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世界を壊したいほど君を愛してる  作者: 音無砂月


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12.エーベルハルトってヤンデレ?まさかね。

最近、いつにも増してエーベルハルトが傍にいる。

彼はとても仕事熱心なようだ。今までの護衛は護衛なんてしていなかった。

「聖女様の護衛とか羨ましい。サボり放題じゃん」と当たり前のように騎士団同士で言い合っていた。それで私に何かあれば騎士団が責任を問われることになるんだけど。それに聖女がいなくて困るのはこの国の人間なのに本当の意味で何も分かっていない。

この国、そのうち滅びるんじゃないか。と、思わなくもない。滅んだところで未練のある国じゃないけど私の生活に困るからもっとしっかりして欲しい。

「聖女様、どうかしましたか?」

エーベルハルトを見ると彼はいつも浮かべる笑顔を私に向ける。

『俺が怖い?』と聞いてきたエーベルハルトは迷子の子供のようにも見えた。でもすぐに嘘の笑顔で覆い隠した。

一線を引かれた気がした。

エーベルハルトの中には誰にも触れさせたくない心があるのだろう。

「聖女様?」

「王女様の誕生祭のことを考えてたの」

「もうすぐですね」

「ええ」

本当、憂鬱。

王家主催のパーティに聖女の参加は必須。そこはいつだって嘲笑の的だった。似合わないドレスを着せられて、誰にもエスコートされずにパーティへ参加する。

「分不相応」だと「身の程知らずの卑しい雑種」だと綺麗な扇に隠した醜い感情を当然の権利であるかのように私にぶつけてくる。

何が起こるか、何を言われるか分かっていても私に出ないという選択肢はない。そもそもそんな選択肢は与えられてはいない。

「・・・・エスコートはどなたかがなさるんですか?」

エーベルハルトは私の護衛に抜擢されるまで任務とかで王都にはいなかった。だから何も知らないのだろう。

エスコートしてくれる人間はいないけど、女性がエスコートーなしでパーティに行くなど本来ならあり得ない。醜聞に繋がりかねないし。

エスコート役なんていないと言ったらきっと心配をさせてしまう。エーベルハルトはたまに怖い人だけど優しい人でもあるから。

「公爵家の人間がしてくださいます」

「・・・・・・・そうですか」

何の間?

「ドレスはどうされるんですか?」

「もちろん、用意しますよ(公爵家が)」

「・・・・・・・そうですか」

だから、何の間?

「誕生祭、楽しみですね」

いや、全然。人の誕生日とかどうでもいいし。

「そうですね。好きなんですか?」

「いえ、全然」

「・・・・・・・」

えっ?

「好き、じゃないんですか?」

「はい」

でも、楽しみなんでしょう。

説明を求めてエーベルハルトを見るけど彼は微笑むだけで何も答えてはくれない。これはきっと聞いてもはぐらかされるパターンだ。

だから私はこの話題をここで終了させた。パーティ当日に何が起こるかなんて知りもしないで。


***


「お義父様、これは何の冗談でしょうか」

「冗談などではない」

やって来たパーティ当日、準備で忙しい日に公爵に呼ばれた。

普段は空気のような扱いか、虫ケラを見るような目で見られるだけだから今のように書斎に呼ばれることなんて滅多にない。しかもこんな忙しい日に。心なしか、疲れているように見える。そんな公爵のことなどお構いなしにめちゃくちゃご機嫌なエーベルハルトがいる。

エーベルハルトの笑顔がいつもより輝いて見える。

「私のエスコートーをエーベルハルトがするんですか?」

私は信じられなくて先ほど公爵から聞いた話を確認する。

「はい」と、エーベルハルト。

「エスコートする人間がいないとのことだったので」

いや、そんなことは一言も言ってないよ。公爵家の人間がするって言ったじゃん。公爵が言ったのかな?と思って見てみるけどどうも違うようだ。

「聖女様、今日のエスコートは私がするので私以外を見てはいけません」

ええっ!

そんな笑顔で黒いオーラを放ちながら言われても困るんだけど。相手は養父だし、異性の対象外だし、確認したくて見ただけなのに。

「聖女様?」

「分かりました。申し訳ありません」

これ、一般論を述べたら死ぬパターンだ。

エーベルハルトが今貴族令嬢の間で流行っている小説に出てくるヤンデレに見えてしまう。まぁ、私に対してエーベルハルトがヤンデレになるとかあり得ないけど。

「それで、ええと、このドレスはエーベルハルトが用意してくれたんですか?」

薄水色のドレス。腰回りには真珠の飾りがついていて、シンプルだけどとても素敵だ。

でも・・・・・。

「どうかしましたか?」

「・・・・・いえ」

この色ってエーベルハルトの瞳と同じ色。偶然だよね。

「ドレスは高価なものを着せれば良いというものではないんですよ。どんなに値が張った物でも、流行にあった物でも本人に合わなければ何の意味もありませんから」

もしかして、いつもエスコートがいないのもただ高価で、ただ流行に則っているだけのドレスを着せられていたのも知ってた?そんなわけないよね。

「さぁ、時間がありません。早く準備をしてもらいましょうか」

「え、ええ」

エーベルハルトって伯爵だけど、公爵を言い任せられるんだ。口が達者で頭の回転が早い人は権力や地位に勝つことはできる。そういう下位貴族を何人も見てきた。

「聖女様、美しく着飾ったあなたをエスコートできる名誉を私にいただけますか?」

断る理由もないし、彼の善意を無駄にするのは申し訳ないわね。

「ええ、お願いします。それでは準備をしてきます。また、後ほど」

「はい」

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