喪失
デートの話です
コンビニでお酒を買って公園で飲む僕と君。
指先の感覚が徐々に消えていく2月の21時。寒さとお酒を口実にしないと手を繋げない弱い僕は少しずつ体温を取り戻す。
案外強いお酒を飲むのだな、なんてことを考えながら他愛もないような話をしていた。僕には愛があったけど。
彼女と会うのは今日で2回目。インスタでたまたま見つけて話しかけた。とても綺麗で可愛くて、僕なんか相手にされないであろうと思っていたが、こんなことで何かが減るものでもないし、「言っちゃえ!」と勢い任せに動いた。結果は意外なことにも返信が帰ってきて、少しずつ話すようになった。住んでいる場所、学生時代の部活、好きな映画の話、綺麗な顔しか知らなかった僕にとって、彼女の内面を知ることが出来てとても幸せだった。電話もした。元々電話が苦手な僕はとても緊張してうまく話せなかった。そんなときも彼女は「気まずいね(笑)」なんて雰囲気を良くしようとしてくれた。
メッセージよりも電話よりも会いたくなってしまうの僕の性格では、当然彼女とも会いたくて、約束をした。居酒屋に行く約束をして電話を切る。こんなに約束が待ち遠しいのは何年ぶりだろう。
初めて見る生の彼女はフランス人形のようだった。とても肌が白く綺麗で顔がはっきりしている。ハーフかなとも思ったが、どうやら違うらしい。よく間違えられるそうだ。みんなと一緒になってしまった。
庶民的な居酒屋には似合わない彼女の可憐さ。それでいてハイボールしか飲まない意思の強さ。かっこいいと思った。久しぶりのデートで緊張もあったがとても楽しかった。もっと一緒にいたいと公園に行った。この日は風がとても強かった。凍てつく寒さに耐えられず思わず身を寄せた。
もう大人なんだからこれくらいで騒ぐなよ、と頭の中の誰かが言っているがそんな思いとは裏腹に僕の心臓は言う事を聞かない。騒ぎまくっている。お祭り状態だ。
深呼吸をしダウンジャケット越しに感じる彼女の華奢な腕から意識を逸らす。
僕はいつまでもピュアでありたいと思っている。手をつなぐのにもドキドキするし、ハグするのもキスをするのも。誰とでもするわけではないが、初めて会った彼女にはしたいと思った。こんなことをしたら軽い男だと思われないだろうか。誰にでもしている手慣れたやつだと思われないだろうか。
君にしかしない、そんなドラマでしか聞かないようなくさいセリフを言ってキスをした。
聞こえてくるのは指先の触れる音と僕の心臓の音。このまま時間が止まればいいのにと願ったが、時は過ぎる。近い距離で目を合わせることの恥ずかしさと、綺麗な瞳に愛おしさが溢れて、好きを実感した。
この時の素直な気持ちを伝えていられたら未来は変わったかな
消極的で臆病者の僕は何も得ることが出来なかった
あの日見た月の明かりだけの公園のベンチはふたりだけの世界
でも
今は僕だけの世界
忘れることのない風と匂い
いつかまた、逢えたらいいな
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