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世界を壊したいほど君を愛してる  作者: 音無砂月


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21.愚者の末路が破滅であることは往々にしてあることだ

side .エーベルハルト


「こんなガラクタが俺のリズの代わりになると本気で思っていたの?」

「ひっ」

俺の手の中にあるのは赤い石屑

「酷いなぁ。俺、せっかくあなたにプレゼントを用意したのに」

俺はこの前作ったダルマを王女の前に放り投げる。

手も足も切り落として、話せないように舌を切り取った上に喉を潰したおいたけどまだうめき声は出せるみたいだから口を縫い付けた。

「邪魔なものは全部、切り落としておいたから。これでもう余計なことできない完璧なあなたのペットになったでしょう」

怯える王女の髪を掴んでダルマが見えるようにした。

「それなのに、俺のリズを森に捨てるなんて何様だよ、あんた。リズに守られるだけの無能で、無価値な存在のくせに」


ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく。


「俺はね、ずっと腹が立っているんです。怒りであれ、悲しみであれ、リズがあんたらに感情を向けるのは気に入らない。リズには俺だけいればいいのに。リズの世界には俺しかいなかったのに。それをあんたらは無理やり彼女を攫って、無理やり俺とリズの世界に入ってきた。あんたらみたいな汚らわしい存在が」

どうしてリズはこいつらに感情を向けるのだろう。

ただ一言、俺に頼んでくれれば俺がすぐにこんな奴らを消してあげるのに。

なのに彼女は何も言ってはくれない。

どうして一人で耐えようとするの。俺がいるのに。

だめだよ、リズ。だめだ。

俺以外に感情を向けてはだめだ。俺だけを見てくれないとだめだ。でないと、俺は君を殺してしまうかもしれない。

「俺のリズに汚らわしい名前までつけてたよね。まぁ、リズと一言でもその名前を呼んでいたら君たちが今日まで生き延びることはなかっただろうけどね」

その名前だけは呼ばせない。だって、リズは俺だけのものだから。

「・・・・・エ、エーベルハルトっ!ご、ご自分が何をしているのか分かっていますの?この売国奴。国を裏切るなんて。その汚らわしい物を私に近づけないで」

肝が据わっているのか、ただ状況判断ができない馬鹿なのか。王女は俺を睨みつけ、俺が用意したダルマから少しでも距離を取ろうと暴れる。

王女の髪を掴んでいる手の力を緩めるつもりはないからそんなことをしても無駄だけど。

「汚らわしいって、あんたがリズに差し向けたんじゃないか。俺の目の前でリズに触れさせた。君たちみたいな汚らわしい存在がリズの視界に入ることすら許し難いのに」

本当に何も分かっていない。

「裏切った?命懸けで聖女としての勤めを果たそうとしているリズを裏切っておいて何を言っているの?」

「あなたは勘違いをなさっていますわ。あれは聖女などではありませんわ。聖女を騙った卑しい下民よ。ぶへ」

俺は王女の顔を蹴り上げた。強く蹴りすぎて王女の口から歯が二、三本飛び出した。それでもまだ気は収まらないから収まるまでお腹や顔を蹴り続ける。

お腹を強く蹴ったせいで王女は嘔吐した。俺の靴は王女の血で汚れてしまった。リズを迎えに行く前に履き替えないと。

「君たちのような者がリズを貶めるのは許さないよ」

王女の顔はパンパンに腫れ上がり、不細工な顔が更に不細工に仕上がった。まだ足りないけどあまりしすぎて死なれたり、後で受けとってもらう罰の効果が半減するのは嫌だから深呼吸して何とか堪えた。

「お前たちが勝手に聖女に祭り上げて、嫌がるリズに聖女をさせておいて何を言っている。ああ、そうだ。リズだけどね、俺が君たちみたいなバカの群れに一人で放置させるわけないでしょ。本当に君たちって面白いくらいバカだよね。彼女にはとびっきり優秀な護衛をつけてる。リズに、気づかれないように魔物から彼女を守るぐらい簡単にやってくれるよ。それと俺のリズを森に捨てたゴミは今頃、魔物の腹の中だろうね。生きながらに魔物に食われるのがどういうことか、君も後で感想を聞かせてよ」

「へ?」

「地下に魔物を飼ってるよね。魔物を生物兵器にしようと考えてたんでしょ。あの石屑の効果を確かめるためにも魔物は必須だっただろうし。その檻の中に君を入れてあげる」

「・・・・・や」

「君たちが魔物を生物兵器にしようと画策している情報をリエンブールは既に手に入れている。だから今回、彼らは君たちの国に侵攻する決心をしたんだ。それに君たちがリズに手を出さなければ俺がこの国の情報をリエンブールに流すこともなかった。だって君たちが何をしようが、それにとって他所がどうなろうが俺はどうでもいいから。でも君たちは俺のリズに手を出した。これは君たちが招いた結果だ」

「や、だ。はなぢで、やぁ」

何とか逃れようと髪を積んでいる俺の手を王女は引っ掻き、暴れる。

引っ掻いたところで俺は手袋をしているから傷もつかないけど。手袋をするのは当然だ。リズを抱きしめる手でこんな汚らわしいもの、触るわけにはいかないから。

「そんなに嫌ならもっと早く理解すべきだった。君は手を出してはならないものに手を出したんだよ。手を出さなければ、世界は自分のために回っているんだと小さな世界でそう勘違いしたまま一生を送れたのに」

俺は泣き叫ぶ王女を地下にまで引き摺り、魔物が閉じ込められている檻の中に入れた。ついでにペットのダルマも放り込んでおいた。


バキバキっ、ベキ、グチャッ


骨を砕く音や肉を引き裂く音は最後までしていたけど、泣き叫び、許しを乞う声は途中から聞こえなくなった。

「自分の愚かさ故に娘が目の前で魔物に食われるのはどんな気分?」

檻の前には口を塞ぎ、縛り付けていた王がいた。事前に捕らえて、そこに置いておいたのだ。

「あんたの娘はあんたの命令を無視して、あんたの名前を使ってリズを、聖女を殺すために森に放置した。あんたがしっかり躾けておけばあんたの娘は王命に逆らうことの意味を理解できたのに。あんたが聖女がいかに大切で重要な存在なのかを理解していればあんたの臣下や娘がここまで愚かになることはなかったのに。あんたの愚かさが招いた結果だ」

今にも殺しそうな目で俺を見る王の姿は滑稽でつい、大声をあげて笑ってしまった。

「ああ、でも勘違いをしてはいけないよ。この運命はねあんたらが聖女に対する扱いを間違えたことで決まったんじゃない。俺からリズを奪ったから決まったんだ」

「そこまでだ、エーベルハルト」

王に向かって伸ばしかけていた手を止めて声のした方を見る。

ヴィトセルクが騎士数名を連れて地下に来ていた。

ヴィトセルクと違って彼の護衛をしている騎士は俺に対して強い警戒心を持っているようだ。

別にヴィトセルクが何をして来ようが、リズに関わらないことなら構わないのに。

「それはこちらが貰う物だろ。勝手に処理をされては困る。そういう約束だったはずだが」

その代わり、王以外は何をしても良いと言われていた。

怒りのあまり忘れていた。仕方がない。このゴミは譲ろう。

俺が手を引くのを見計らって、ヴィトセルクに命じられた騎士が王を連れて行く。

そろそろリズが来る頃だから迎えに行かなくては。ああ、でもその前に着替えよう。

こんな汚い格好ではリズの前に出られない。

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