルというのは、取ったら自動的に使えるようになるんですか?」

「はい」

「直観に反しますね」

「そもそも転移自体が、直観に反しますからね」

「まあ、確かに。それじゃあ応用能力から決めることにします。一番想像しづらいし振れ幅も大きそうなんで」

「わかりました、こちらが主なスキルの一覧です。ちなみにレベルは、取得者の平均が2

前後、中央値が1だと思ってください」

 今度はスキル名が並んだ表が提示される。わかりやすいところでいえば、剣術や弓術、火魔法や水魔法など、あるいは盾術だとか付与魔法なんてものまである。いずれにしても戦闘で使えそうなものばかりなのは、魔王討伐に必要ない非戦闘スキルを取らすまいというパトリシアたちの意思であろう。

「どれが低ポイントで取れるんですか?」

「そうですね、運動ができる人は武器スキルが、頭がいい人は魔法スキルが取りやすい傾向にあります。ただ、本当に人によるので……。晴人さんですと、魔法系は全体的に低ポイントに、剣術以外の武器系はやや高ポイントになってると思ってもらえれば」

 中高大と緩くではあるがテニスを続けていた晴人は、同世代のなかで運動ができないということでは決してない。日本人という指標での相対評価であれば中程度以上には取りやすいはず。にもかかわらずやや高ポイントが必要ということは、この世界の住人との比較か、召喚される42人のなかでの相対評価で決まっているか。前者では能力のバランスも何もないので、後者である可能性が高いだろう。

 ちなみに晴人が剣術にまつわる何かをしていたかといえば、高校時代の剣道の授業だけである。逆にそれだけで他の武器系スキルより低いポイントで済むということは、実際に関連する何かをしていれば小さくないアドバンテージを得られるということだ。

「狙撃術か、それに類するものはありますか?」

「ええ、狙撃術があります」

「何ができますか?」

「弓や投擲などの遠距離攻撃において弾速と命中率が上がります。それに伴って射程と攻撃力も上がると思っていただければと」

「魔法を打つときも効果ありますか?」

「魔法の場合、1回の攻撃に込められる魔力の量が魔法スキルのレベルに応じて限られます。なので、狙撃術で弾速をあげることはできますが、その分威力が落ちてしまうことになってしまいますね。魔力効率も含めて、素直に魔法スキルを上げたほうがいいと思います」

「なるほど。逆に弓術をあげるとどうなるんです?」

「弓術は弓を発射するまでの速度と命中率が上がります。イメージとしては、弓術は弓矢の操作性が上がり、狙撃術は発射した矢にバフがかかる、という感覚でいいと思います」

「そうすると、狙撃術だけもっていても弓術がなければ意味がないし、弓術が同じなら狙撃術を持ってる方が強いという感じですかね」

「基本的にはそうなりますね。基本能力の力強さや器用さが影響してはきますが」

 晴人は脳内でスキルの構成を組んでいく。やろうとしていることは簡単で、要するに攻撃型の後衛になろうとしている。それも、単体で遊撃できるタイプの。理由はいくつもあるが、最大の理由はパーティとうまく連携できると思えないことにある。

 そうすると問題になるのは、物理攻撃に振るか魔法を取得するか。前者は矢にせよ石にせよ嵩張るし、物的限界がくる。後者は魔力の限界がくる。

「ちなみに魔王のステータスとかって見れたりしません?」

「申し訳ありません、私たちも把握しておりませんので……」

「ですよね」

 わかっているならとっくに教えてくれているだろうから、当然といえば当然である。

 あとは、部員全体で武器スキルを取得する人間と、魔法スキルを取得する人間のどちらが多いかという話か。どっちもいればどっちかは通るだろうし、どっちも通らなければもとより詰んでるというだけの話だ。

「じゃあ、弓術と狙撃術に可能な限りポイントを振ります」

「魔法スキルじゃなくていいんですか? せっかく低コストで取れるのに……って、あれ? 晴人さんは狙撃術も低コストで取れるみたいですね」

 弓術は高ポイントが必要なのに狙撃術は低ポイントで取得できる。なるほど、FPSゲームでスナイパーを使っているというだけで恩恵を受けられるとは、ずいぶんと転生者に優しいシステムらしい。

 晴人としてはその可能性に思い至ったからこそ狙撃術の有無を聞いたのだが、存外うまくいってホッとする。これで低レベルにしかならなかったらかっこ悪いことこの上ない。

「そうですね。最も効率よくポイントを振ると弓術Lv.1、狙撃術Lv.4になりますね。これでちょうど100ポイントです」

「じゃあそれでお願いします」

「承知しました。では基礎能力ですが……」


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