8.黒白弁せず
side .エーベルハルト
愚かな人間が再び俺の大事なリズに手を出そうとした。
聖女なんてくだらない籠で囲っている奴らも、リズの価値を認識せずに使い捨てようとしている奴らもみんな、みんな殺してしまいたい。
リズ
俺の大事なリズ。
スラムから忽然と居なくなった時は心臓が止まるかと思った。
血眼で探して見つけた時、君は聖女なんてくだらないことをされていた。
良かった。居なくなったのが君の意思じゃなくて。もし、君の意思で俺の前からいなくなったんだとしたら俺は君を傷つけないといけない。
本当は足の腱を切って、どこにもいけないようにしたけど痛い思いはしてほしくない。それに聖女である君にはそんなこともをしても無駄だって分かってる。
だから手足を鎖で繋いで、閉じ込めるんだ。
リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ、リズ。
俺の大事なリズ
「リズ」
リズ、待っていてね。すぐに俺が君をそこから救い出すから。煩わしいもの全部、俺が排除してあげる。全部、終わったら誰も君を知らない世界に行こう。
その為にはまずこのゴミを片付けないと。
さっき森で殺したゴミの片足を持って引きずりながら森の更に奥へ行く。明日は大騒ぎになるだろうから使用人が一人消えても誰も気づかない。誰にも気づかれずに一人で死ぬなんて可哀想。俺なら死ぬ時はリズと一緒にいたい。
ああ、でも。俺が死んだ後リズを誰かにとられるかもしれない。それは嫌だ。彼女は俺のだ。だからリズにも一緒に死んでもらおう。そうすればずっと一緒だ。死ぬ時も、死んでも一緒。
俺のリズ。
俺だけのリズ。
リズ、リズ、リズ、リズ。
「ここら辺でいいか。早く戻ろう」
ゴミはまだ残っている。
俺は再び邸に戻った。
もう一つのゴミであるアイネ・ケイレン。
ゴミが分不相応にもリズに嫉妬心を抱いた。醜い感情で害そうとした。でも、俺は知っていた。あの時から。あのゴミの手を握りつぶした時から。あのゴミがリズを排除するために動くことを。
ああいうゴミがどれだけ愚かで醜悪で身勝手なのか、俺は身をもって知っている。だからわざと警護を手薄にした。
そうしたらまんまとやって来た。
馬鹿なゴミどもだ。
以前の護衛ならリズの価値など知らずに適当な護衛だったかもしれないが俺がリズを守っているんだ。
リズに傷ひとつ負わせないように万全の対策を立てているに決まっている。そんなことにも気付かずかないなんて。本当にゴミはゴミだな。
「ちょっ、なっ、んんっ!」
俺はゴミの部屋に入り、布団をはいだ。その勢いで目を覚ましたゴミの口を封じた。目を見開き、ジタバタするゴミの口を塞いだまま引きずるようにリズの部屋の前まで行って、そこで刺し殺した。
何も言わなくなったゴミに短剣を握らせて、適当にほっぽり投げる。
これでゴミ処理は完了。
俺はリズの部屋に入って彼女が寝ていることを確認する。
「リズ」
先ほどゴミを二つも触ってしまったから今身につけている手袋は汚れている。そんなものでリズに触れるわけにはいかないから手袋を外してポケットに入れる。この手袋は後で捨てておこう。
こんな汚い手袋、もうリズの前ではつけられないから。
「リズ、リズ、リズ」
そっと眠るリズの頬に触れる。
ああ、リズだ。俺のリズ。愛してる、リズ。愛してる。
俺はリズの唇に触れて、キスをする。
「愛してる、リズ」