03 襲撃、ゴーレム。
「な、なに!?」
カプセルの中で妄想に夢中だった私は現実の世界に戻された。
建物が大きく揺れ、慌てて夜の外に出た。建物の前に全身が土と岩でできた人型の何かが囲い建物に向け岩を投げていた。
「えっ? ちょ!? まさか、魔物!? 」
「解析の眼鏡」(アナライズグラス)をかけあの人形たちの正体が「ゴーレム」だと分かった。アナライズグラスからはゴーレムは岩と土の人形。大地の魔法に長けたドワーフ族の操る眷属と映る。
「へぇ…ゴーレムかぁ…ドワーフの眷属なんだぁ…って、きゃぁ!!」
異世界で始めて遭遇した人? がゴーレムかぁと感心していたらゴーレムたちが私に向かって岩を投げてきた。岩にぶつかる寸前で私の傍に浮かんでいたギンが大きな盾に変形して私を守ってくれた。
「あ、ありがとうギン…ってうぁ!! 私の寝床がぁ!!」
盾に守られて安心していたら、大岩をぶつけられた建物がどんどん崩壊していく。
たった一週間だけど異世界に来て初めて目覚めた思い出の場所。しかも、まだ中を全て探索しきれていない。しかしたら他にも貴重な魔法道具が眠っているかもしれない。
興味あるレア物ならどんなことをしてでも手に入れたい。オタクの収集魂に怒りの火がついた。
「こらぁぁぁぁ!! やめろぉぉぉぉ!! 私の寝床を壊すなぁ!!」
怒りに任せ盾の横から手を出し、手のひらに燃え盛る火炎をイメージした。
魔力を水。火炎を風船とイメージする。風船である火炎は、ここ一週間の間にわざと毒のある物を食べため込んだ魔力という水を一気に注入し巨大な太陽が生まれて…
「ふっとべぇぇぇぇ!!!!!!」
目の前にいたゴーレム集団たちに向け発射。一瞬、夜が朝になったかと思うほどの閃光が起き爆発と衝撃が起きた。
「きゃぁぁぁぁぁ!!!!! やりすぎたぁぁぁぁ!!」
爆風と衝撃で私までも後ろに吹き飛んだ。盾形態だったギンが巨大な球体に変化して私を包みこんでくれた。しかも球体の中から外の様子見えた。ゴーレムたちの投石によりボロボロだった建物が大きな音を立て崩れていった。
「私の寝床がぁ…」
自分でトドメ刺しちゃった…あぁ、明日はどこで寝たら…とうなだれていると声が聞こえた。
「くそぉ!! なんだ、今の魔法は!? アタシのゴーレムどもが消されちまいやがった!!」
「恐らく、この隠された島にあった魔法道具を誰かが使ったようですね…とてもすさまじい…」
二人の男女の声が聞こえた。一人は口の悪く土色の肌をした筋肉質のある長身の女性。
もう一人は男で、とがった耳に金髪の髪に眼鏡をかけた知的そうな男性。
「解析の眼鏡」(アナライズグラス)で二人を見て、私は驚きの声を上げた。
「名前:アイアン=マイスター 種族:ドワーフ 性別:女 」
「ギフト:ゴーレム作成」(効果)全属性のゴーレム作成、操作。
「名前:キャスト=ウィザー 種族:エルフ 性別:男」
「ギフト:魔法創作」(効果)全属性の魔法の合成、創造。
「えぇ!? え、エルフにドワーフ!?」
女性の方はドワーフ族で男性の方はエルフだった。ゲームでし見たことのない種族に少し感動したけど2人は私の入っている球体をまじまじと見る。
「なんだ、この魔鉄は? バカみたいに魔力が込められて、クソかてぇぞ…」
口の悪い女ドワーフが球体をコンコンと叩く。魔鉄って…確か、魔力に応じて形を変える鉄で「魔装」の装甲や武器に使われる特殊な鉄って冊子に書いていた。
「ふむ…アイアン。ひとまず君のゴーレムでこの球体を運びだしてくれ。崩壊した建物の中にまだ魔法道具が残っているかもしれないから、調査は私が…」
「あぁ!? 命令すんな、モヤシ!! 先に、アタシのゴーレムを消し炭にしやがった野郎の顔面をつぶす方が先だぁ!!」
アイアンと呼ばれた女ドワーフがイライラしながら私の入っている球体をゴンゴン殴る。
ギンの強度がすごいのか、あんまり中に振動やうるさい音が響かなかった。後、途中から気づいたけど外から中の様子は見えないみたい。マジックミラーみたいに、私の方からしか見えておらず、外の二人は私の存在に気づいていないみたい。
「まったく。「援助者」の提供してくれた工房とあなたの腕ならいくらでもゴーレムは作り直せるでしょうが…それに、私の名前はモヤシなどではなくキャストです。」
二人の間に嫌な空気か漂う。あぁ、あれだ。前世の仕事場で部門のトップ同士がいがみ合っている空気と似てる。そんで、新人の子とか嫌な空気についてきけず退職して、新人のケアやら仕事を振られたりいつもワリを食うのが私の役割でかなり苦労したな…
「って、現実逃避してる場合じゃない。とにかく、逃げないと…あ、れ?」
「なっ!? くそぉぉぉ!!」
次の瞬間、視界がぶれた。大きな音をたて足元の大地が崩壊した。
私の入った球体とドワーフ女ことアイアンは共に大地の底に落ちていった。