00 「伊丹優(いたみゆう)」の死と転生。
2022年に向けて新しい作品を投稿しました。
こちらはアルファポリスさんの方にも投稿しています!!
「姉ちゃん!! お姉ちゃん!!」
腕の中で抱いている男の子の声が聞こえる。
ついさっきの事だった。夜勤明けの帰り道で男の子が父親らしき男に虐待されているのを見て思わず駆けよった。
男が鉄パイプを持ち振り落とそうとして、とっさに泣いている男の子をかばって頭を殴られた。
頭が痛くて次第に視界が薄れていく。周りから「きゃぁぁ!! 血が!!」「警察を呼べ!!」と誰かの叫び声が聞こえ視界の端で男が取り押さえるのが見えた。
「お姉ちゃん!! 死なないでぇ!! 」
あぁ痛い、すごく頭が痛い…この苦痛から逃れるためせめて傷だらけの男の子に「痛くない?」「大丈夫?」と声をかけたかったけど「あ、ぅ…と」まともに声はでなかった。
本当なら夜勤明けの疲れた体をシャワーで癒して。
温かい布団の中で録画していた深夜アニメの続きを見る予定だったのに…
他にも、楽しみにしていたゲームのネット対戦やら友人とアニメの聖地巡りなどいっぱいやりたいことがあった。
頭の中で何かが割れた嫌な感触。叫びたくなる痛みに私の心の中は
痛い…痛いよぉ…痛いのいやだぁ…助けてぇ とまるで注射を嫌がる子供のように心の中で泣き叫びながら、私の意識は途切れてしまった。
△
「伊丹優さんあなたは、男の子を救い、命を落としてしまいました」
「あっ…はい…」
男に頭を殴られて死んだ後、私は宇宙にいて足元には地球が見えた。
地球って本当に青くて丸いんだとか呑気なことを考えていたら、金髪の青年に声をかけられた。
青年が言うには、私が助けた男の子は無事に警察に助けられ、父親はそのまま逮捕され一生不幸のまま孤独死をした。
男の子は光君と言い、光君はその後自分のような恵まれない子供を助けるため福祉関係を必死に勉強して、社会に大きな貢献をして人々に認められたらしい。
「よかった…無事だったんだね…」
光君が大丈夫なことに喜んでいたら、社会を良き方向へ導いた光君を助けてくれた礼として私を転生させてくれると,青年に告げられた。
「あ、あの…私の家族は? それに、他のみんなとか…」
「すみません、あなたが死んだ後、既に100年以上の時が流れました。もう、貴女を知る者はいません」
そんな…。既に1世紀も時間が進み、自分の居場所がいないことに愕然としていると、彼は私のの目に合わせてくる。
「えと、その…」
お気に入りゲームキャラに似ている容姿に思わずドキッとしながらも、目をそらしながら耳を傾けた。
「だから、貴方には痛みなく、幸せに暮らして欲しいと思います。異世界「ギフト」にて…」
気が付いたら地球からどんどん離れいく中、青年から異世界「ギフト」について話してくれた。
・異世界「ギフト」は魔法や魔物が存在するファンタジー世界。
・人々は魔法とは別に「ギフト」と呼ばれる加護を持ち冒険者や様々な職業についている
・人族以外にもエルフやドワーフなど存在している。
彼の話をまとめるとこんな感じだ。そして、いつの間にか地球に似た星の上にいて、彼から小さな光る物を渡され私の中に吸い込まれて…え?
「え? あの、ちょっと!?」
「それは送り物です。どうか、痛みから解放された第二の人生を…お姉ちゃん」
最後の方が聞き取れず、生身で大気圏突入中にだんだんと目の前が暗くなり、気づいたら透明なカプセルの中で目を覚ました。